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ヒーローやってたけど、悪の組織に寝返えってみたら天職でした!  作者: 9
その名はフェイカー~偽物のヒーロー~
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第21話:炸裂!俺だけの必殺技

「変身」


 俺にの言葉に対して、サタンがそうつぶやくと炎が宙にまった

 炎が男を焼き、その姿を悪魔へと変える。しかし、大きくもなく青白い肌が特徴な人間のような姿だ。2対の炎の翼が輝き堕天使のような姿をしている。


 翼が輝いた。

 羽が宙に舞うと、2体の化け物を生み出した。あれはローリー博士が出来損ないと称した、どろどろした炎の化け物だ。それがいきなり2体も現れたのだ。

 

「この街を出る前に、最後の心残りだった、お前を殺せることに感謝する」


 サタンがそういうと、炎の化け物から14体の炎の竜が飛び出した。あの時よりも数が増えている。それも2体いるの2倍だ。計28体の竜。

 それが空を舞い、青い空を夕焼けのように赤く染めた。


 ビビるな。

 こいつらに勝てないのなら、俺にサタンと戦う資格はない。


 炎の竜が俺に向かって、襲い掛かる。逃げ場は存在しない。否、そもそも逃げないぞ俺は……


 それは海鳴りのような嵐のようなそんな音だった。

 荒れ狂う竜が、水の渦によって吹き飛んでいく。


 これが俺の第3のスキル。


風や炎を代表とした自然系のスキル。その中でも希少種。歴史の表舞台に何度も現れ、時に人類を救い、時に人類を壊滅寸前まで追い込んだ力。自然系のスキルの中でも特に畏怖され、こう呼ばれている……


『神通力』


 サタンが炎なら、俺は水だ。


「何をやっている」


 サタンがそうつぶやくと、2体の化け物が合体する。それは蛇のような東洋の竜ではなく、西洋の竜、ドラゴンへとその姿を変える。


「これが私とお前の力の差だ」


 ドラゴンは大きく息を吸った。勢いよく噴き出された炎。それは、触れるものを破壊し、近くに合ったものは高熱によって溶かしていく。

 俺は能力を発動させるために手を合わせた。


「咲け、スノー・レイ」


 巨大な雪の結晶が花の花弁のように咲き誇った。


「炎が……凍っただと?」


 全力でやった結果、サタンの言うように炎が凍り付いている。だがこの技の真価はまだだ。まだ終わっていない。

 炎を伝ってさらに先に、ドラゴンまで氷が迫っていく。


「馬鹿な」


 ドラゴンが大きな氷の中にとらわれる。触れたものを全て氷つかせる一撃。日に何度も打てるわけではないが、威力は絶大だ。

 戦える、そう確信をもった瞬間だった。だからこそ、彼女のように宣言しよう。


「遊んでんじゃねえよ。臆病者が……人を使うな本体がこい」

「ふっふふふふふ」


 静寂の中に笑い声が響いた。


「どこまでもむかつく餓鬼だ」


 分身させた炎が翼に戻っていく。

 判断ミスともいえる展開。分散した力が本体に戻っていった。今の俺でもやはり覆しがたい実力差があるのが良く分かった。相手の方が強い。しかし。それでも笑った。

 さらに、姿を変えようとするサタンに対してである。


「それがお前の全力か? 来いよ。叩き潰してやる」



     *


 

「馬鹿、馬鹿、馬鹿、何やってるんだヤス君、どうして攻撃しないんだ」


 アジトのモニターの前で、ローリーが興奮気味で騒いでいた。そんなローリーと対照的に、銀子と泰裕の戦いを見ていた。

 

