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最強のおっさん魔術師、自分探しの旅をする  作者: 陽山純樹
第二章

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世間話の中で

 目的地近くの最寄りの町に到達した後、俺達は宿で一泊し朝から行動を開始する。で、俺達と同じように当該の場所へ向かう人は、結構いた。


「冒険者みたいだけど、リーゲン山に興味があるのかい?」


 話し掛けてきたのは商人の一団。彼らは聖王国内を馬車で移動しているらしいが、せっかくここまで来たのだから、と荷物や馬車を置いて山へ向かっているらしい。

 そして俺達のことは知っていない……まあ名前は知っている可能性があるけど、戦場で顔を合わせなければ名前と一致することはないか。


「ああ。今は観光名所とかを回っているところだ」

「魔王を倒して平和になったから……って感じか?」

「魔物は出現するし、そうした活動の合間……息抜きみたいな感じかな」

「そうかそうか。もし町へ戻ったら、良い薬草とかを提供できるぞ?」


 さすが商人、といった感じで物を薦めてくる。俺は「今は大丈夫」と返答すると、商人は世間話に切り替えた。


「冒険者としては景気はどうだ? 魔物は出現するにしても、仕事は減ったのか?」


 ……彼らにとっては、冒険者もお得意様だろうから、今後商売していく上で気になるところなのかもしれない。


「今はまだ、ってところだな。でも魔王が滅んで魔界側も混乱していて……その影響で魔物が増えている面もあるみたいだが、少しすれば落ち着くだろ」

「んー、そうか。もし冒険者相手に仕事をするとなったら、遠からず難しくなるのか」

「あんたは冒険者専門か?」

「いや、冒険者以外にも店に薬草とか魔法道具とかの商材を卸している……冒険者勢を相手にするのが難しくなったら、魔法の研究機関とかを相手にするんだが……魔王が滅んで魔界からの脅威がなくなったら、そちらも難しくなるのかもしれんなあ」


 どこかぼやくように商人は呟く。


 ……聖王国は元々魔界と隣接していたため、軍事についてはかなり予算をつけていたはずだ。その強さがあるからこそ周辺諸国と比べても強く、魔族との戦い以外でも戦争は勝ち続けた。

 だが、魔王が潰え侵攻される可能性が低くなった……とくれば、軍縮を検討する可能性も十分ある。その辺り国がどう判断するのか……もしそれでも軍備を維持するなら、聖王国は魔界を警戒している。新たな魔王候補が何をしでかすかわからないと警戒しているということになる。


 軍縮なら、魔王が消えたことにより安全と判断したわけだが……俺はここで商人に、


「まだまだ国相手に商売はできると思うけどな」

「お? 何か根拠があるのか?」

「魔界は魔王が滅んで混乱しているらしい……けど、今後魔王の敵討ちということで攻め込んでくるとかあり得そうじゃないか?」

「ああ、確かに……うん、国に対してのアプローチを強くした方がいいかもしれないな」


 俺自身、次の魔王が決まるまで混乱は続くと思っているし、情報収集をしている国側がもう大丈夫だと軍縮を始めるとは考えにくいんだよな……不戦派の魔王になった段階で聖王国はようやく予算をどうするかという議論を始めるとは思うけど。


「この近辺で大きな仕事はなさそうか?」


 さらに商人が問い掛けてくる。俺は冒険者ギルドの依頼を思い出し、


「んー、大規模なものはないな。ここは魔界からもそれなりに離れているし、王都から離れれば離れるほどそういう傾向になるんじゃないか?」

「そうか……となると、ああいった人も観光をしているのだろうか?」

「ああいった人?」


 聞き返すと商人は頷き、


「噂によると『六大英傑』の一人がこの周辺にいるらしいんだよ」


 ――俺やアルザのことかと一瞬考えたが、違うな。別に誰かがいるのだろう。


「英傑の誰なのかまではわからないが、商人の中でそういう噂があった」

「……そちらは大きな仕事があると思ったのか?」

「ああ。数名の仲間を引き連れていたから、国から仕事を任されているとか思ったんだが」


 仲間……それだけでは特定が難しいな。たださすがにシュウラではないだろう。

 興味があったら冒険者ギルドで調べてみようか……などと考えていると、商人は誰かに呼ばれ俺の下から離れた。


「……誰だろうなあ」


 もし密命とかを帯びているなら、顔を合わせると面倒事になりかねないけど。


「会ってみる?」


 会話を聞いていたのかアルザが話し掛けてきた。


「なんだか興味ありそうだし」

「正直、顔を合わせてメリットがあるかどうか疑問だな。大きな魔物討伐とかに参加するなら、俺達が加わってもよさそうだけど……」


 英傑の中にはセリーナと同様に気難しいタイプもいるので、おいそれと会おうとは言いづらい。


「ま、ギルドで情報を漁った限り周辺は平和だし……特に、干渉する必要はないかな」

「偶然会いそうだけどね」

「あり得そうだから困るんだよな……」


 英傑とそれに類する者同士、惹かれ合うのだろうか? そんなことを考えつつ、俺達は山への道を進み続けたのだった。


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