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レット19 救出

 路地をこちらへと向かってくる足音の主が姿を現す前に、リナシェイクは駆け出していた。

 キャノアはリナシェイクのあとには続かず、離れた位置へと回り込んでいる。

 おそらく、射線がリナシェイクに被らないように移動している。


 レットは周囲を見渡した。

 壁際に積み上げてある薪を一本掴み、ちらりと二階の様子を窺う。

 相変わらず窓の向こうに人影はない。

 ティルシャの姿も見えない。


 背後でリナシェイクが相手を挑発する声がしたかと思うと、激しく剣の打ち合わされる音が聞こえてきた。

 今はリナシェイクたちが退路を切り開いてくれることを信じるしかなかった。

 そしてそのあいだに、レットは依然剣戟の音の続く店内からイルナを助け出す。


 ごくりと唾を飲み込む。


 焦ってもいいことはない。

 逸る気持ちを抑え、気持ちを落ち着けながら、レットはふと、こんなに必死になるのは久しぶりだと気づく。


 そう、たぶん、船が沈んだ直後、ホークを捜して彷徨った時以来だ。

 結局、あの時ホークは見つからなかった。


 あれから、何事もなるようにしかならないんだと、諦念にも似た思いを抱くようになった。

 今回、確かに自分はホークを捜して旅に出たけれど、果たして自分は何がなんでもホークを見つけるのだと決意していただろうか。

 心のどこかに、見つからなくても仕方がないという思いがなかったとは言えないんじゃないか――。


 はっと我に返り、レットは頭を軽く振った。


 今はそんなことを考えている場合じゃない。

 イルナを救うことに集中しないと。


 店内の見取り図を思い浮かべながら、できるだけ早く二階へたどり着ける経路を考える。


「待ってろよ、イルナ」


 踏み込む直前、覚悟を決めて二階を見上げた。


 その時、イルナがいる部屋の窓が、内側から何かを叩きつけられ粉々に砕け散った。


「なっっ――」


 いったいなにが起きたんだ?

 腕をかざして落ちてくる破片が目に入らないように気をつけながらも、割れた窓を凝視する。


「レット!!」

「イルナっ!? 大丈夫なのかっ?」


 窓からイルナの顔が見えた。

 イルナの肩の上に乗っているティルシャのつぶらな瞳と目が合う。


「わたしは大丈夫。でも――きゃあっ!」

「イルナ? どうした!?」

「邪魔だ、どけ」


 イルナの返事の代わりに、低音の掠れた男の声が降ってくる。

 いつの間に現れたのか、ローブのフードを深く被った男がイルナを抱き上げレットを見下ろしていた。


「だ、誰だっ! イルナを放せっ!」

「どけと言っている。どかないのなら、踏み潰す」


 言うなり、男はイルナを抱いたままガラスの割れ落ちた窓へ足をかけた。


「ええっ!?」 


 このままでは飛び降りてきた男と衝突してしまう。

 あの男だけならどうなっても構わないが、イルナを巻き込むのは困る。


 レットが慌てて後方へ飛びのくのと、男が二階の窓から少しも躊躇せず飛び降りるのはほぼ同時だった。


「きゃ―――っ!!」


 イルナの悲鳴。

 レットは血の引く思いでその様子を見守っていたが、男はイルナを抱えているにも関わらず、すたっ、と華麗に着地した。


「大丈夫かっ!?」


 薪を手放し駆け寄るレットに、男から解放されたイルナが抱きついてくる。

 髪からふわりとよい香りが漂い、レットはその香りごと受け止めた。

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