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最強のおっさん魔術師、自分探しの旅をする  作者: 陽山純樹
第一章

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風の噂

 魔物を倒し数日後、使い魔を通して送った手紙に返信が来た。その名前は俺も見覚えがあるものであり、内容は簡潔に言えば手を貸すというものだ。


「交換条件として色々提供しなきゃいけないみたいだけど」

「ああ、その辺りは問題ない」


 と、オーベルクはあっさりと受け入れた。よって協力を請うと再び手紙を送り――それからさらに数日後、騎士と魔術師がやってきた。


「ずいぶんと早かったな」


 と、俺が言った相手は宮廷魔術師。知り合いであり、相手は苦笑しながら理由を語り出した。


「元々、オーベルク殿には目を付けていたんだ。ただ、国側としては表立って干渉するのはどうなんだ、という議論もあったからな」

「それで今回のことを通して、今まで以上に交流していこうと?」

「そういうことだ。魔王が滅んだのを契機に……彼に報復として魔物が差し向けられていたという事実を考慮すれば、説得も難しくない」


 なるほど……内心で納得しつつ、俺は一つ質問する。


「具体的にオーベルクには何をさせるつもりなんだ?」

「魔法技術などに関する交流だよ。彼は卓越した魔術師だからな」


 へえ、そうなのか……と驚いた顔をしていると当の宮廷魔術師が呆れたように、


「おいおい、なんでディアスが知らないんだよ」

「俺の請け負った仕事では、オーベルクの能力を知る必要とかはなかったからな」

「ああそうなのか……ふむ、興味があったら決闘とかしてみたらどうだ?」

「何でそんなことしなきゃいけないんだよ」


 シュウラもそうだったけど、平和になったのに……。


「ははは、ひとまず今後のことは任せてくれ。旅、楽しんでくれよ」

「……俺のことは、知られているのか?」

「王都じゃ結構話題になっていたぞ? 魔王を倒した直後に、勇退した七人目の英傑……でも、風の噂で魔族討伐やら魔物討伐に励んでいることに加え、元英傑まで仲間に加えている……冒険者の間では色々な噂が立っているらしい」

「なんだか嫌な予感がするんだが……俺が新たな戦士団を結成しようとか、そういうやつか?」

「正解だ」


 頭が痛くなってくる……放置するのもまずいのかな?


「実際のところは事実じゃないだろ?」

「そうだな。仮に俺が否定しても話に尾ひれが大量についているだろうし、止めるのは無理か。対処法としてはほとぼりが冷めるまではおとなしくするのが一番だけど、旅をする以上は路銀を稼がないといけないからな。それに、アルザの目的を果たすためにそれなりの資金が必要だし」

「どうしたって活動する以上は噂が広がるだろうな」

「……セリーナの様子はどうだ?」


 彼は苦笑するばかりで何も答えなかった。それで俺はなんとなく想像がつく。


「はあ、戦士団を抜けた後の方が彼女のことを気に掛けているな」

「大変だな」

「人ごとみたいに……いや実際に人ごとか。ただセリーナが立腹だと、国側もやりづらいんじゃないか?」

「少なくとも公的な場所では穏当だからこっちとしては問題ないよ。戦士団内の状況まではわからないが」

「……連絡をとるべきかなあ」

「そこまで気に掛けなくてもいいんじゃないか?」

「いやだって、このまま怒り度合いがピークに達したら、俺の所へ殴り込みとかしてこないか?」


 彼は何も答えなかった……が、あり得そうだという雰囲気を見せている。


「完全に否定できないのがなんとも……」

「そうだろ? セリーナだったらやりかねないとか思うだろ?」

「なら、具体的な対策はあるのか?」

「……ひとまず、少しの間はおとなしくしているか」


 ミリアと出会って以降は仕事も多かったし、観光とかあまりしてこなかったからな。彼女が改めて旅に同行するのであれば、俺と彼女とアルザの三人でのんびり国内を旅するのも良さそうだ。


「ま、とりあえず何事もないように祈っているよ」

「ああ」


 宮廷魔術師が俺から離れる。その後、彼らは作業を始めた。






 国から派遣された人員の作業については、日中におおよそ対策が完了したようだった。


「改めて礼を言わねばならないな」


 と、森の外で魔術師達が撤収作業をしている中、横に来たオーベルクが声を掛けてきた。


「ひとまずこの場所の安全は保たれる」

「……これならミリアがここにいても問題ないんじゃないか?」


 そうは問い掛けてみたが、オーベルクは首を左右に振った。


「魔物の対策はできたが、彼女がここに留まると面倒な事態になるかもしれない」

「それは……」


 魔族が彼女を狙ってくるかもしれない――ということを質問しようとしたのだが、オーベルクは手でこちらを制した。


「君も予想はしているだろう……とはいえ、あまり口に出さないで欲しい。言霊となって現実になってしまっても困るからな」

「結構迷信めいたものを気にするんだな」


 苦笑するオーベルク……まあ俺としても口にする必要性はないから、直的的に言うことはしない。


「俺の推測している懸念をそちらも抱いているというわけだ」

「いかにも」

「……ミリアからまだ答えは聞いていない。ただ作業は完了したから数日以内にここを出て行く」

「それはミリアに伝えておこう」


 騎士や魔術師が戻ってくる。それで俺達もまた城へ戻るべく歩き始めた。


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