膨らみ
そっと彼らの後を追って、念入りに暗示をかけて、そうして私は僕という席を其の家族の中に捩じ込んだ。
そうして、私は長男の僕として振る舞った。
其処は思っていた以上に、居心地が良かった。
如何しても忙しい両親達だから、必然として私がみぃちゃんの面倒を見る事が多かったが、彼女は、みぃちゃんは賢く良い子だった。
想定していたよりもずっと渇きは抑制され、彼女と言葉を交わす毎に少しずつ、何かが埋まる様な気がした。
だから、矢張り私の仮説の答えに近いのは此処だと思った。
そう思い始めた矢先に、みぃちゃんの暗示が解けた。
テレビゲームでの対戦をしていた時、不意にみぃちゃんがコントローラーをかちゃかちゃ言わせる音が止んだ。
取り敢えず、キリを良くしてから、隣を見ると、みぃちゃんは全身を強張らせて固まっていた。
その顔を覗き込んでみると、みぃちゃんは其の儘息を詰めた。
視線は忙し無く揺れている。
直ぐに、嗚呼、此れは、と思った。
今迄の経験から言えば、手の付け様の無いヒステリーを起こすよりはずっとマシな反応だった。
比較的、理性的な話し合いが出来るだろう。
「みぃちゃん、気がついちゃった?」
そう声をかけた結果、返って来たのは言葉ではなく、頭突きだった。
完全なる想定外だった。そもそも何故頭突きだったのか。
思わず身を引いて、鼻を押さえた。
クリティカルヒットした鼻頭が痛い。
頭突きをしたみぃちゃんは、其れで頭が冷えたらしく、鼻を押さえる私を冷静に、何処か呆れた様に見詰めて居た。
その後のみぃちゃんの反応は想定外で、期待以上でもあった。
だから、少し興に乗って怖がらせてしまったかもしれなかったのだが、其れでも、全く以て想定外に、彼女は僕を受け入れた。
――嗚呼、彼女は想定以上に賢い。
其れでも未だ、私は侮って居たのかもしれなかった。




