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塔の中 塔の外  作者: ちとせ
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知らない声だけど、顔は知っていた。アルデビルド様の所にいた、青い頭をした人だ。


「*******!」


青い頭をした人がまた大きな声を出した。

その声に悪い人が逃げていく。僕は助かったのだろうか?


青い頭の人が僕に近づいてきた。そしてケガはないかチェックされる。悪い人に掴まれた手首が赤くなっている。それ以外は触られていないからケガはない。

青い頭の人は手首を見た後、眉をしかめた。これくらい時間がたったら消えてなくなる。そんなに気にしなくていいのに。

青い頭の人はポケットからハンカチっぽいものを取り出し、僕の手首に巻いてくれた。

そして何かを呟いた後、濡れていた僕のワンピースが急に乾いた。頭も乾いた気がする。

もしかして魔法で乾かしてくれたんだろうか?


この人はいい人?それとも僕を油断させるために優しくしているのだろうか?そんなことを思いながら顔を見上げる。

やっぱりイケメンだ。日本にいたらきっとモデルか俳優にスカウトされていそう。


「***************?」


何か言われた。僕は首を傾げる。青い頭の人は少し考えた後、手首を指さし体を見る。痛いところはないかって聞きたいのかな?

僕は頷いておいた。助けてもらったのだからお礼を言わないと。


『ありがとうございました』


そう言って両手を合わせて頭を下げた。青い頭の人は手をこちらに伸ばそうとしたけれど、ハッとした顔をした後手を元の場所に戻した。なんがしたいんだろう?


「**********」


なにか言っているけれどさっぱりわからない。再び首を傾げ、青い頭の人を見つめる。ジーっと見ていたら青い頭の人のほっぺたがちょっと赤くなってきた。そして僕から背を向けて口元を抑えた。


吐き気が込み上げるほど僕の顔は気持ち悪いのだろうか。ちょっと落ち込む。

なんだか悲しくなってきて涙が出てきた。これくらいで泣くな僕!小さい子供でもあるまいし!

ギュッと目を瞑った後、グシグシと目元を擦り、大きく深呼吸。

ちょっと落ち着いた。僕の顔は吐き気をもよおす。早めにわかってよかった。なるべく顔を隠して生きていく事にしよう。

そう心に誓うと、吐き気は治まったのか青い頭の人が再びこちらを見ていた。僕の足元を見て、目を見開いた。裸足だったからだろうか?


「*******?」


小さい声で呟いた後、何かを決心した顔をして僕を持ち上げた。青い頭の人の腕に僕が腰かける格好だ。

急に持ち上げられてビックリした僕は、落ちないように青い頭の人の首に捕まった。 

青い頭の人の顔が赤くなる。もしかして強く捕まり過ぎて息ができないのだろうか?

申し訳ないことをしてしまったと首から手を放す。でも手を離すと不安定で落ちそうになる。

考えた僕は襟元のシャツを掴むことにした。これなら首を絞めることもないだろう。


青い頭をした人は赤い顔をしたまま、僕がいるのとは逆の方を見て歩き出した。そんなに見るに堪えない顔なんですね。そんな僕をどこに連れて行くんだろう?

やっぱりアルデビルド様のところだろうか?

僕は戻りたくなかったので、掴んでいたシャツを引っ張る。

青い頭の人がこちらを向くと、多分僕が来たであろう方向を指さして首をイヤイヤと振る。


「*****?*********」


あっちに行くのは嫌なんですと指をさして首を振る。シャツから手を放して、塔だと伝わるように手で輪っかを作り上に伸ばす。

青い頭の人は分かってくれたようで、静かに首を振る。僕も首を振る。立ち止まってくれないので、もう降りますと手を伸ばして青い頭の人から体を離す。

青い頭の人は落とすまいとギュッと力を入れてきた。これでは降りれない。

体を叩いて降ろしてと意思表示するもダメだと首を振られる。


そんなやり取りをしていたら、すぐにアルデビルド様の家に着いてしまった。どうやらそんなに離れていなかったようだ。結構歩いたと思ったのに。

僕が出たのは塀についている扉からだったけど、青い頭の人は大きな門の所から入った。門には大きな槍っぽいものを持った人が2人居て、その人たちに僕の顔を見せていた。まるで逃げたら捕まえろといわんばかりだ。


今までは塔に閉じ込められていたけど、今度はこの家に閉じ込められるんだろうか?

そう思いながら広い庭を行く。

家が見えてきた。あの家には怖い人が居る。行きたくない。行きたくなくて体が震える。


家に着いてしまった。大きくて立派な扉から中に入る。

アルデビルド様がこちらに向かって走ってくるのが見えた。ギュッと青い頭の人に掴まる。震えが大きくなる。僕は青い頭の人の首元に顔を伏せた。


「***********!」


声をかけられたが無視をする。


「*******?」

「**********。***********」

「**!******」


アルデビルド様は青い頭の人に何か聞いている。きっと、『どこにいたんだ?』『すごく近くにいましたよ』とか会話してるんだ。『逃げ出したのにそんな近くにいたのかよ!』とか言ってるんだ。

もうアルデビルド様、嫌い。

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