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塔の中 塔の外  作者: ちとせ
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アルデビルド様の手を離す。ずっと握っていたからちょっと手が寂しい。

今日はアルデビルド様は学校に行って一昨日の後始末?やらをするらしい。本当は昨日するべきだったみたいだけれど、僕の我がままを優先してくれたみたいだった。本当、手のかかる親戚で申し訳ないです。

前のように身なりを整えてからほっぺにちゅう。なんだか今日は恥ずかしかったです。


朝ご飯の後、アルデビルド様はエルゴン様を連れて学校へと旅立ってしまいました。夕方まで帰ってこないそうです。

ウェルスタイ様はずっと働き通しだったので、アルデビルド様に言って3日間お休みにしてもらいました。もちろんご両親の許可もとりました。ウェルスタイ様、大変ご迷惑をおかけしました。


なので今日の僕の護衛は必然的にパフィエルになるのですが、僕は全然スキンシップを図る気になれません。部屋から出るときや、用事がある時以外は護衛の人には待機場所で過ごしてもらっているので、今日はスキンシップはおやすみにしようかな。


「シーネ、本ばっか読んでねーでなんかしようぜ」


なんでパフィエルはここに居るのでしょう。僕は今現在、自分の部屋のソファーで本を読んでします。パフィエルを呼んだ記憶はございません。


「なんでここに居るですか」


今、僕の目は死んだ魚の目をしていると思います。本当、なんでいるの?


「アルデビルド様から、シーネと一緒に過ごすよう言われたんだよ。本ばっか読んでたら俺がつまんねーだろ」


何この自由人!大体アルデビルド様に敬語は分かるけれど、それを僕にも発揮してよ!なんでいつも僕に対してため口なの?


「シーネは雇用主じゃないからな」


至極まっとうな答えが返ってきた。そうだね、僕は居候だから雇用主ではないね。なんだか負けた気分です。

もういいからどっかに行ってくれないかな。


そんな僕の雰囲気を感じ取ったのだろう、パフィエルは僕の横に座ってきた。そして僕を持ち上げて足の間に座らせる。


「何するですか」


もの凄くおかしいことになっているのですが。なんで僕はパフィエルに後ろから抱えられているんだろう。もの凄く本が読みにくいです。


「離して下さい」

「嫌だ。お前、スキンシップに飢えているんだろ?アルデビルド様に聞いたぜ。今日は一日この俺が付き合ってやろう」


いりません。断固拒否します!お腹に回されている腕を離そうと頑張ってみるけれど、一般的な15歳よりも大分筋力の無い僕が護衛を務めているパフィエルに勝てるわけがない。

暫くの間頑張ってみたけれど、全然動かすことが出来なかった。


「はっはっは。無駄なことはするな。大人しく抱えられていろ」


もういいや、ほっとこう。僕は諦めて本を読むことにした。本を開いてページをめくる。暫くの間は問題なく本を読むことが出来た。


「ひゃあ!」


突然脇をくすぐられた。犯人は1人、パフィエルだ。


「何するですか!」

「暇なんだよ。なんかしようぜ」

「僕は本を読みます」


僕は本を読むのに忙しいのです。何もしません!


「ひゃん!」


今度は首筋撫でられた!


「やめてください!」

「俺と遊んでくれんならやめてやるよ」


セクハラで訴えますよ!今日はこの本を読み切ってしまうのです。パフィエルと遊んでいる暇はありません!

無視しよう。脇をくすぐられても、首筋撫でられても無視しておけば諦めてくれるだろう。そう思ってくすぐられてもしばらくの間は我慢していた。


「あっ」


耳舐められた!これは絶対セクハラだ!


「ようやく反応したな。はじめっからこうすればよかった」


良く無いです!これはセクハラですよ!アルデビルド様に言って慰謝料請求してやる!


「もう放してください!僕は嫌な思いしています!」


パフィエルしつこい!本当に迷惑です。僕はお腹に腕が回っているのも構わずに立ち上がろうとする。けれどやっぱり無理でした。けれど、僕が本気で怒っているのが分かったようで腕を離してくれた。

パフィエルを睨みつけると、悪かったって謝ってきた。けれど僕は怒っているので、無視します。

そのまま本を持って、唯一鍵のかかるトイレへと本を持って立てこもった。


便器に座って僕はゆっくりと本を読むことが出来た。予定通り読み終わり、トイレから出る。トイレの横の扉にはパフィエルが床に座っていた。


「シーネ、悪かった。機嫌直してくれよ」

「直りません」


ふん、とそっぽを向いて答えた。パフィエルはもうちょっと人の気持ちを考えるべきだと思います。しつこい人は嫌われますよ。


「どうすれば機嫌が直る?」


聞かれたけれど、もう本も読んでしまったからなぁ。僕も考える。本を読んだら喉が渇いた。お茶を持って来てもらおうかな。


「お茶入れてくれたら直ります」

「そんなことでいいのか?ちょっと待ってろ!」


そう言ってパフィエルは部屋から出て行った。暫くしてティーセットを持って帰ってきた。そして慣れた手つきでお茶を入れる。僕は何も言わなかったけれど、砂糖とミルクをたっぷりと入れてくれた。

恐る恐る口を付ける。


「おいしい」

「だろ?」


なんだろう、いつもと同じ茶葉のはずなのに全然味が違う。メイドさんが入れてくれたお茶もおいしいけれど、パフィエルが入れてくれたのはその上をいく。なぜ!?


「昔、俺の婆様から教えてもらったんだ。いつか嫁さんをもらったら入れてやれって。喧嘩してもこれで仲直りができるからって」


婆様から合格をもらうまで凄く時間がかかったと言葉を続ける。だからこんなにおいしく入れられるのか。怒っていたのも忘れるくらいおいしいから、お祖母さんの言ったことは間違ってないね。


「パフィエル、無視してごめんなさい」


お茶を飲んで気分が落ち着いたら、僕も結構酷いことしてた。パフィエルはアルデビルド様に言われたから僕とスキンシップを取ろうとしてくれたのに、本を読みたいからって無視したのは僕だ。


「いや、俺もしつこかったな」


2人で謝ってこれでおしまい。仲直りだ。僕はお詫びの意味も込めてパフィエルのほっぺたにキスをした。


「な、なにすんだよ!」


パフィエルの顔が見るまに赤くなっていく。ちょっと面白い。


「お詫びのしるしです」


そう言ってもう一回ほっぺにキスをしてみた。パフィエルの顔、火が出そうなくらい真っ赤になった。


「やめろ!」


ほっぺたを押さえて後ずさるパフィエル。僕は新たなる楽しみを発見したのだった。

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