飛竜との戦い
オーベルクと色々と話しつつ、俺は準備を済ませ――数日後、再び城を出て魔物を倒すべく動き始めた。
「こちらは使い魔を用いて観察をしておく。もし危なくなったら――」
「ああ、助けが必要なら伝えるよ」
俺はオーベルクにそう応じ、アルザと共に城を出た。
「さて、アルザ。いよいよ決戦だが」
「こっちは問題なし」
「俺の方もいける……今日で決着を付けたいから、気合いを入れてくれよ」
「わかってる」
俺達は歩を進め、魔物を発見した場所へと到達。そこには以前と変わらぬ様子の魔物がいた。
すると魔物――飛竜は反応。俺達のことはしっかりと記憶しているらしい。
「よし、手はず通りにやろう」
俺とアルザは地を蹴って渓谷の中へとダイブする。そして空中で足場を生みだし――飛竜は吠え、すかさず口を開けた。
火球が来る――そう認識した直後、俺とアルザは横へと跳んだ。刹那、俺達が立っていた場所に漆黒の火球が通過する。それは轟音を上げながら断崖を砕いた。
「こっちを警戒しているのは間違いない……!」
声と共に俺は反撃に出る。杖先から雷撃を放ち、飛竜へと直撃……したが、ダメージはほんどない様子。
これについては予想の内。ただ攻撃は通用しなくとも雷撃によって飛竜の動きをほんの少し止めることには成功した。
俺の攻撃も、足止めはできる……改めて確認すると、
「アルザ! このまま決めるぞ!」
宣言と共に俺はさらなる魔法を使用。杖に魔力を凝縮し――それを自分自身とアルザへと付与した。
強化魔法――練り上げた魔力で短時間の間、通常よりも遙かに高い能力を発揮できるタイプのもの。これまで魔族討伐などで多くの人に付与してきたものとは大きく異なり、付与する相手の魔力を深く理解していなければ、効果のないものだ。
人は個人個人によって魔力の質が違う。汎用的なものであればそこまで気にしなくてもいいが、強力なものであるなら、本人に適したやり方でないと上手くいかない。数日の間にアルザの魔力はある程度解析した。そしてくみ上げた魔法だが、果たして――
「はっ!」
アルザは自らが生み出した魔力の床を蹴り、飛竜へ迫った。対する魔物は再度口を開けて火球を生み出そうとしたが――彼女の接近の方が早かった。
即座に飛竜は爪で応戦してきたが、アルザは容易く避けて懐へ潜り込む。以前と同じような構図だが、飛竜はさらに別の手を打ってきた。
それは……アルザが飛竜の腹部へ斬撃を叩き込もうとした矢先、魔物の体が輝き始めた。変化に対しアルザは構わず剣戟を決める。剣は確かに体へ入った……が、思ったより傷がつかない。
飛竜がさらに爪を差し向けアルザへ向け攻撃する。そこで彼女は一度距離を置いて俺の所まで戻ってきた。
「大丈夫か?」
「問題ないよ」
「向こうも防御してきたな……俺の強化魔法で剣の威力も上がったはずだが、それでも無理か?」
「いや、今のは私の力だけで剣を振った。まだディアスの魔法は使ってないよ。さらに言えば、策によって組み込んだものも使っていない」
「……飛竜にまだ奥の手があるのか確認したのか」
「そういうこと。さっきの光……あの防御能力は把握した。今度こそ、いける」
「わかった。なら俺は、アルザが攻撃を決めるまで敵の動きを縫い止める」
彼女は頷き、再び飛竜へと向かう。それに今度は俺も追随した。魔力を高めて杖先へ収束させ、対する飛竜は再び火球を放とうと口を開けた。
すると今度は――先ほどよりも溜めが短い中で火球が放たれた。しかもそれは今まで比べて小ぶり……けれど、一つではなく複数だった。
「また面倒だな……!」
声を発しながら俺は火球を回避する。アルザも間合いを詰める速度を変えることなく火球を見極めて回避に成功。おそらく火球が放たれた瞬間の動きなどを見て、軌道を読んでいるのだろう。
それと共に俺は雷撃を繰り出した。すると近づくアルザへ警戒していた飛竜に直撃し――ほんの一瞬だけ動きを鈍らせる。普通なら、飛竜にとって何のことはない攻撃だろう。だがアルザは……その一瞬の間に魔力を高め、剣を叩き込むべく接近する。
そこで俺もまた魔力を杖先に収束。今度は牽制的な意味合いではない。文字通り、飛竜を仕留めるための魔法だ。
とはいえ、外皮が強固である以上は俺の魔法は決定打にならない……が、それを解消するのがアルザの存在だ。飛竜が声を上げ爪を繰り出そうとする中で、彼女は再び肉薄する。
その剣には、これまでと比べものにならないほどの魔力が込められていた……俺は彼女の剣に策を仕込んだ。それは、オーベルクの城にある魔法道具を利用して、強化したのだ。
魔力に対し相当な抵抗力のある飛竜だが、今回強化したのは純粋な剣の切れ味。魔力を防ぐといっても、切れ味を純粋に強化するだけなら……とうとうアルザが飛竜へ剣を叩き込む!
そして――飛竜の口から、雄叫びのような声が上がった。




