表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/65

イルナ3 脅迫

 ギュアンの頭には、レットは罪人だという考えが前提にあって、それ以外の話には聞く耳を持てなくなってしまっている。  

 けれどここで誤解を解いておかないと、レットがひどい目にあわされてしまう。


「お願い、ギュアン。話を聞いて」


 踵を返そうとするギュアンの腕を咄嗟に掴み、引き止める。


「大人しく戻るんだ、イルナ。そうしないと、ティルシャを檻に入れるぞ」


 ギュアンの口から発された言葉に、イルナはびくりと肩を震わせ、固まった。


 ニール村に生まれた女の子は、七歳になると世界中でこのランフェル山でしか生まれないという白豆栗鼠を一匹与えられる。

 以来、寝食を共にしながら育つのだ。

 イルナとティルシャは、もう八年も一緒にいる。ティルシャは、イルナにとってかけがえのない、自分の体の一部にも等しい存在だ。

 そのティルシャを檻に入れるということは、イルナから引き離すということ。それはイルナにとってなによりも辛い処罰だ。


「ギュアン、あなた……」

「イルナ、わかっているだろう? 俺はおまえのことを大事に思っているんだ。おまえがあとひとつ真実を視たとき、おまえは俺のものになる。そうなれば、俺が一生おまえの傍にいておまえを支え守ってやろう。だが、もしそれまでにおまえの身に何かがあったらと思うと、俺は恐怖で眠れなくなるんだ。だからイルナ、いい子だから大人しくしていろ。そうすれば、全てが上手くいく」

「ギュアン……」


 イルナは言葉を失い、一歩、後退った。これまでにも、過保護だと思うことは何度もあった。けれど真実を視ることのできる女はこの国の宝とでもいうべき存在で、その女を護るためにいる男衆が過敏になることは特に珍しいことではないので、さして気にはしなかった。


 けれど今、ギュアンのこの瞳に浮かんでいる光は、明らかに尋常ではなかった。

 歪な笑みを浮かべ、ギュアンがイルナに背を向ける。


 ぞくり、と震えが起こり、イルナは自分の体をぎゅっと抱きしめた。


 ギュアンの姿が見えなくなるまで、イルナはただその場に立ち尽くすことしかできなかった。そしてふいに、はっと気づく。


 このままでは、レットが危ない。


「ティルシャ、急ごう」


 イルナはギュアンが消えた方角とは別の方へと駆け出した。 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