 ローリーは珍しくイライライしていた。信じて待つとは歯がゆいものである。


「落ち着けローリー、お前らしくない」

「銀子ちゃんは、ヤス君が心配じゃないのかい?」

「心配する必要がないんだ」


 銀子がそう答えた。


「必要がない? 僕の見立てじゃ、サタンがさらに変身したらヤス君よりも強くなるよ」

「……あいつは、それでも待ってるんだよ」

「何故?」

「私がそうするように言ったからだ。これは作戦通りなんだよ」

「はあ?馬鹿じゃないの?ヤス君は銀子ちゃんのような脳筋のバトルマニアじゃないんだよ」

「……脳筋」

 

 少し悲しそうな表情でつぶやく銀子に対して、ローリーはそれでも勢いを緩めない。


「ヤス君は原石だ。磨けばどんどん伸びていく。ここで花開く前に摘み取るのは勿体ない素材だ」

「過保護に育ててもやつは伸びない。それに、私はしっかり教えたぞ。あの程度の相手なら例え格上だったとしても勝てるようにな」

「ローリー、お前はサタンを探していて余裕がなかったから、あいつの修行を見てないだろ」


 そこまで余裕がなかったわけではないが、銀子のスパルタでボロボロになっていく泰裕を、見るのはローリーには忍びなかったのだ。

 そのためどうなったのか最後まで見ていない。


「あいつには基礎を徹底的に叩き込んだ。そして秘策もある。だから、あいつは強い。そしてなによりも私の部下だからな」

「それは僕も一緒だよ」


 頬を膨らませながら、ローリーがそう答えた。


「がんばれ、ヤス君」



     *



 待った結果、影山はとんでもない化け物になった。足が震えるのは武者震いではないだろう。純粋な恐怖。

 

「美しいだろ。これが私の全力だ」


 影山は、そんな言葉を吐いた。大きなそして曲がった2本のヤギのような角。それが生えた黒いオーガ。背中には蝙蝠のような翼。さらにライオンのような尻尾が生えている。

 それのどこが美しいのだろうか? 美的センスを疑う。


 一瞬だった。一瞬で影山は俺との距離を詰める。拳が振り下ろされた。氷を展開してその拳を受け止める。しかし、薄氷のように氷が割れる。

 ヤバい……そう本能的に察して反射的に目の能力を発動させる。体に力がみなぎった。目の力が、俺の潜在能力を開放する。3つのスキルの中でも異質。発動時限定であるが、闘気や魔力と言ったスキルとは別の力も扱うことが出来るようになった。爆発的な身体能力向上させる。


 それでも一手遅かった。殴り飛ばされる。


「見たか、これが力だ。この圧倒的な力こそが正義だ」

「正義?」

「そうだ、お前に才能があって、いかに努力していようとも関係ない。力こそ全てであり、強者と弱者の間には超えられない壁があるんだ」

「超えられない壁か……今からそれを壊してやるよ」

「お前みたいな正義のヒーローを気取った餓鬼には無理だ」

「気取ってるんじゃねえ。俺はヒーローだ」


 炎による連続攻撃。格闘技でもかじっているのだろうか、それが身体をフルに使って襲い掛かってくる。


 肌が焼ける熱い……あいつらも熱かったのだろうか?

 苦しんで死んだのだろうか?

 防戦一方で、かろうじて死なないようにするのが精一杯だ。強い、こんな強い奴がいるのか?


 絶望したのだろうか?

 それともそんな時間もなかったか?


