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最強のおっさん魔術師、自分探しの旅をする  作者: 陽山純樹
第一章

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お節介

 城へ帰還直後、俺はオーベルクと顔を合わせていくつか頼み事を行う。


「――というわけで、魔物を倒すには必要なことだから頼む」

「構わん。必要経費だな」


 オーベルクは喜んで承諾すると、


「アルザ君への処置はこちらで行うとして、だ。勝算はあるのか?」

「なければこんな提案はしていないさ。それに、五分五分という感じでもない。準備をしっかりすれば絶対に勝てる」

「確信があるのか……魔物の特性を看破し、その上で勝負を挑もうとしていると」

「確かに敵は強いが、やりようはある」

「私やミリアの出番はなさそうか?」

「現時点では大丈夫だと思うけど、何かあったら言うさ」


 その言葉にオーベルクは「わかった」と応じた。


「君に任せていた方が上手くいきそうだな……とはいえ、何もしないというのも気が引ける」

「その分報酬をはずんでくれればいい」

「……少し疑問なのだが、自分探しという名目で旅をする上で、そこまで路銀が必要なのか?」

「金は多い方が旅も楽だぞ」

「それは当然だが……」

「冒険者ギルドに預けて証書を発行してもらえば、少なくとも聖王国内で不自由はなくなる。まああくせく働いている……魔物討伐などを引き受けているのは人々を助けたいという理由もあるから、金目当てというわけでもないんだが……」

「正直、資金を集めて何かやろうという雰囲気にも見える」

「……まあ、旅が終わった後のことを考えたら少しくらいは金を貯めといた方がいいかな、とは思うけどな」

「もう既に旅の終わりまで見えているのか」

「そこまで大層なものでもないさ。ま、今回の仕事で当面働かなくてもよくなるかもしれないが……その後どうするかは改めて考えるさ」


 肩をすくめつつ話す俺にオーベルクは「そうか」と相づちを打つに留めた。

 何やら向こうは思うところがあるみたいだが……というより勘ぐっているような雰囲気もある。正直俺自身旅の理由については本当だし、例えば金を集めて何をしでかそうとかは考えていないのだが――


「……七人目の英傑ということで、色々と推し量ってしまいそうだな」


 そこでオーベルクは告げた。

「例えば新たな戦士団を作るために、金を蓄えているとか」

「悪いけどそんな野心は毛頭ないよ。正直、疑われて変な噂を立てられるのも癪だし、何かあれば全力で否定したいところだけど」

「かといってムキに否定すれば逆効果なのでは?」


 そうなんだよなあ……俺は別にシュウラみたいに怪しさはないと思うんだけどなあ


「ミリアから、おおよその事情は聞いている。君は所属していた戦士団を、追い出されたらしいな――ああ、私が君のことをどうしても知りたくて強引に聞き出した形だ。ミリアを責めないでやってくれ」

「それはいいけど……何か思うところがあるのか?」

「君自身は裏表なく、旅を楽しもうという気概があるのだろう。私も話していてそうなのだと確信している次第だが……君のことを追い出した副団長……つまり『六大英傑』の彼女はどう考えているのか」

「俺を追い出したから報復されるとでも考えている……と、言いたいのか?」

「これまでの旅において、君自身は自覚がないにしても人に影響を与えていたのは理解したはずだ」

「それは……まあ……」


 シュウラの語っていたことや、元戦士団の同士が喋っていた内容。特に後者は戦士団に大きな影響を与えていることだろう。

 俺の方は問題ないとフォローしてくれと要求しているが、セリーナがどう感じるのか――


「もしかすると、決着をつけなければならないかもしれないぞ」

「セリーナと? 正直勘弁願いたいな」

「さすがに『全能の魔術師』と戦うのは嫌か」

「互いに手の内を知り尽くしているからな。正直、俺は彼女に勝てる要素が一つもない……あるとすれば、彼女の意表を突くくらいしかできないな」

「逆に言えば、意表を突けば勝てると」

「ただし、十回に一回勝ちを拾えるかというレベルだぞ」

「君の顔を見ていると、重要な局面でその十回に一回を確実に拾える手段を持っているようにも見える」


 結構評価されているな……。


「とはいえ、直接対決はしないよう少しは考えないといけないかもしれんぞ」

「何か根拠が?」

「戦士団の副団長様から見たら、君は各地で功績を上げてさらに元英傑まで仲間に引き入れている。君を追い出したことに思うところがあったとしたら、自分を追い落とすために動いている……などと深読みしてもおかしくないと思ったまでだ」


 ありそうなのが、なんとも……。


「その助言はありがたく受け取っておくよ……ただ、一つ質問させてくれ。なぜこんな込み入った話を?」

「何、ミリアが共に行動する御仁なのだ。魔物討伐の礼も兼ねて色々助言したいと思ったまでだ」


 ――なんというか、結構お節介な魔族だなと、俺は心の中で思ったのであった。


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