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最強のおっさん魔術師、自分探しの旅をする  作者: 陽山純樹
第一章

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魔を滅する者

 俺とミリアはそこから予定通りにアルザのいる町へと到達する。冒険者ギルドを訪れると、仕事をいくらか受けているらしいのだが、


「故郷に戻っているようです」

「何か目的があるのか?」

「ご本人からお伺いしたわけではありませんので詳細はわかりませんが……現在も町には戻っていないようなので、おそらく故郷にいるかと」


 ふむ、それなら一度顔を見せるか……ミリアにその旨を告げ、俺達はいったん町を後にする。

 山の麓にある小さな村がアルザの故郷なのだが、そこは魔物によって滅ぼされた……といってもアルザ以外が全員魔物に……というわけではない。犠牲者は出たが大半の村民は村から必死に逃げて無事だ。


 とはいえ、その村周辺はしばらく魔物のテリトリーとなってしまい、結果的に村人は故郷に戻ることができなかった……それがおよそ数年続き、村の人達はバラバラとなって廃村になったという形だ。

 ただアルザにとっては、村の人に戻ってきて欲しいという気持ちはありそうだけど……アルザが拠点にしている町からおよそ一日。俺とミリアは廃村に辿り着いた。


 そこは、当然ながら人が暮らしていない場所なので閑散としている……のだが、瓦礫などはきちんと片付けられており、荒れ果てて放置されているという印象は薄い。


「アルザが清掃したのかな」

「そう、なの?」

「綺麗好きだったからな……そういえば、ミリアはアルザのことをどれだけ知っている?」

「異名と資料上の情報程度よ。人相とかまではわからないけど」

「そうか」


 応じつつ俺は廃村の中を進んでいくと……人影を発見した。その姿を見て俺は、


「おーい、アルザ」


 声に反応して相手は顔を向ける。そこにいたのは、


「へ?」


 ミリアが声を上げた。視線の先……立っているのは、銀色の髪を持つ女性だった。

 とはいえ、冒険者風の格好かつ腰には剣を差しており、剣士として風格はあるにはある……のだが、身長の低さに加えてやや童顔な顔つきから、見た目的に剣に憧れて真似ている少女のようにも見えてしまう。


「ちなみにあの見た目で二十歳手前だからな」


 俺の言葉にミリアはじっとアルザを見る。そんな彼女の視線が気になったか、相手はこちらへ近づいてきた。


「……魔族?」


 そして一発で言い当てる。まあさすがに元とはいえ『六大英傑』に選ばれていた人物だ。気付くだろうな。


「ああ、といっても彼女は不戦派の魔族だから、斬ったりしないでくれよ」

「ディアスさん、私のことをなんだと思ってるの?」


 どこか不服そうに語るアルザ――本名アルザ=マドック。セリーナと肩を並べる天才的な能力によって、一時期英傑の枠に入っていた人物である。

 セリーナが魔法なら彼女は剣。英傑の中には剣の達人もいるのだが、その中で彼女は才覚だけでのし上がったという、俺から見たら化け物のような女性であった。


 しかも十代半ばでそれだけの実力だった……剣を握る経緯は重いし、戦場に立った姿はまさしく『魔を滅する者』という異名にふさわしいほどの暴れっぷりだったが、普段は年齢相応の女性という感じで、人気も高かった。

 色んな戦士団から引っ張りだこだったみたいなのだが、結果として彼女はどこにも所属せず、一匹狼のまま怪我をして療養していたわけだが――


「えっと、何の用でここに?」


 そしてアルザが問い掛けてくる。簡潔に説明すると彼女は憮然とした表情をした。


「シュウラの……あの人、結構気を遣うよね」

「一時期交流していたから気になったんだろ。俺としては大丈夫だろうという考えだったけど、気にしすぎくらいな性格のシュウラからしたら心配だったんだろ」


 そこで俺は彼女と目を合わせ、


「怪我の方は?」

「うん、完治したよ……ごめんね、その、一番大事な戦いの場に参戦できなくて」

「無理を押して死なれたら寝覚めが悪いし、それにアルザ以外だって戦線から離脱した人は多かった。誰も気にしていないさ」


 肩をすくめ応じる俺にアルザはクスリと笑う。


「そっか……で、ディアスさんはどうして魔族と?」


 そこもまた要点を絞って説明。それに「へえ」と小さく声をこぼして、


「ディアスさんが戦士団を抜けて、か……」

「護衛する経緯よりも気になるのはそこなんだな」

「追い出されたんでしょ?」


 シュウラのように調べてもないのにこの言及である。


「……まあ、実質そういう形だな」

「実質というか事実じゃない?」

「俺は戦士団に所属していてあんまり自覚なかったけど、そんなにセリーナから目の敵にされていたのか? 俺は」

「うん」


 即答であった。


「同じ魔法使いってところもあるとは思うけど」

「でもシュウラとかだって……」

「同じ戦士団ってところが関係しているかもしれないね」


 なかなか的確なコメント。改めて思うのは、俺の存在は彼女にとって心底厄介だったんだな、ということであった。

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