19.社交界デビュー
養子宣言の夜会でペネロペ様と仲直り?をして、最近ではホール公爵家で二人だけのお茶会をするほど仲良くなった。そんな風にゆったりと過ごしているとフィンお父様から『来週、王宮で開催の社交界に出るぞ』と言われた。『はい、行きません』と言ったが、陛下からの直接の命令で断れないそう。社交界に出る代わりに最高級のフルーツタルト(王宮パティシエが作ったタルト)を食べれる券と交換した。で、今回私が出席する社交界は私にとって『社交界デビュー』という大っ切な行事らしい。なので、前回私が着た純白のドレスではなくまた新しくオーダーメイドするらしい。今回は王宮主催のパーティーなので普段社交界には出ないオリバーさんやエルフィー先生も出席するらしい。本人達曰く『煩いハエがいるので行かなかったが、今回は美しく可愛い蝶がいるので出席する』と。意味が分からない。
前回オーダーメイドした同じお店でドレスを注文し、前回の純白ドレスではなく菫色から空色へのグラデーションになっている生地にアクアマリンの宝石が至るところに散りばめられたシンプルながらも豪勢なドレスを作ってもらった。フィンお父様は『公爵家の権力を示さないといけないから』と言って他にもアクセサリーは沢山の宝石を使ったネックレスを作ってもらった。貴族というのは複雑で大変だな〜と他人事のように思っていたが自分はもう貴族の一員だと思い出して一気に気が重くなった。
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「エマ、着いたよ。降りようか」 「はい、フィンお父様」
今回もメイドさん達に可愛くしてもらい、フィンお父様と共に王宮に到着した。お父様に降ろしてもらい一緒に受付の所へ向かった。そこには沢山の人がいて皆それぞれ招待状を受付の人に見せて中に入っていった。(あれ?フィンお父様、招待状なんて持ってきたのかな?ここに来るまで一度も見なかったけど…)
「フィンお父様、招待状は持ってきたんですか?」
「いや、公爵家の人間は持ってきていなくても顔を見せれば通してくれるんだ」
ほお~、これがいわゆる『顔パス』というものですか。お父様って本当に凄い人なんだな。
「ホール公爵家当主フィンリー=ホール様とそのご息女エマ=ホール様の御成り」
扉の前にいた騎士さんがそう言うと一斉にホールにいた人達が私達の方を見た。
「あの方が噂の…」 「とても可愛らしい…」
全員がコソコソと何かを喋っている。おそらく皆フィンお父様のイケメン度に驚いているに違いない。(さすがお父様、これで五十代なんだから驚きだよね)フィンお父様と一緒にホールを歩いていると後ろからオリバーさんとエルフィー先生がやって来た。
「こんばんは、エマ(ちゃん)」 「こんばんはです」
「今日もエマはどの令嬢のよりも綺麗で可愛いな」
「その通りですね、オリバー。今日のエマちゃんは本当に天使みたいです」
「ありがとうございます(最悪だ)」
二人がそう言うとある者は驚いた顔をし、ある者(特に令嬢達)は私に対して鋭い視線を向けてきた。(何でそんなことを人がいる目の前で言っちゃうのかな…たぶん沢山の令嬢達に恨まれているよ…最悪だな)二人も含めた四人で話していると陛下達がホールに入ってきてパーティー開催の合図を出した。私はすぐさまデザートテーブルの方へ向かおうとしたがフィンお父様に捕まえられて、陛下達に挨拶をしなくてはならなくなった。陛下達王族の席に近づけば近づくほどより鮮明に面倒くさい人達(王子達)がにこにこと笑っているのが見えた。(この人達にはなるべく関わりたくないんだけどな)真ん中に陛下、右に王妃様そして左に王子達二人がいてそこから少し離れたところに白金の髪に翡翠色の瞳の男の人がいた。(この人も王族みたいけど初めて見たな、誰だろう?)そう思っていると、フィンお父様が
「この度は王宮主催のパーティーに招待して頂き有難うございます」
「よく来た、ホール公爵そしてエマ嬢。特にエマ嬢にはエリオットの件で深く感謝している。後日また何か褒美を渡そう」
「(はて、何のことやら)あ、ありがとうございます」
陛下はいつもの無表情で私に褒美をやるといった。(私は何もしていないけど)すると今度は王妃様が
「はじめましてエマちゃん、グラド王国王妃のアメリア=ウィリアムです。いつも王子達がお世話になっています」
「いえいえ、こちらこそ良くしてもらって本当に嬉しいです。(全然嬉しくないです、ていうか逆に近づかないでほしい)」
「…ふふっ、本当に可愛らしいわね。少ーし面倒くさい息子たちだけどよろしくね」
「は、はい」
(やば、顔に出てたかな)王妃様がニッコリと笑っている。(うん、バレてるね)そして、陛下の左にいた面倒ボーイズは
「こんばんは、エマ嬢。今日も本当に可愛らしいですね」
「(そのセリフ、ここまで来るのに何回言われたことか)…ありがとうございます」
「エマ、いつかまた王宮で遊ぼうね(ニコッ)」
「(エリオット殿下は癒やし)はい!勿論です」
「ねえ、エマ嬢、私とエリオットへの態度、全然違うくないですか」
「えっ!?い、いや、同じですけ、ど」
「そうですか〜、(まあ、今は許しますけど)」
王子達と話終わった後、挨拶しようと思って、初めて会う王族の人の方へ向くと、その人とバッチリと目が合ってしまった。(び、びっくりしたー。そんなに見なくてもいいのに。というか、この人結局誰なんだろう。少し近寄りがたい雰囲気…)
「お久しぶりです、アルバート大公。ホール公爵家当主フィンリー=ホールです」
「お初にお目にかかります、ホール公爵が娘エマ=ホールと申します」
「久しぶりだフィンリー、そして初めましてエマ。王弟でもあり大公のアルバート=ウィリアムだ。今はグラド王国の王立学園の学園長でもある。たぶんこれから学園で会うことになるだろう」
「王立学園の学園長さん!?よ、よろしくおねがいします」
「ああ」
大公様の翡翠色の瞳が優しく細められた。(最初は怖そうなイメージだったけど、意外と優しそう)
陛下達と話し終わって、ホールへと戻ると沢山の人達が音楽に合わせて踊っていた。そして、私がようやくデザートにありつけてケーキをもぐもぐと食べていると後ろから
「ホール嬢ですよね。初めまして、アンブラー侯爵が長男ガル=アンブラーと申します。ぜひ、私と一緒にダンスを踊っていただけませんか?」
「ぜひ、私とも!」 「いえ、私と」
ちょっと待て!ダンスは踊れるけど、別にあなた達とは踊りたくありません〜。うわ〜、こういう時に限ってフィンお父様達はなんで隅っこの方でお酒を楽しんでいるの!助けて〜!
どんどん沢山の男の人達がダンスに誘ってきて戸惑っていると
「エマ、私と踊っていただけないか?」
こ、この声は……
「大公様!?いつの間に!?」
大公様がダンスに誘ってきてた――




