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最強のおっさん魔術師、自分探しの旅をする  作者: 陽山純樹
第二章

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一日目終了

 第二層、第三層とミリアの魔族としての気配を漂わせて動いてみたが……結果として何も反応はなかった。


「ま、一日目だ。すぐに成果が出るとは思ってないさ」

「でも、ニックとの差は開いた感じだよね」


 アルザの指摘に俺は「そうかもしれない」と答えつつ、


「でもまあ、真正面から攻略するよりも良いだろ? それに異界化した空間だから、歩き回るだけでなんだか楽しいし」

「楽しい……ディアスが満足しているならそれでいいけど」

「もちろん、勝つために情報集めはしているよ。ニックとの戦い……別に加減するつもりはないからな」


 最後に俺達は第五層の階段を下って第六層へと赴く。そこは第五層と同じ城のような見た目であり、誰かが戦っているのか戦闘音が聞こえてきた。

 それだけ確認して俺達は階段を上る。そして転移ゲートで入口まで戻ってきた。時刻としては――


「ずいぶんと経過しているわね」


 ――夕方近くになっていた。俺達は時折休憩とかしながら動き回っていたのだが、予想以上に長い時間ダンジョンへ潜っていたようだ。


「ま、時間感覚がわからなくなるのも無理はない」


 ちなみに俺は時間をカウントしていた。ダンジョンで気をつけるべきことの筆頭は疲労などによる注意力や集中力の散漫であり、探索時間などを考慮して進むか退くかを決めるためだ。今日のところは魔物との戦闘もあまりなかったのでミリアやアルザはまだまだ余裕の表情。ただ魔族探しには魔力を消費するし、明日以降は今日以上に気をつけなければならないだろう。


「とりあえず今日のところは休もう。明日以降は戦闘になるだろうから、注意はしてくれ」

「わかったわ」

「りょーかい」


 ミリアとアルザが相次いで頷くのを見て……俺達は、天幕へ戻ることにした。






 その後、俺達から遅れて一時間後にニックが地上へと戻ってきた。情報によると、今日一日だけで第六層に関するお宝などは手に入れてしまったとのこと。なおかつ、下へ続く階段を守る魔物もいたらしい。彼は思った以上に攻略を進めたらしい。


「お、ディアス」


 そして夕刻の時間、天幕の前でたき火をして、鍋を火に掛けさあ食べようとした時、ニックが声を掛けてきた。


「よお、ダンジョンだが――」

「おい、ちょっと待て。いきなり話し出しているけど俺達は競争相手だぞ?」

「まあまあ、この辺りは別段話しても問題ないレベルだからな」


 と、俺の横に座り込んだ。周囲では何やらヒソヒソ話をする冒険者とかが出ているけど……まあ、俺達の顔を知っている人達なら、何があるんだと思うところだろう。


「第六層までの構造については確認したか?」

「ああ、まあな」

「ここまでは一本道だったんだが、どうやらここからいくつも道が枝分かれしている」

「つまり、第七層へ繋がる道はいくつもあると」

「そうみたいだ。なおかつ、ご丁寧に全ての場所に階段を守護する魔物がいる」


 徹底しているな……と、ここで俺は今日調べたことについて思い浮かべる。

 ダンジョン構造はさらに複雑化するようだが、そこに隠し通路が加わると……ふむ、例えば第七層へ続く階段の中で正解の道はおそらく一通り……けれど、隠し通路で色々と行き来できるとしたらどうだろうか?


 ダンジョンを管理する魔族の心理を考えると、地上へ向かう道が一本だけというのも不便だろう。なら、隠し通路は下層へ行けば有効に使えるかもしれない。


「思った以上に攻略には時間が掛かりそうだな」

「ああ、まったくだ」


 ……隠し通路のことについては、ひとまず黙ったままもう少し調べるべきだな。あとダンジョン構造が下層でさらに複雑化されるなら、情報を持っている可能性のある魔族は見つけておきたい。

 もっとも、上層のどこかに隠れていたらの話だけど……こちらが沈黙していると、ニックは俺へ提案をしてきた。


「なあ、せっかくだし今日は一緒にメシを食わないか?」

「……悪いけど、鍋の中身は三人分だぞ」

「こっちの食い物は別に用意するさ。ついでに、良い酒も売ってたんだ」

「酒って……言っておくけど俺は飲む気ないぞ」

「まあまあ、こういう機会もないだろうし少しは飲もうじゃないか」


 なんだかなあ……本当に俺達は競争相手なのかと疑ってしまうところだ。

 彼なりに理屈をつけての行動だろうけど……近くにいる彼の仲間なんかは提案に苦笑している。とはいえ「それはやめておこう」などと告げる気はなさそうだ。


 まあここで拒否するのもなんだか変な話なので、


「……酒を飲んで絡むようになったら、問答無用で睡眠の魔法を使うからな」

「お、いいぜ。というわけで、今日は飲むか!」


 ダンジョン前の店にある酒を全て飲み干しそうな勢いを伴ってニックは叫んだ……その顔は、どこまでも無邪気な子供のようであり、本当に英傑なのかと疑ってしまうくらいだ。

 そうこうする内に酒を俺達の近くへ置き、ニックと彼の仲間も座り込む。


 そして――唐突に、宴会が始まった。


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