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最強のおっさん魔術師、自分探しの旅をする  作者: 陽山純樹
第二章

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偶然の――

 やがて、俺達は花畑を離れ山を下りた。圧倒された余韻がまだ残る中で、下へと戻ってきてこれからどうするのか二人へ尋ねる。


「一応、他に行きたい候補とかあるけど……アルザ、ミリア、どうする?」

「私はついていくよ」

「私も同じく」


 彼女達はそう答えたので、俺は小さく頷き、


「わかった。それじゃあ一旦町へと戻ってから――」


 その時、俺は背後に気配を感じ取った。普通の人とは明らかに違う、異質な気配。なおかつ、過去に感じたことのあるもの……アルザと同質の強者のそれだと明確に悟った瞬間、俺は反射的に振り向いた。


「あ……」


 アルザもまた声を上げる。そして目にした先にいたのは、


「おおっ! ディアスとアルザじゃねえか!」


 ――上背が俺よりも一回り大きい、鎧姿の男だった。茶髪を短く刈り上げ陽気な顔つきを持つ男性の背中には、仰々しい大剣がある。

 その周辺には、彼の仲間らしき人物が複数人……と、周囲がにわかにざわつき始めた。おそらく目の前の男性を見たことがある人も多いのだろう。そして、俺とアルザの名前。冒険者風の人物もいるので、おそらく俺達のことを知っている人間だって多いはずだ。


 目の前の人物は、町で噂をしていた……『六大英傑』の一人だ。


「こんなところで会うなんて奇遇だなあ!」


 そして、声が大きい。明るく陽気でムードメーカー的な性格の彼は、一癖も二癖もある『六大英傑』の中で、仲を取り持つような役割を担っていた。とはいえ、思ったことを口にする上に悪気はないけど猪突猛進な性格から、彼もまた時に場を混乱させることもあったし、今もたぶんそうだろう。

 とはいえ、彼自身は裏表がない……まあ元々彼は魔物や魔族と戦うというよりは、お宝を求めてダンジョンに潜るタイプの冒険者であったため、人を疑う必要性とかがあんまりなかったのかもしれない。


 そして今、目の前の彼は臆面もなく俺達へ近寄ってくる……周囲にいる仲間がなんだか申し訳なさそうにしている中、俺は男性へ笑みを浮かべ、


「ああ、奇遇だな。ニック」


 俺の言葉に男性――英傑、ニック=ハノベルドは、豪快に笑って応じたのだった。






 彼の能力は背にある大剣による豪快な一撃。アルザだって退魔の能力を用いたかなり攻撃的かつ荒々しい剣術なのだが、ニックの剣はそれをより大味にした感じだ。

 剣術は習っているらしいのだが、正直彼は剣を一閃するだけで魔物を吹き飛ばしていたので、剣術というものをあまり見たことがない……つまり、技術など必要とせず本来魔物や魔族相手ではあり得ない力だけで戦い続けた、まさしく怪物級の人物だ。


「……そちらのことは噂に上っていた」


 俺達は町へ向かう街道を歩きながら話をする。山の麓は人も多かったので、立ち話をしていると人が集まりそうだったのだ。


「誰なのか疑問だったけど、ニックだったら納得だ。目立つからな」

「はっはっは! それは間違いない!」


 豪快な笑い方をするニック。なんというか、相変わらずである。

 裏表がないため、シュウラとかよりも色々と国側から仕事を任されていたことを思い出す。まあ中には雑用めいたものも含まれていたみたいだが、それらを愚直にこなしていった結果、次第に認知され英傑入りまで果たした。


 彼自身は、正直英傑だからなんだという感じであまり名声とかに興味はなかった。そもそもダンジョンに潜っているのはお宝を手に入れて一生遊んで暮らせる金を得るとかよりも、知的好奇心から何が起こるかわからないものを見たいという、まるで子供のような期待を持っているからだ。ある意味純粋無垢であり、だからこそ豪放磊落な性格で、色んな人に好かれているのだろう。


 ただ正直俺はニックのテンションについていくと疲れるので、どちらかというと一歩引いた感じで接していたのだが。


「それでニックは、なぜここに?」

「あの場所に用がある理由は一つしかないだろ」

「観光か」

「ああ。たまにはのんびりとしたかったからな」


 まあ、そういう時もあるか……。


「ディアスとアルザも同じか? というより、なぜ二人は一緒に旅をしている? それと」


 ニックはミリアに目を向ける。彼なら気付いているか。ただ、俺のことを信用しているのか、あるいは周囲に聞かれるとまずいと感じているのか魔族であると言及はしない。


「……口に出したりはしないか」

「そのくらいの分別はつく……理由があるんだな?」

「今から町へ戻るまでに話そうか。そのくらいの時間で、簡潔に説明できるからな」


 ――そこから、俺はニックへ話し始める。彼はその間、一度も質問を挟むことなく、俺の話を黙って聞き続けたのだった。


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