進入
北斗はアイスを食べながら町を歩く。
「ん?」
幽霊屋敷と名高い屋敷を発見して見上げる。夜にしか来ないため明るい日の元で見るとその屋敷は記憶に引っ掛かる。
(あれ?)
アイスを口に運びながら入り口を見つけて近付く。そして門扉に触れれば軽い電流が走る。
(静電気、ってわけじゃあないか。魔術か何かの力か。けんきゅー)
窓を見て、門を開こうとする。
「おい!ここで何をしている!」
怒鳴り声に振り替えれば月見が呆れたように来るため、そちらへと向かって抱きつく。
「北斗」
「お前の知り合いか!そのガキ!ここは立ち入り禁止だ!二度と入るな。と言っておけ!」
年若い男、妖魔の王は牙を向くが北斗は無視する。
「んー」
にこにこと北斗が笑っていればテレビ局が来る。
「あー」
北斗が出てきたエンリィに手を振る。
「あら。北斗君。月見さんも」
「なんでテレビ局が!」
妖魔の王が背後を見れば男が必死に事情を聞いている。
「え?此処の幽霊屋敷の特集ですけど?特集を、妖魔王が俺も行くと許可が降りたと」
「あ、そうか。それか」
背後の男は携帯を切り恨めしそうに妖魔の王を見る。
「親父様」
「なんだ?」
「もういいです」
開き直った妖魔の王に北斗は感嘆の声。
「それよりこれはなんだ?」
北斗を示して北斗はホワイトボードを取り出して見せる。
「見覚えあったから入ってみようかと」
「喋れないのか?こいつ」
「なんか、妖魔の王が仕組んだとされることが理由でいろいろとあって声がでなくなりました」
冷めた瞳で北斗が妖魔の王を見つめる。
「げっ!道間違えた」
アトロールが呻き、隣にいた男が額を押さえる。北斗は臭いを嗅ぎ、首を捻る。
「とりあえずここです」
引き換えそうとするアトロールに男は屋敷を示す。
「まじかよ」
「なんだ?お前ら」
「物件を手放したいけど中で変な生き物がいるから何とかしてくれって」
「そっちが?」
隣の男を見る妖魔の王。
「これ同期ですけど」
妖魔の王がアトロールを見て驚いた顔をしていたが我に返って言う
「なんだ。戦闘の妖魔か。帰ってもらおうか?」
「それは断ります、ちゃんと許可をとったんで」
「俺が帰るんで後お願いします」
男は逃げるように姿を消す。
「おい!」
「全く。まぁいい。人間以外は行くぞ」
北斗が入っていく妖魔たちを見て慌てて追い掛ける。
「来るな!」
叫んだ妖魔の王に北斗はびくつく。それでも諦めない北斗は垣根から中に入ると壊れている窓から中に侵入する。しかしすぐに妖魔の王と鉢合わせする。
妖魔の王の説教が始まる。
「危険だから残れと言ったんだ!なんでそうやって入ってくる!非力な人間の癖に」
「俺が預かるから勘弁してやれ」
月見が止めれば北斗は月見の背後に回る。
「べー」
舌を向ければ月見から拳骨が落ちる。
「きゅー」
「とにかく親父。これは何を言っても無駄だ」
「なるほど。頑固なんだな」
「親父様には言われたくないと思いますがそうですね」
「親父と同じぐらい頑固だ」
「お前ら」
アトロールとエンリィがお互いに顔を見合わせる。
「あなた今何考えているの?」
「俺はやっぱ妖魔王の息子だったんだなー。ということとエンリィの恋愛事情について。心中笑ってる」
方を震わせながら言うアトロールにエンリィは背中を殴る。
「失礼な!まぁ、でも確かに驚いたけど。まさか妖魔王の息子だったんなんて。そしてあなたが知っていたことに驚いた」
「うち、何でも屋だもん。妖魔と人間の混同の会社だもん。いろんな情報が入ってくるわ」
北斗は月見の側を離れてアトロールの服を掴んで、一緒に歩く。
「あら、可愛い」
エンリィが微笑めば、北斗は仕方がないと言う顔をして親子で仕事をしている月見を見る。
「あぁ。月見さんが仕事しているから寂しくてこっちに来たと。俺は別に良いがエンリィはどうなんだ?」
「とりあえず妖魔の王に撮影は俺を撮るな。と言われているから撮れないのよ。どっちにしろ特別な許可と特別なカメラがいるからね」
「そうなのか?金かかるんだな」
「認識できない。普通のカメラだと」
妖魔の王が的確に良い放ち、月見は苦笑い。
「この人、竜の血が流れているから力が強くて映像を砂嵐にしてしまうんだ」
「月見さんは?」
