日の出
リナシェイクが待ち望んでいた太陽が、ゆっくりと姿を現した。
それが合図だった。
既に王宮の周辺に身を潜ませていた仲間が一斉に腰を上げ、門へと駆け寄る。既に王宮内に潜入している仲間の働きのおかげで、門兵はひとりもいない。
リナシェイクが、先頭を切って駆ける。
宮殿内の地図は、全て頭に入っていた。
無駄な雄叫びなど上げない。鬨の声など不要だった。
少しでも早く奥まで進みたかった。警備が手薄とはいえ、こちらは五十人しかいない。しかも、援軍などは期待できないのだ。
その時、ピーと笛の音が響くのが聞こえた。気づかれたか。
脇を走る仲間に目で合図をすると、わかった、という風に頷いて後ろに下がって行った。
後方の仲間たちと一緒に、時間稼ぎをしてもらうことになっているが、興奮のためか目が血走っていたのが気にかかる。
咄嗟の時に冷静に判断できるくらいの余裕を残していればいいが、と思うが、ここまできたら生きるも死ぬも当人次第だった。
リナシェイクは自分のすぐ後ろを走っているフェイレの様子をちらりと窺う。
興奮しているわけでもなく、緊張しているわけでもない。いつも通りの表情に見えた。
肝が据わっている。
やっぱりこいつは人の上に立つ人間なんだろう、と考え、嬉しくなる。
こいつが頂点に立てば、きっと変わるという期待を抱かせるだけの器があるのだ。
出会い頭に攻撃を仕掛けてきた兵を、反射的に鞘に収めたままの剣で殴り倒す。
考えなくても、体が動く。
リナシェイクは口の片端を上げて、にやりと笑った。




