呪いの解除
「…あー、やっと呪いが解けたな」
「王様の呪い、頑固だったからねー」
「あの国王があの子を可愛がるようになってからは、解呪も少しは楽になったがな」
「あの子の今回の母親の呪いだからね。あの子を大切にし始めたら、そりゃそうなるさ」
「親の愛ってやつか。今回のあの子の親は少しはまともか」
彼はそう言ったから、首を振る。
「いや、メイドだった母親はともかく父親はあの子を冷遇していたからダメか」
「今は改心して、それなりに可愛がってるけどね」
「今更じゃないか?」
「でもおかげで共依存に持ち込めたからね」
「ああそう…」
とりあえず、王様の呪いは解けた。呪いの解除に使っていた分の魔力は、これからは王子様にしているのと同じように王様にも加護を与えるのに使う。
お姫様が僕に嫁いでくるまでは、それで健康に長生きしてくれるだろう。その後も加護は多分残るだろうし、国もお姫様の祝福でずっと栄えるだろうし。
「今回は、今のところ平和だね」
「鷹のやつが、手を出そうとする他国の王族を片っ端から食ってるのもあるがな」
「正直有り難い。やり過ぎないでくれれば」
「あいつだって考えてやってる。手を出してくる寸前までは食うのを我慢しているさ」
「やっぱり有り難い」
全部、あの子のため。前のあの子が僕らに遺したものは、それだけ大きい。
「今回は、あの子と婚約出来て良かったな」
「うん。心から愛してるんだ」
「獣人は一途だな」
「そんなの関係ない。あの子だから愛おしい」
「そうか。やっぱりあの子にはお前しかいないな」
珍しく、嬉しいことを言ってくれる彼に驚く。
「まあ、また何かあれば呼べばいいさ。呪いに関してはまだまだ俺の方が詳しいからな」
「よろしく」
「ん。俺は帰って眠る。食うのは…起きたら鷹のところに遊びに行くか」
「そう。ご苦労様、おやすみ」
「おやすみ。絶対幸せにしろよな」
手を振って帰り支度をしながら釘を刺してくる彼に、頷いておく。
「絶対幸せにするよ」
「そ、じゃあな」
「じゃあね」
ああ、彼が人型の存在じゃなくて本当に良かった。お姫様の味方でいてくれて、良かった。