レット1 冤罪
エウラルト大陸の最高峰・ランフェル山の山頂近くにある小さな村には、か弱き乙女と勇猛なる男たちが住んでいる。
男たちは乙女を守るため、日々厳しい訓練を積んでいる。彼らは、村を訪れる者たちの中に不届き者がいようものなら、即座に切り捨てることを許されているのだ。
そんな男に槍の穂先を突きつけられたレットは、即座に両手を上げ、降参の意を表した。
「誤解だよ、誤解!」
こめかみを汗が伝って落ちる。
そう、全ては誤解だ。無実なのだ。邪な気持ちなど一切持ち合わせていなかったのだと、なんとかしてわかってもらわなければ、レットの命はないだろう。
「言い訳は聞かん」
「言い訳じゃない。身の潔白を証明したいだけだ。ほら、君もなんとか言ってくれよ」
レットは筋骨隆々とした男の背に隠れるように立っている少女へ視線を向けた。
闇よりも深い漆黒の長い髪がまっすぐ腰まで届いており、肌は透けるほど白い。その瞳は淡い赤紫色だけれど、今は頭から薄布を被っているので、その下の表情は見えない。
代わりに、少女の肩に乗っている白豆栗鼠――栗鼠を小さくしたような全身白毛の小動物のつぶらな瞳と目が合った。
チチッと鳴いて、首を傾げる動作が可愛い。が、そんなことで癒されている場合ではない。
「捕らえろ」
無情にも男が部下に命じた。
「あ、ちょっと、ちょっと待ってってば……」
命令された男が縄を手にやって来て、レットを後ろ手に縛り上げてしまう。
「連れてゆけ!」
ぐい、と肩を押されて、レットは一歩を踏み出した。
「話を聞いてくれ。俺は、ただ真視を行ってもらおうと……」
「話はあとで聞こう」
「先に聞いてくれよ。冤罪だ」
「最初は誰もがそう言うんだ」
「俺は最後まで無実を主張するからな!」
抵抗むなしく、レットは縄に引かれてこの場を去ることになるのだった。




