第40話「死神と台風」
大型台風が接近していた。
「外出は控えてください」
テレビから気象情報が流れている。
窓の外は暴風雨だ。
「今日は出かけられないな」
「ああ」
俺とクロハは、家で過ごすことにした。
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「何をする?」
「ゲームをしよう」
「ゲーム?」
「この前買ったやつだ」
俺はゲーム機を取り出した。
二人用の対戦ゲーム。
「これでどうやって遊ぶのだ」
「コントローラーを持って、画面の中のキャラを動かすんだ」
「……分かった」
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ゲームが始まった。
最初、クロハはぎこちなかった。
ボタンを押すタイミングが分からず、何度も負けた。
「難しい」
「慣れだよ」
「もう一回」
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何回かやるうちに、クロハは急激に上達した。
「……あれ」
「勝った」
「え?」
「今、私が勝った」
「……確かに」
次の試合。
また負けた。
「また勝った」
「……」
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クロハは負けず嫌いを発揮していた。
「もう一回」
「もう10回やったぞ」
「もう一回」
「……分かった」
結果、俺の5勝、クロハの7勝。
「私の勝ちだな」
「くそー」
「お前は弱い」
「ひどい」
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ゲームを続けていると、突然、電気が消えた。
「……停電か」
「停電?」
「雷で電気が止まったんだろう」
部屋が真っ暗になった。
窓の外から雨風の音だけが聞こえる。
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「大丈夫か、クロハ」
「大丈夫だ」
「どこにいる」
「ここだ」
暗闇の中、クロハの手が俺の手を握ってきた。
「……」
「暗いな」
「ああ」
その時、外で雷鳴が轟いた。
ゴロゴロゴロ……ドーン!
「!」
クロハが俺に飛びついてきた。
勢いよくしがみついてくる。
「お、おい!?」
「……」
「クロハ?」
「……なんでもない」
クロハは俺の胸に顔を埋めたまま、離れない。
「もしかして、雷が怖いのか?」
「怖くない」
「怖いんだな」
「怖くないと言っている」
でも、クロハの体は少し震えていた。
俺は思わず笑いそうになったが、堪えた。
「……死神なのに雷が怖いのか」
「怖くない。ただ、あの音は不快だ」
「怖いんじゃないか」
「違う」
クロハはムキになって否定したが、俺から離れようとしない。
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俺はクロハを抱きしめた。
「分かった分かった。怖くないんだな」
「ああ。怖くない」
「じゃあ、しばらくこのままでいよう」
「……なぜだ」
「俺が怖いから」
「お前が?」
「ああ。だから、くっついてくれ」
「……」
クロハは少し黙った後、俺にしがみついた。
「……仕方ないな。お前が怖いなら」
「ありがとう」
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暗闇の中、クロハは俺の胸に頭を乗せていた。
柔らかい体が、俺に密着している。
細い腰。柔らかい胸の感触。
銀髪が俺の顔をくすぐる。甘い香りがする。
……やばい。ドキドキする。
「誠一」
「な、なんだ」
「お前の心臓、うるさい」
「……」
「さっきより、もっとうるさくなった」
「……」
「なぜだ」
俺は答えられなかった。
こんな状況で、こんなに密着していたら、ドキドキするに決まってるだろ。
「……」
「誠一」
「な、なんだ」
「私も、なんだかドキドキする」
「……」
「暗くて、お前の体温だけが分かる」
「……」
「不思議な感覚だ」
クロハの手が、俺の背中を撫でた。
細い指が、服越しに触れる。
「……誠一」
「なんだ」
「このまま、しばらくいていいか」
「……いいよ」
俺たちは暗闇の中で、しばらく抱き合っていた。
心臓がうるさいのは、たぶんお互い様だった。
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「ロウソクはあるか」
「あったと思う」
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手探りでロウソクを探し出し、火をつけた。
オレンジ色の灯りが、部屋を照らす。
クロハの顔が、ロウソクの光に照らされている。
「……綺麗だな」
「何が」
「いや、なんでもない」
薄暗い部屋で、二人きり。
さっきまで抱き合っていたことを思い出して、俺は少し照れくさくなった。
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「誠一」
「なんだ」
「停電は困るが、悪くない」
「悪くない?」
「お前と二人きりだ」
「……まあ、確かに」
「普段とは違う雰囲気だ」
「そうだな」
「……」
クロハは俺の横に座ってきた。
肩が触れ合う距離。
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「お前の魂、今、輝いている」
「停電なのに?」
「停電だから輝いている」
「どういうことだ」
「暗い中で、お前の魂だけが見える」
「……そうか」
「綺麗だ」
「……」
俺は照れくさくなって、視線を逸らした。
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しばらくして、電気が戻った。
明るくなると、なんだか恥ずかしい。
さっきまでの雰囲気が嘘のようだ。
「戻ったな」
「ああ」
「……ゲームの続きをするか」
「いいよ」
俺たちは何事もなかったように、ゲームを再開した。
でも、さっきの暗闇の中のことは、忘れられなかった。
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