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仮面勇装マスクド・ブレイブ ~異世界でヒーローやらされてます~  作者: 白峰レイ


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第23話「斧と槍とひょっとこ」

斧が、唸った。


空気ごと叩き割るみたいな重さ。

当たったら終わる――理屈じゃなく本能がそう叫ぶ。


(受けたら即死だ)


俺は反射で足を捻り、身体を沈めた。


ドォン――!


斧が地面に刺さった瞬間、土が爆ぜる。

衝撃が足裏から骨へ来た。避けたのに、内臓が揺れる。


「……っ、バカタレがぁ」


ジェネラルは笑ってるようにも見えた。

赤い目が、俺の動きだけを追ってくる。


(こいつ、俺より強い)


――なのに。


怖くない。


いや、正確には怖い。めちゃくちゃ怖い。

でも今の俺は、変な火の装備と変な口調で、変なテンションが入ってる。


最悪の状態で、最高に集中していた。


「へっ……大将気取りがよぉ!」


ジェネラルが斧を引き抜く。

引き抜くだけで風が鳴る。


次が来る。


横薙ぎ――!


俺は飛び込んだ。

避けるじゃない。近づく。


「ブレイブパンチ!!」


拳を顔面へ叩き込む。


――硬い。


手袋の上からでも分かる。骨が石みたいだ。

だが、ジェネラルといえど吹き飛ぶ。


ボンッ、と小さく爆ぜる熱。


ジェネラルの頬の皮が焦げる。


(効いてる。火属性、最高だな)


地面を蹴り上げ距離を詰める。


俺は続けて腹へ、肋へ、膝へ。

速さで刻む。火で削る。


「べらぼうめぇ!!」


ジェネラルが苛立ったように斧を振り回す。

乱暴になるほど、間が生まれる。


(当たるな。触れるな。斧に触れたら終わる)


俺は足袋で地面を滑るように踏み、斧の死角へ回った。


「ブレイブキ――」


言いかけた瞬間。


ジェネラルの肩が、僅かに沈む。


(……来る)


背後への肘打ち。


俺は反射で腕を上げた。


ガンッ!


衝撃が骨に直撃した。

腕が痺れ、視界が白くなる。


(くっ……!)


だが、止まらない。


「……っ、痛ぇじゃねぇかい!!」


拳を返す。

鼻面へ。火が散る。


ジェネラルがよろめいた。


(押せる)


俺は息を吸った。


(このまま、削れば――)


背後で、空気が変わった。


ざわ、と群れが割れる。

嫌な気配が近づいてくる。


(まさか……)


“もう一体”だ。


もう一体のジェネラルが、群れを踏み潰しながら近づいてくる。

斧を持った奴とは違う。

重い槍を引きずっている。


(やめろ。今来るな)


ジェネラル二体。


一体目のジェネラルが、俺の足元へ斧を落とす。

二体目が、その隙を狙って槍を突きつけてくる。


連携だ。


(クソ――!)


俺は跳んだ。


足袋が燃える。

空中に逃げるしかない。


ドォンッ!!


地面が抉れた。

熱風と土煙が背中を叩く。


空中で体勢を整えようとした瞬間――


一体目が斧を投げてきた。


(投げんじゃねえ!!)


俺はマスクの口から息を吹く。


「ぶふぉっ!!」


火が噴き、斧の軌道を逸らす。

斧は燃えながら地面へ突き刺さった。


――だが。


火を吹いた“隙”に、二体目の槍が来る。


避けられない。


俺は歯を食いしばり、左腕で受けた。


ズサッ!!


