9話 港町ソルカデン
「はぁはぁはぁ…………はぁ。……ここまでくれば流石にアレも追ってこないだろ」
「はぁはぁ………うっ……ケホッケホッ……」
「おい、大丈夫か?」
あれから数十分間ずっと走り続けた。
かなりを距離取る事ができ、グリフォンと騎士団達はもう見えない。
だが、2人ともそこまで体力がある訳では無い。
しかも、ここは砂漠で熱気にもやられるため上手く走れなかった。
それでも十分な距離は空いた。
今は近くの岩陰に体を休めていた。
ユウマはまだ少し余裕がありそうだが、エルナに関しては限界に達していた。
膝に手を着き深呼吸をしていた時、むせてしまい咳き込む。
「………だい……じょうぶ………。はぁはぁ」
2人はその場に座り込む。
背中をつけてまた深く息を着く。
ユウマは自分のバックパックから金属のボトルを取り出し、水を飲んだ。
「ングッ………ングッ…ぷぁ。……………ふぅ。エルナも飲めよ」
「………ん」
ユウマからボトルを受け取り口をつける。
こんな状況で関節キスとか気にしてる場合じゃない。
命の危険があったのだ。
仕方ないと言える。
それから数分、落ち着きを見せたところでエルナが呟く。
「さっきはありがと。………逃げる時」
「あぁ、アレか。別に気にすることでもないだろ。動けなかったのは恐怖か別の訳がありそうだったからな。無理には聞かない」
「…ん」
「にしてもまさか本当にグリフォンが出てくるなんてな。あの時騎士がいなかったらどうなっていたことか」
「それには感謝」
「ホントにな、それでどうする?今日はここまでにするか?」
「さすがに無理。もう体力ない」
「だろうな。ここまでノンストップで来たからな。今は昼ぐらいか、けどしょうがないな。今からテント設置するから待ってくれ」
「………ん」
というわけでテントを設置することになったが前にも一緒に言ったがそこまで大変じゃないので直ぐに完成した。
「出来たぞ」
「………」
モゾモゾと中に入っていく。
ユウマは中に入らずそのまま地面に座る。
本当にグリフォンが来るとは思わなかったが無事逃げられたことで今を生きている。
動けなかったエルナに関しては全くわからないが、それは後からでも考えられる。
今はソルカデンの道についてだ。
ユウマ達がいる場所は岩石砂漠。
岩石と岩くずれで構成されている砂漠区域だ。気温もかなり変化するため今まで以上に体調管理を気をつけなければならない。
「あとちょっと」
体をゆっくりと起こしユウマもテントの中に入った。
中に入るとモサモサとパンを食べているエルナを見る。
「……食べる?」
「あぁ、食べる」
パンを受け取りユウマも食べ始めた。
味はそのまま柔らかい食感が広がる。
それからしばらく時間が経ち深夜。
床で寝ていたユウマだがふと、目を覚ます。
体を起こして周りを見るがエルナはいなかった。
「どこいった?」
テントから出ていき外を見渡す。
岩石の方にはいない。
となると砂の方か。
砂砂漠の方を歩いていきエルナを探す。
月の光が明るく砂を照らしておりその砂の地平線の先に一本の枯れた木が立っていた。
そこに行ってみるとエルナがおり枯れ木に背中を預けながら腰掛けていた。
枯れ木に近づきエルナ話しかける。
「何してるんだ?」
「別に何も………ただ月を見てただけ」
「そうか」
「ねぇ、勇者の話を聞いたことある?」
「勇者?いや、聞いたことないな」
「『世界が危機に瀕しているとき神は異界の人を召喚する。召喚された者は勇者と呼ばれ、勇者は世界の為に戦い人々に平穏もたらす』……………そんな話」
「は?なんだそれ?すごい曖昧な話だな」
「そう、曖昧だから。………一応伝承とされてる話」
「だとしてもだ。さすがに分からないな。その世界の危機っていうのはなんだ?」
「……さぁ。………ただ、魔王を倒したら世界が平和になったって言うのを聞いたことがある」
「魔王………に勇者か」
今のユウマにとって魔王とかはそんなのどうでもよくてむしろ勇者のことが気になっていた。『異界の人を召喚する』この単語がなぜか引っかかていた。
もしかして、蓮達が…………。
一応その線を考えて情報を集めた方が良さそうだ。
「…………戻る」
「あぁ」
座っていたエルナは立ち上がりテントに戻っていった。
その後ろ姿を見ながらユウマも戻って行った。
それから数十時間が経過した。
辺りは夕方、暗くなり始めてる時間帯だ。
そして2人が見ている景色は………港町ソルカデン。
「着いた」
「ようやく」
街を照らす光が海を輝かせる。
そして街でも特徴的な船が10隻ほどある。
4つは漁船、うち1つは観光船、もう2つは客船、残りの3隻は騎士が所有する船だ。
扉のない大きな門を目指す。
門の入口に着くと1人の騎士がおり、ユウマ達の存在に気づいた。
「おいアンタら!早くこっちに来い!」
騎士は2人を手招きユウマ達は立ち止まる。
するとエルナは立て掛けてある看板を見つめる。
釣られるようにユウマも見る。
「難民の方を受け入れます。領主スクエット」
「難民だろ?2人とも」
「……あぁ、そうなんだ。………実は西の国リィから避難してきたんだ」
「そうか…………大変だったな。ここは今戦争状態にある、国の市民たちを保護しているんだ。ここは中立だからな。それとここでの争いは禁止だ。見つかったら捕まるからな。食事は決まった時間に配給されるから安心しろ。朝刻と夕刻に分けられるからな。泊まりに関してはテントがある。テントの密集地はこの先を歩いてずっと真っ直ぐだ。それはちゃんと伝えたからな。後は何しても自由だ」
「ありがとう助かった」
「おう、元気でやれよ」
話を終えたユウマは先に行くエルナを追いかける。
「どうだった?」
「何が?」
「話」
「あぁ、俺たちは一応難民って形で話は通った。テントとか立ててるらしいが泊まりはどうする?というか金は?」
「泊まりは、宿。お金は銀貨89枚」
「銀貨?………単位でいうとどれくらいだ?」
「………知らないの?」
「知ってたらこんなこと普通聞かないぞ」
「単位って言葉は知らないけど。お金の種類は3つ。下から順に銅貨、銀貨、金貨になる。銀貨は銅貨100枚分。金貨は銀貨の100枚分」
「分かった、ありがとう。じゃあエルナは結構持ってるんだな」
「一応何かあった時」
「じゃあ、宿に行くか。船は明日見ることでいいか?」
「どっちでもいい」
「っし、決まりだな」
そんな会話を繰り広げつつ2人は宿のある場所に向かった。
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