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神装の守護者  作者: 湊川
7/12

魔法剣士の少女

長期間空いてしまい、申し訳ありません。

PCのHDDが破損して書き溜めが消えてしまい、そのまま放置していました。

改めて更新を再開しますので、よろしくお願いします。

 二人が歩き出してしばらく、エルネリアはウルフの接近を察知した。


 数は2。散会せずに並走してこちらに向かって来ているようだ。


 ブリジットに伝えようかとも思ったが、これくらいなら黙っていてもすぐに気付くだろうと思い直す。


 少しして、ブリジットもウルフを察知したようだ。


「2頭、並んで来てますね……。私にやらせてください!」


 そう言いながら長剣を抜き、魔法の詠唱を始める。


「風よ集え!撃ち抜け!」


 とても簡素な詠唱だったがしっかりと魔法は発動し、向かって右側のウルフは風の矢に撃ち抜かれた。


 そのまま、走って来たもう一頭が飛びかかって来るのを躱(かわ)し、着地した所を斬り伏せてしまった。


 危なげの無い勝利だ。


「ど、どうでしたか!!」


 振り返って評価を求めてくるブリジット。


 彼女の実力的には十分な戦いぶりだったと思うが、正直にそう言って褒められるよりも、アドバイスが欲しいように見える。


「そうね、良かったと思うわ。ただ、ウルフが相手なら、飛びかかって来たのは受け流すんじゃなくて、そのまま空中で斬っちゃう方が良いわね」


 これはエルネリアが長剣で多数の魔獣を相手にする時に実践している事である。


 ウルフ系を初めとした群れを作る魔獣の上位種は互いをカバーするように動くため、受け流した後の隙を突こうとすると他の個体の邪魔が入ってしまい、上手くいかないのだ。


 だから、攻撃してくる個体をそのまま迎撃することで、隙を少なくするのである。


 言葉にすると簡単だが、実際は回避が疎かになる上に、飛び込んでくる敵を斬りつけて有効なダメージを与えるのは難しいため、AWOでも一般的には推奨されない戦法だ。


 10万人ものプレイヤーの頂点に立つ程のセンスと身体能力を持つエルネリアだからこそ可能な芸当であるが、エルネリアの見立てでは目の前の少女にもそれくらいはできるようになる素質があるように見えた。


 冒険者のランクがエルネリアの知るAWOのものと同じかどうかわからないが、その歳で複数のウルフを余裕を持って討伐できる程の実力を付けるのは簡単なことではない筈だ。


 ブリジットには、焦らず着実にやっていけば十分に冒険者として大成できるだけのセンスがあるように思えた。


「く、空中で……ですか……。が、頑張ります……」


 エルネリアの何とも非常識なアドバイスに顔を引きつらせながらもブリジットがウルフの死体に触れると、瞬時にウルフの死体はその場から消える。


 どうやら、ストレージのような物にしまったようだ。


 ストレージの類(たぐい)もちゃんとあるようで安心した。


 ブリジットが荷物などを持っている様子が無かったので、自然とストレージがあると思い込んでいたが、それを確認する前にグレイウルフ達の死体を収納してしまったのはまずかったのではないだろうかと今更ながらに思った。


 ゲームでは空間に干渉する魔法がどうこうと言った細かい設定があったと記憶しているが、彼女が使っているのはどうなのだろうか。


 気になるが、下手に質問して一般常識すら知らないとバレるのもあまり良い選択とは思えないので、黙っているしかない。


「それじゃあ行きましょう!」


 ブリジットは剣に付いた血を布で拭い、それを終えるとエルネリアに声をかけて歩き出した。



●



 その後現れたウルフの群れを相手にエルネリアは手本を見せ、また次の群れを相手にブリジットに実践させた。


 いきなり成功という訳にはいかないが、それでも果敢に挑戦し、少しずつモノにしているようだ。


 やはり戦闘に関するセンスが優れている。


「風の魔法が得意なのかしら?」


「はい!適性が高いらしくて、詠唱も短縮できるんです!」


「そう……。それで剣と魔法を両立させて戦ってるのね」


「そうなんです……! ……でも、最近は上手く行かなくて、その……」


「少し無茶をしてしまった、と」


「はい……」


 性格的に慎重さを欠いている訳でもない彼女の様子を見ていると、そんな単純な理由だけではないように思える。


 振る舞いを見ていればわかるが、ブリジットは自分の実力を過信しておらず、そして常に周囲の状況によく気を配っている。


 少なくとも、理由もなしに無茶をするような性格ではないことは明らかだ。



 サンダーホーンに傷を負わされたと言っていたが、この森のフィールドボスが相手であっても、最初から逃走に専念すれば大きな傷を負わされないだけの実力がブリジットにはある。


 それでも傷を負ったのであれば、それは無理をしてサンダーホーンと交戦したということなのだから、そこには何か事情があった筈だ。


 が、自分から話そうとしない以上は無理に聞き出すこともない。




 そのまま二人は森を抜け、街道を通ってアルスターの街へと帰還した。


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