 スピードはあちらが上、パワーもあちらが上、しかも炎とのコンビネーションで、動きを読むのに時間がかかった……が、銀子さんとの戦闘訓練が生きたな。

 炎を水でいなし、拳を己の拳で受け流す。そして……


「尻尾だろ」

「なっ」

「ほら、凍れよ」


 コンビネーションの中で、生き物のように自在に振り回してきた尻尾を掴まえる。掴んだ尻尾が凍り付き、尻尾からやつの胴体へと迫った。


「くっ」


 影山は自分で尻尾を切断する。そして、尻尾だった部分の生え際から炎が噴き出したかと思うと、再生した尻尾がそこにはあった。


「……まるで、トカゲだな」

「くっ……この体は、炎によっていくらでも再生する。お前に勝つのは不可能だ」

「逆だ。お前はもう俺に勝てないぞ」

「何を」

「右だろ」

「なっ」

「蹴りか?」


 右ストレートに回し蹴り、単純なコンビネーションだが、やつのスピードでやられたら必殺だ。しかし、動きは既に見切っている。


「少し、格闘技をかじっただけの素人が、お前の動きは見えてるんだよ」

「……なら、炎だ。炎で消し飛ばしてやる」


 炎が弓の形に変化した、矢のように放たれた炎の塊は、発射とともに加速して鳥の姿へと変わる。


「今できる最高の技だ。触れればお前は死ぬ」

「触れればな」


 目に力を集める。この力は使い過ぎると、スキルの使用時間を極端に減らしてしまう。だから、こういうデカイ力を完封するのに使うのが一番なのだ。


「……炎が、固まっただと」


 鳥は砂になって霧散する。


「だが、この体はいくらでも再生する。持久戦になればお前に勝ち目はない」


 その通りだ。持久戦やったらおれに勝ち目はない。水の能力と併用して、目の能力なんて5分しか使えないし、石化はもう無理だろう。

 だったらどうする? 親父の技でも使うか? 否……それでも勝てないだろう。だからこそ俺は……


 未来を1つ捨てる。

 ローリー博士の作ってくれた最後の薬を投与した。


 身体中の細胞が荒れ狂うように痛み。これによって未熟な俺の力が何倍にも膨れ上がる。

 それは本来、俺がいたっていたであろう未来。

 それを薬によって先取りした。その代償として、俺のスキルは数か月、あついは数年間減退する

 どのスキルかは選べなかったけど、ここで3分の1を外すわけがないと思っていた。

 雲1つなかった空に雷雲ができる。


「何だ、何が起きてる。天候を書き換えたとでも言うのか?」


 時間がない。行くぞ。


「必殺!」

「何?」


 銀子さんは言っていた。


勝ちたければ、必殺技を身につけろと。必ず殺すと書いて必殺。だが、殺すのは相手じゃない。必殺技とは……


「死の未来をぶっ壊し、その先に進むためにある」


 出し惜しみはしない。壊せない壁のその先に行く。


「これが俺の全力全開。俺の未来」


 今、コントロールできるだけの全ての水を集め。荒れ狂う大河のように撃ち出す。リミット1000万リットルの水の流れに押しつぶされろ。


 もう炎など関係なかった。サタンは荒れ狂う水の流れが襲い、捕まり、押しつぶされる。しかし、ゴキブリ並みの生命力で、それでも死ぬことはない。それは分かっている。だから、これはまだ俺の必殺技ではない。この程度で終わらすわけがない。

 水はおまけだ。身動き取れ無くしたかっただけだ。確実に次の攻撃を当てるために……そして、それは次の攻撃につながってもいる。


 水の流れに乗り、空へ。

今からやる技は、一度も試したことはない。それでも……自分で考えて出した答えだから。きっとうまくいく。俺は俺を信じて前に進む。


『オーバーウォール・キック』


 オーバーヘッドキックで、それを打ち出した。ボール? 

 そんなちゃちなものではない。青天の空に出来た雲だ。その一部を凍らせて蹴り出した。


 隕石のように、雲は影山に向かって落ちていく。炎でガードしようにも、水の流れの中に居ては炎も無意味だ。


 圧倒的な物量と破壊力。本当の隕石が落ちたかと思うほどの衝撃を生み。決着は着いた。

 サタンの体は粉々に吹き飛ばされ、氷の中に閉じ込められたのだ。


「終わったよ。これで良かっただろ?」


 死んだ仲間たちに捧げるように、俺は呟いた。 

俺はサタンを殺さなかった。ただ、凍ってしまっては力も使えないはずだ。氷の中から自力で出てくることもないだろう。フェイカーの戦いは終わったのだ。


 後はお前の出番だぞ……俺はそいつが現れたのを微笑みながら見ていた。

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