アルスターの街
アルスターの街。
大陸西部に位置するウェスコット連邦王国の中でも更に西方に位置するこの都市は、地脈の関係で風属性のマナの影響が強い以外には特筆すべきことのない街だ。
まず「地脈」や「マナ」といった、地球では馴染みのない言葉は何を指すのか。
そもそもAWOの舞台となるハイラント大陸には、膨大な魔力の素となる粒子が流れる「地脈」というものが存在した。
その粒子が、地下にある地脈から染み出して大気中に拡散したものを「マナ」と呼び、火水風土の四大属性を始めとした様々な性質に変化する元素として、生物や物質を問わずあらゆるものに宿っているというのがゲーム中で語られていた設定であった。
菱形に近い形状をしているハイラント大陸において、四大属性の影響が強い地域がそれぞれ存在する。
北部が水、南部が火、東部が地、そして今エルネリアが居る西部が風。
それぞれの地域には、各属性を司る大精霊とそれを祀る大精霊殿が存在し、放置されれば自然環境に大きな影響を与えてしまう程の膨大な属性マナを管理し、他の地域へ循環させる役割があるとされていた。
エルネリアが手に入れたばかりの神霊級アイテム『テンペスト』がこの近辺にあったのも、ここが風の精霊の影響が強い地域だからだ。
と言っても、風の大精霊殿が存在する「風の峡谷」と、そのお膝元であるグレンツァルの街があるのは更に西の地域であり、アルスターの街は国の中央にある王都とグレンツァルとの中継地点の一つといった位置付けである。早い話が宿場町だ。
エルネリアも数時間前にはこの街から出発して街道沿いの森に向かったばかりだったが、その時から状況は大きく変わってしまっている。
ウェスコット連邦のほとんどの街では、出入りの際の検問等は行われていないのが幸いであった。
身分を証明するものはいくつか持っているが、現状も把握できていない状態で、ゲーム内で得たそれらを使うのはリスクが高過ぎる。
開け放たれた大きな街門を通り、家へ招待するというブリジットに連れられて、エルネリアは街の中へと歩を進めたのであった。
一話丸ごと説明回になってしまいました。
次回のお話で、今後の行動方針もわかってくる筈です。
よければお付き合い下さい。