肉が抉られる音。

腕から血が激しく散る。

そのまま落下する。


「ぐっ……!!」


視界が回る。

地面を転がって、止まる。


(……やべぇ。骨もいった)


左腕が痛みを通り越して、もはや冷たい。

痛い。息ができない。


周りのゴブリンが、どっと湧く。


(囲まれる――)


ジェネラル二体が、ゆっくり近づいてくる。

斧が拾われる。

長物が持ち上がる。


(終わる)


その瞬間、俺の口が勝手に悪態を吐いた。


「……死んでたまるかよぉ!」


(そうだ。死ぬわけねぇ)


俺は息を吸った。


「――ブレイブフラッシュ!!」


白い閃光。


前のゴブリンどもが目を押さえて転げ回る。

ジェネラル一体目も、反射で目を細めた。


二体目は――

完全には直視してない。学習してやがる。


(それでも、少しは止まる)


俺はその少しを、全部使った。


足袋で地面を蹴る。

燃える足が、土を抉る。


「うおおおおおおぉ!!」


狙いは――二体目。


長物は間合いが広い。

遠距離で振られたら詰む。

だから、懐へ入る。


ゴブリンを蹴って踏み台にする。

火が移る。悲鳴が上がる。


俺はその上を飛び越え、二体目の胸へ右の拳を叩き込んだ。


「ブレイブパンチ!!」


火が爆ぜる。


ボンッ!!


胸板が焦げ、二体目がよろけた。


(よし。火は通る)


俺は畳みかける。

拳。肘。膝。蹴り。


「べらぼうめぇ!!」


二体目が怒り狂って長物を振り下ろす。

俺は紙一重で潜り、足袋で脛を刈った。


「これでもくらいやがれってんだ!!」


足袋の火が、脚へ這う。

二体目が膝をつく。


(今だ――)


俺が跳んだ瞬間――


一体目の斧が、背後から来た。


(クソ!!)


避けられない。


俺は空中で体を捻って、肩で受けた。


ザンッ!!


着物が裂けた。

血が飛ぶ。熱い。痛い。


だが――まだ動ける。


俺は空中で体勢を立て直し、槍ジェネラルの頭を狙う。


「ブレイブキイッーク!!」


ドンッ!!


二体目の頭に直撃する。

炎に包まれながらゴブリンの群れに飛んでいく。



一体目が吠える。


「グォォォォォ!!」


斧を振り上げる。


俺は息を吐いた。


(もう、限界近い)


(必殺技……もう一回)


身体は悲鳴を上げている。

左腕の感覚はない。

斧で斬られた肩から血が止まらない。


さっきの火炎の舞。

あれなら周りの数も減らせる。


(身体がもつか分からねえ)


(でも、このままじゃ殺される)


俺は叫んだ。


「火炎の舞!!」


『必殺技:火炎の舞 発動』


――身体が燃えた。


「あっちぃ!!」


まただ。

またこのクソ熱さ。


だが、今度は“逃げない”。


俺の体が勝手に揺れ、回転を始める。

ソイヤ、ソイヤ、ソイヤ!


火が渦になって広がる。


周りのゴブリンが燃える。倒れる。転がる。

ジェネラル一体目も、炎を嫌って一歩退いた。


(効いてる……!)


俺は回転の中で、無理やり意識をねじ込む。


(あの斧を止める)


(止めれば、勝てる)


(止めなきゃ、街が終わる)


炎の中で、俺はジェネラルへ突っ込んだ。


火を撒きながら。

熱に叫びながら。


「――うおおおおおぉ!!」


ジェネラルが斧を振り下ろす。

俺の火の渦と、斧の刃が――


真正面からぶつかった。


次の瞬間。


炎が爆ぜた。


ドンッ!!


視界が白くなる。

耳がキーンと鳴る。

身体が、宙に浮いた。


(……やば)


意識が遠のきかけた、そのとき。


遠くで、街の方角から――


バキバキバキ……パリン


ガラスの割れた音?


(……一体、何が……?)


俺の体は地面に叩きつけられ、転がる。


熱い。痛い。動かない。


――なのに。


俺の前に、影が落ちた。


斧を持ったジェネラルが、真上から俺を見下ろしていた。


赤い目が、獲物を見ている。


(……ちくしょう)


ジェネラルが、斧を振り上げる。


刃が光る。


(ふざけんな)


斧を振り下ろす瞬間。


俺はひょっとこの口から火を吹く。


ジェネラルは至近距離で、もろに顔にくらう。


怯んだ隙に、なんとか立ち上がる。


(次で決めなきゃ、死ぬ)


炎の匂いの中で。


まだ終わらせない。

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