「これを取ればその問題が浮上するが取る必要はない」
耳のピアスを向ける。
「それは天照が作った魔術が籠ったものだ。妖魔の力を押さえるものな」
「へぇ。で、なんで月見さんが天照の?つかあの人いくつ」
アトロールが驚いたように言えば月見は二人を見る。
「これは俺の力を兄弟の中で一番強く継いでいてな。探査能力などはあまりないが攻撃に関しては押さえても押さえても自己で把握できない。それでそれの親が特別に製作してもらった」
「ほんといくつ?」
「さぁな。俺は王になる前に小さな子供として現れたが」
「え。何?魔力を持つ人って長生き?」
「天照いわく、この世には悪魔と呼ばれる存在がいるんだそうだ。その悪魔と人が結婚して血を分けた子供が妖魔。その妖魔と人がくっつくと妖魔の力が魔力に変わるらしい。だから妖魔と人の間にできた子供には妖魔でも少しだけ魔力があるらしい」
「なるほど。勉強になります」
「私はさっぱり」
エンリィが首を捻る。
「俺はそれ以後人との交わりがない純粋な妖魔であるし、七人のガキもそうだ。だから竜の血が魔術の話は理解している。それに人に惚れたやつもいるが俺のガキで早くに結婚したのはそれだけだ」
「だから俺に王は継げないし継ぎたくない!」
言い切った月見に北斗は鼻を鳴らす。しかし妖魔たちでも嗅ぎとった異質な獣の臭いに警告だと気づいて構える。北斗は見回しそれから前へと出れば廊下を塞ぐほど巨大な針ネズミが落ちてくる。
「と」
「ほく」
「がき」
「君」
其々が叫んだがそれは途中で途切れて、動けなくなる。
北斗は平然と針ネズミを蹴り返して天井に穴を開ける。
「ふん」
北斗はネズミごときが憤るな。という表情で鼻を鳴らす。
「最近の人間は強いな」
「いえ。あれは例外です」
月見の兄は妖魔王の言葉にそう告げる。
「そういうものか」
「え?意外と常識知らず?」
エンリィの言葉に妖魔の王は口を開こうとしてから北斗のホワイトボードを示す。
「あれが原因だ」
「妖魔王は操り人形だった。今は違うけどどっちにしてもお城からでる理由があまりにないし、出ても仕事以外で常識を聞く必要はないでしょ」
ホワイトボードにそう書かれているため全員が納得。
「なるほど」
エンリィも納得すれば妖魔の王は北斗を示す。
「なぜそんなことを知っているのかは知らないがまぁ、あれの言う通りだ。それと人間、二階に行きたいから上に蹴るのはやめろ」
「えー」
「えー。ではない。俺は探している人間がいてそいつが最後にここにいたから来たんだ。お前こそ何故ここにいる」
「だから懐かしいから。俺記憶障害患ってんの」
「そうなのか?」
月見の言葉に北斗は頷く。
「原因はわかっている。けど親の顔も親族も、結構思い出せない。懐かしいと思ったら近付くに限る。人も場所も物も」
寂しそうな北斗。
妖魔の王はそんな北斗の同行を許可すると告げる。
「ところでお前名前は?俺は妖魔王。名は捨てた。これは第一子と家出した第二子。俺の息子だ」
北斗に興味を示し始めた妖魔の王は隣にいた男と月見を示す。
「今それかよ」
アトロールが額を押さえて呻く。
「えー。月見って王様の子なんだ。どおりで似ていると思ったら」
「似ているか?」
妖魔王の言葉に北斗は頷き、月見は不満げ。
「臭いとか、懐かしい雰囲気とか、後」
「んー」
北斗が考えている間見せる。
「とにかく見た目じゃない何かが似ている」
そう示してあめ玉を口に入れて転がす。
「あ、俺月見の家でい候う中の当山北斗」
「おい。居候にうはいらないはずだ」
「知ってる。わざと」
そう言うと楽しそうに先に進む。
「なんだかな」
「親父様、大丈夫ですか?」
「なんとかな。おい。フェーレ」
「なんだよ」
名前を呼んだだけで不機嫌そうに次男に睨まれる。
「あれはどういう人間だ?ああいう人間を見たのは二度目だが」
「え!気に入ったのか!ってこら!北斗。先に行くな」
北斗が階段を登ろうとして止まり、早く来い。という顔をして待っている。
月見は慌てて北斗を捕まえ、他のメンバーも追いつく。
妖魔王は一番最初に階段を登ろうと北斗が足を置いく。しかしその足元の階段から闇が飛び出し、つい手を伸ばして引き寄せれば目の前が闇に包まれる。




