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塔の中 塔の外  作者: ちとせ
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声のした方を見てみると、そこは忘れもしない僕を殴ったパフィエルがいた。

なぜこの場面でパフィエルなんだ!

ここはアルデビルド様やウェルスタイ様たちが格好良く登場して僕を助けてくれる場面じゃないのか!

お前じゃない感でパフィエルの方を見る。パフィエルの右手には剣が握られていた。


「シーネ!」


また名前を呼ばれた。これ程嬉しくない助けは初めてだ。プイっと顔を背ける。自称父親、早く連れて行って下さい。

そんな空気を出す僕。


「シーネ、アルデビルド様が助けに来て下さった。早く、その男から離れるんだ」


そんなこと言われても、がっしりとお腹を掴まれているから逃げ出せません。逃げ出せるなら初めから逃げ出してますぅ。

ちらっとパフィエルを見た後、フンっと顔を背ける。この男の事は嫌いだけれど、パフィエルの事も嫌いだ。どちらの言う事も聞きたくない。


本当になんで助けに来たのがパフィエルなんだろう。他の人だったら喜んで飛んで行くのに。身動き取れないから実際は行けないだろうけれど。

こんなことをしている間に、誰か違う人が助けに来てくれないだろうか。出来たらアルデビルド様希望です。


「どけ、お前には用はない!」


男がパフィエルに叫ぶ。


「シーネはレウカウス様の所に連れて行くんだ。邪魔をするなら命は無いぞ!」

「やれるものならやってみろ!」


そう言って男は手のひらをパフィエルの方に向けた。手のひらから拳ほどの大きさの氷の塊が何個も飛んで行く。もしかしてこれが魔法だろうか?

パフィエルは飛んできた氷を持っていた剣で氷を叩き切る。男の手からは次々と氷の塊が飛び出していく。


「この程度の魔法、無駄だ」

「っく!そこをどけ!」


どう見てもパフィエルの方が優勢だ。男の顔には焦りが浮かんでいる。


「アルデビルド様はお怒りだ。早くシーネを離した方が身のためだぞ」

「黙れ!」


男は氷を飛ばすのをやめた。代わりにナイフのように鋭い氷のかけらを作り、僕の方に向ける。


「こいつを死なせたくなかったらそこをどけ!私は本気だぞ!」


そう言って氷を僕の顔に突きつける。そして見せつけるかのように頬を滑らせた。冷たいと思ったら、じわりと温かいものが流れていくのが分かった。多分切られた。


「自分の子供を傷付けるのか」

「これは私の子供でも何でもない!妻を殺した、不幸を呼ぶものだ!」


不幸を呼ぶ『もの』。どうやら子供と認識されていなかったらしい。だったらい今の僕はいったい何?ただの不幸を呼ぶ『もの』?

もしかしたら生きている意味はないのかもしれない。


「シーネ、そいつの言葉は聞くな」

「真実だろう。こいつのせいで私の妻は死んだ。こいつが生まれて来なれば妻は死なずに済んだのに!」


僕を持っていた手にぐっと力がこもった。お腹が苦しい。

僕のせいだと言われ続けていると、本当にそんな気になってしまう。この男が不幸になったのは僕のせい。

僕が生まれたから僕のお母さんは死んだんだ。

もし僕を産まなかったら今も生きていたのかもしれない。そうしたらこの男もこんな怪しげな宗教にはまらなかったのかもしれない。

僕が生まれたから、僕がいたから、僕がいるせいで・・・。


「違う!お前は不幸を呼ぶものじゃない、アルデビルド様を思い出せ。アルデビルド様はお前が来てから本当に楽しそうに過ごしていた。アルデビルド様は笑っていた。お前が不幸を呼ぶものなら、アルデビルド様が笑顔だったのはなぜだ!不幸であったと思うのか!?」


パフィエルの言葉に僕はハッとした。確かに僕の記憶の中のアルデビルド様は笑顔でいることが多かった。

僕はアルデビルド様には不幸を呼んではいなかった?


「エルゴンやウェルスタイも毎日楽しそうにお前の所に行っていた。それを不幸だったとお前は思うのか」


2人とも楽しそうだった?本当に?僕は不幸を呼ばない?


「お前は不幸を呼ぶ存在じゃない!帰りたくないのか、みんなの所に!」


パフィエルの言葉に僕は涙が流れた。


「・・・・っい」

「なんだ!聞こえない!」


パフィエルが声を出す。


「っか、えり・・・たい」


泣いているせいで声が詰まる。


「みん、なのとこ、にかえりたい、よぉ」


今まで出なかった声が、出た。

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