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ヒーローやってたけど、悪の組織に寝返えってみたら天職でした!  作者: 9
その名はフェイカー~偽物のヒーロー~
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第20話:俺の獲物

 ローリー博士を抱えてアジトへと戻ってきた。

 アジトに戻ると銀子さんが心配そうに迎えてくれた。その時には、ローリー博士も立てるようになるまで回復していた。でも、彼女は何も言わなかった。


「彼女のもとに」


 そう俺が告げると、銀子さんの部屋に通される。女の子の部屋とは思えない殺風景な部屋に、何故かメイド服を着せられた彼女がいた。

 俺が彼女のを見ると石化が解けていく。


「良かった」


 ベルが小さく安堵の言葉を漏らした。俺への気遣いだろう。それでも漏らさずにはいられなかったのだろう。


「良かったな」


 嫌味ではなく、心の底からそう思って呟いた。


「闘気や魔力を感じるぞ。どうなってるんだ?」

「あの目の能力だよ。潜在能力を開放してる。進化したんだ」

「そんなの能力聞いたことないぞ」

「歴代でも、あの能力が発現したのは古の王たちだけだからね」


 身体に今までにない力が目覚めているのが分かった。でも……


「ローリー博士、今の俺ならサタンに勝てますか?」

「不可能だね。君は決して勝てないよ」

「やる気なのか?」


 ベルがそう問いかけると銀子さんが反応した。


「安心しろ。あの屑は、私が倒すつもりだ。お前が戦う必要はない」

「……俺の獲物だ」

「何?」


 その言葉に銀子さんが反応して表情を変える。


「末端の戦闘員が調子に乗るなよ。ローリーに言われたろお前じゃ無理だ」


 その凄みのある言葉に、俺は拳を握りしめ、ガンつけた。


「俺の獲物だ。誰にも譲らない」

「感情的になっても、実力は変わらんぞ。もう一度はっきり言う、お前は弱い、お前では無理だ」


 俺がその言葉に震えていると、手を叩く音が響いた。


「銀子ちゃんの言うとおりだ。ヤス君は決して勝てないよ。駆け引きなど到底入り込む余地がないほど敵は高みにいる。命を捨てることになるよ……それにトップヒーローがこの街にやってくるし、その前にやつは逃げるだろう。課題は山積みだ」


 一瞬間をおいて、ローリー博士は目を閉じた。


「ヤス君、覚悟はあるのかい?」

「命なら……」

「違う、絶対に勝つ覚悟だ。僕は君が勝つ前提で作戦を立てるよ。もし君が負けるようなことがあったら、僕たちもただで済まないかもしれない。だから、負けは絶対に許されない。君の決断に僕たちの命も乗ってる。それでも君は戦うことを決断できるのかい?」


 あの時と一緒だ。

 レッドに言われたとおりだった。俺の決断が最悪の結果を招いた。俺に何もコントロールする力はなかった。

 俺が戦ってもサタンに勝てる可能性は低いだろう。これは私情だって、わがままだって分かってる。だから、銀子さんは怒ったのだ。


 俺の決断が誰かを不幸にするかもしれない。

 一時の感情に流されて、また失うかもしれない。


「戦いたい」

「何故?」

「意地をはっているだけだ」


 銀子さんが割って入る。


「銀子ちゃんは黙ってなさい」


 それをローリー博士が制した。


「ヒーローじゃなきゃ駄目なんだよ」

「何?」

「ヒーローが倒してやらないと駄目なんだよ。誰かが希望にならないといけない。それはヒーローであるべきだ」


 ローリー博士が真っすぐ俺を見ていた。俺の答えを待っているんだ。


「なりたい自分見つけたよ。俺は……もう一度ヒーローの仮面をかぶる。皆をだましてヒーローを演じる。俺はそんな……最悪なヒーローになる」

「トップヒーローでも出来るだろう」

「違うよ。銀子ちゃん……そしたら僕たちが困るもんね」


 そう言って、ローリー博士が笑った。


「つまりこう言うわけだ。トップヒーローが派遣されてくる前に、君がサタンを見つけ出して倒すと……サタンがやられれば、わざわざトップヒーローがくる理由がないからね」

「たった数日では何も変わらん。可能性すらないぞ」


 そういう銀子さんの言葉に、ローリー博士は悩んでいた。


「後でどれだけ苦しんでも、ヤス君は気にしないよね?」


 それはマッドサイエンティストらしい微笑だった。


「使ってみたい薬がある。でも、君は未来を1つ失うことになる。本当に良いかい? 君は僕の思った以上に才能があった。ここで頑張って1年修行すれば、君は普通にサタンに勝てるようになるだろう……未来を捨ててでも、今に賭けられるかい?」

「はい」


 ローリー博士は覚悟を決めたような表情をした。


「分かった。僕は君に賭ける。サタンは絶対に僕が見つけ出す。最高の状態でぶつけてあげる……上司命令だ、君は絶対に勝て」


 「いつでも背中を押してあげるよ」と小さく呟いて、彼女は笑った。


 2日間。

 目まぐるしいほどの時間がながれた。俺はローリー博士のうった薬のせいでのたうち回ったし、銀子さんはなんやかんや、俺を強くするために時間を割いてくれた。

 2人が上司で本当に良かったと思う。



     *



 そこは街の外れもはずれにある、焼け野原になった建物。

 アモンによって、焼かれた名もない悪の組織のアジトがあった場所だ。

 そこにやつがいた。


 何故、こんなところでアモンが事件を犯したのか?

 ずっと謎だったけど、そこには地下道があったのだ。郊外の悪の組織と取引するための道があった。外に逃げるために、そいつはそこにやってきていた。

 街はもう完全に封鎖され、トップヒーローの到着を待ちわびていた。いたるところに、ヒーローによる検問がしかれている。


 大量の金を運べないため、自分の炎でも燃えない少量のレアメタルに変えて……

「待ってたぞ、サタン」


 俺がそういうと、その男は意外そうな顔をしていた。

 逃げるのだ。普通の人間の恰好をしている。俺はサタンなんて顔はしないだろうな。

 サタンは普通の男性だった。どこにでもいる中年のおっさんだ。とりわけ凶悪そうでもなく、見る人によっては人のよさそうに見えるかもしれない。


 それも当然か?

 ヒーロー学校の生徒と関りがあるのだ。サタンは警察官である。それも街の人たちにも人気のあった警察官。

 人間、嘘の仮面をかぶっていると言うが、これは笑えないな。

 だけど、どれだけ嘘の仮面に隠しても、やつにこびりついた匂いは消えない。生でみると、より鮮明に感じる。コイツだ。


「君はヒーロー学校の生徒だね。どうしてこんなところに」

「…………」


 俺は何も言わずに、すっとぼける奴に向けて、剣を握った。そのまま何も言わずに切りかかる。金属が折れる音がした刃はやつに首に入らない。


「何を……」


 そういうやつに向けて。拳を振り上げた。

 顔面に拳がヒットするがやつの身体は、そんなものではびくともしない。

 そんなことは当然わかっていた。でも、どうしても生身で一発いれたかった。

 奴からの鋭い視線を感じる。火の粉が舞った。おれは急いで距離をとる。しかし、間に合わない。直撃する。


「羽虫が」


 そう言うサタンに向けて、炎の中を駆けた。

 もう一度拳を叩きつけたのだ。今度はやつの身体が吹き飛んでいく。


「フェイカー?」


 大して効いてないな。普通に起き上がってきた。

 鼻血をぬぐいながら、疑問をつげるやつに対して、俺は宣言した。


「来いよ、サタン。変な演技はやめようぜ」


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