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最強のおっさん魔術師、自分探しの旅をする  作者: 陽山純樹
第二章

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遭遇

 森の中を、文字通り疾駆する……俺とアルザの移動にミリアはどうにか食いつく形で追随する。彼女がどうにかついてくるというレベルの速度であり、前方にいる魔族からすれば脅威以外の何物でもないだろう。

 相手はどうやらこちらの動きを見て反応した……が、さすがに対応まではできなかったようだ。距離を置こうと移動を開始しようとしたが、それよりも先に俺達が魔族の下へ到達した。


 そしてアルザが相手に向け剣を突きつける……ようやく発見できた魔族についてだが、


「……え?」


 遅れて到着したミリアが、声を上げた。


「魔族、だけれど……」


 そうやって呟いたのには理由がある。俺達が発見した魔族は、年齢で言えば十歳くらいの見た目を持つ少女であった。

 もちろん、あくまで見た目なので人間と同じと考えるのは早計なのだが……まとう魔力についても、同様に若い。


 俺は数々魔族と戦ってきて気付いたことがある。年齢を重ねた魔族は、まとう魔力に特徴があるということ。年輪のように幾重にも魔力が重なり、発する気配も濃密になる。一方で若い魔族は魔力の層が薄い代わりに、層一枚一枚が厚かったり、あるいは非常に強固だったりする。

 これはおそらく魔族の特性であり……目の前の少女魔族は、まさしくその見た目通りに魔力をまとっていた。


「……確認だが、ここへ入り込んだ冒険者と遭遇し、逃げた魔族ってことでいいのか?」


 俺の質問に対し、魔族は首をそっぽ向けた。答えない……どころか、さっさと滅ぼせとなんだか潔さもある。

 これはどうするべきか……俺の横にミリアがやってきた。視線を向けると、彼女は小さく頷き返す。


「……あなたが、このダンジョンの主?」


 まずミリアが質問。もちろん魔族としての魔力を伴ってのことだが……結果、彼女は俺達を見て困惑しながらも小さく首を左右に振った。


「私は、違う」


 そして答えた声も少女のような高いもの。まさしく年齢相応……といった雰囲気の魔族である。


「ならあなたはどうしてここに?」

「……私は、このダンジョンにいた主によって生み出された存在」

「生み出された? 魔族が?」


 俺が呟くと、ミリアはこちらを見返した。


「そういう存在もいるの。言わば自分の魔力を分割して、分身を作るとか」

「ということは、この魔族は元々いた魔族の分身?」

「あるいは、魔物の主に近しい魔族か……もしかすると各階層を守る魔物は、この子のように分身によって制御、管理しようとしていたのかもしれないわ」

「なるほど、単純に魔物だけではなく……ということか。その方が防備は複雑になるし、攻略は難しくなるだろうな」

「子供の姿なのは、魔力をわけた段階でそれだけしか確保できなかったのか……おそらく、守り手を作成する途中で滅びたのでしょうね」

「なるほど、な……で、だ」


 問題はこの魔族をどうするか。ミリアのことを見てすぐに逃げ出す雰囲気ではないが、放置すれば何をしでかすかわからない。


「あなたは、ダンジョンを攻略されて嫌?」


 そしてミリアは改めて少女へと尋ねる。


「あなたの目的は、このダンジョンを守ること?」

「違う」


 少女は意外にも首を左右に振った。


「私は、迷宮の一番奥へ戻りたい」

「戻りたい?」

「元々私は、上層のどこかに配置されるはずだった。でも、その前に主がいなくなって……でも命令を遵守しようと一番下の本拠地から出たら、魔物に襲われた」

「上層担当だから、下層にいる魔物達に干渉する権限がなかったということ?」

「たぶん、そう」

「ということは、あなた下層の情報を持っているの?」

「そうだね」

「わかった……それで、あなたがここにいるのはなぜ?」

「私はどうにか下層から抜け出して、この森まで来た。ここから上なら魔物を操ることができたから、どうにかして帰れないかと考え続けて……あなた達がやってきた。最初対処しようとしたけど、私より強いし逃げて……下層まで行ってくれるみたいだから、放置しようかと」

「なるほどね。なら、どうしてあなたは最下層へ戻ろうと思ったの?」

「この森や上の草原が本来配置される場所だったけど……最下層の本拠こそ、私のふるさとみたいなものだから」


 つまり、もう一度生まれた場所に戻りたいと……それがどういう意味合いなのかわからないが、ともかくこの魔族は最下層までの情報を持っている。

 なら、どうすべきか……俺とアルザはミリアと少女との会話を見守ることにする。下手に介入するより、彼女に任せた方がいいのは間違いないからだ。


「そう、わかったわ」


 ミリアは相づちを打ち、どうすべきか考え始めた。少女魔族はそれがわかっているのか動かない。アルザが相変わらず剣を突きつけてはいるので、問い掛けを待っている。

 そして……一分ほど経過した時だろうか。ミリアは少女魔族へ、再び口を開いた。


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