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仮面勇装マスクド・ブレイブ ~異世界でヒーローやらされてます~  作者: 白峰レイ


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第30話「統率」

(前の五百と同じだ)


あの時は、ジェネラルを潰した。

そしたら群れは崩れた。統率が死んだ。


――今回も同じ。


“頭”を落とせば、二千は崩れる。


俺は息を吸って、背中の熱を押さえ込んだ。

火の匂い。焦げた土。焼けた鉄。


遠くで、王がいる。

軍勢の奥。波の中心。そこだけ、空気が重い。


(あいつだ)


俺は膝を沈める。


(……一発で行け)


地面を蹴った。


跳んだ。


高い。

高すぎる。


視界が広がる。街道も、畑跡も、黒い軍勢も、全部が下になる。

――そして、俺は落ちる。


「ブレイブキイック!!」


踵に火が集まる。


(キングの頭を――)


その瞬間。


軍勢の中で、十の影が同時に腕を上げた。


メイジ。


次の瞬間、空に“板”が出た。


透明な魔法障壁。

俺の落下線上に、ぴったり重なるように――十枚。


(……は?)


ドンッ!!


一枚目。割れる。

勢いは落ちない。


ドンッ!!

二枚目。


ドンッ!!

三枚目。


(邪魔すんな!!)


四枚。五枚。六枚。


――割った。


だが、七枚目に当たった瞬間。


勢いが、止まった。


体が空中で“止められた”みたいに硬直する。

蹴りが伸びない。重力だけが残る。


(クソ……!)


俺は歯を食いしばって体勢を崩し、落ちた。


着地と同時に土が跳ねる。

足が痺れた。


(キングに届かない)


(最初から、殺しに来る前提で対策されてる)


俺が顔を上げる前に、矢の雨が飛んできた。


ナイトの隊列が、盾を重ねて押し出してくる。

前に、ホブゴブリン。

後ろに、メイジ。


――完全に“守る陣形”だ。


(狙い直す)


キングは諦めて、メイジを潰す。

障壁を張らせるから届かない。


俺は一歩踏み込んだ。


「ブレイブパンチ!!」


拳がホブの顎を砕く。

火が走る。倒れる。


その隙に、メイジの列を見た――瞬間。


盾が、前に出た。


ナイトが盾壁で“穴”を埋める。

ホブが肉の壁で間を詰める。


(届かせる気がねぇな)


メイジが、今度は遠距離から撃ってきた。


火球。

氷の針。

土の槍。

風の刃。


一発一発が、ゴブリンの魔法とは思えない。


(……当たったら終わるタイプのやつだ)


俺は走りながら躱す。


躱して、殴る。

躱して、蹴る。

燃やして、踏む。


でも、攻撃の密度が違う。

さっきまでの“数の暴力”じゃない。


“技術の暴力”だ。


盾壁に弾かれ、槍に引っかけられ、ホブの棍棒を紙一重で避ける。

避けたはずなのに、風圧で皮膚が裂ける。


(削られてる)


一歩ごとに、体力が減る。

呼吸が重くなる。

喉が痛い。肺が熱い。


でも――敵も減っている。


倒れている。燃えている。崩れている。

火が通る。拳が通る。蹴りが通る。


(……行ける)


(メイジまで、あと少し――)


俺は息を吸った。


「火炎の舞!!」


『必殺技:火炎の舞 発動』


――身体から炎が噴き出した。


「あっちぃ!!」


熱い。普通に熱い。

でも今は、それが武器だ。


体が勝手に回り始める。

回転するたび、炎が撒き散らされる。


ホブが燃える。

盾壁が炙られる。

槍が熱で曲がる。


メイジが水魔法をぶつけてくる。

蒸気が上がる。白い霧が視界を埋める。


(やるじゃねぇか)


だが、水だけじゃ追いつかない。


炎は“面”で広がる。

水は“点”で消す。


焼ける。

崩れる。

列が歪む。


(……届く)


俺は回転の勢いのまま、前に滑り込む。


盾壁の端を抉る。

ホブを蹴り飛ばす。

燃えたやつが倒れて、隙間ができる。


その隙間の向こうに――メイジが見えた。


(よし――!)


次の瞬間。


空気が、沈んだ。


熱も音も、全部が押し潰されるみたいに重くなる。


俺は回転の途中で、ぞくりとした。


(……来た)


気づいた時には、目の前に“立っていた”。


ゴブリンキング。


大きい。

背が高い。

鎧が違う。

視線が違う。


――俺より速い。


(ふざけんな)


キングの大剣が、迫ってくる。


避ける。


ギリギリで躱した――はずなのに、頬が裂けた。

剣圧だけで皮膚が切れる。


(……冗談だろ)


次の瞬間、腹に衝撃。


蹴り。


「がっ――!!」


息が、抜けた。

肺が潰れる。

世界が白くなる。


俺は吹っ飛んだ。


土を転がる。

背中を打つ。

視界が揺れる。


(格が違う)


火炎の舞が勝手に解除された。

身体が燃える余裕すら奪われた。


(くそ……)


俺は歯を食いしばって、立ち上がる。


膝が笑う。

でも、立つ。


立たないと終わる。


顔を上げた瞬間――


メイジの魔法が、まとめて飛んできた。


火球が三つ。

氷の針が十。

風の刃が横一線。


(……殺す気満々だな)


俺はひょっとこの口から火を吐いた。


「ぶふぉっ!!」


火の塊が前で爆ぜ、魔法の勢いを“少し”殺す。

全部は消えない。無理だ。


だから、全力で後ろへ跳んだ。


紙一重で避ける。


風の刃が、耳の横を削る。

氷が肩を掠める。

火球の熱で髪が焦げる。


(……まだ死ねねぇ)


俺は息を整えようとして、喉に血の味を感じた。

ペッと血の混じった痰を吐き出す。


ゴブリンの数はだいぶ減った。

前線は焼け跡だ。盾壁は崩れている。


でも――質が違う。


キングは明らかに格上。

メイジは後ろから邪魔をし続ける。

ナイトとホブは盾と肉でメイジを守る。


ちゃんとした戦争をしてくる。


(……最悪だな)


俺は笑いたくもないのに、口元が少し上がった。


(でも、面白くなってきやがった)


キングが、剣を構え直す。

メイジが、次の詠唱に入る。

ナイトが盾を上げ、ホブが前に詰める。


俺は一歩、前へ出た。


「……来いよ」


そして、心の底で舌打ちする。


(こいつは、短期決戦じゃねぇ)


(削り合いだ)


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