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塔の中 塔の外  作者: ちとせ
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目の間には色とりどりの花が咲き乱れていた。


『うわあ!見てください!すごくきれい!夢の世界にいるみたい!』


僕は声が出ないのも忘れて2人に話しかけていた。近くに咲いていた花へと駆け寄る。薄い紫色の花びらがたくさん重なった花だった。

『凄い!キレイ!かわいい!』声は出ないけれど、言葉があふれて止まらない。この感動を分かち合おうとアルデビルド様の方を見る。

アルデビルド様も言葉が出ないみたいでジッとこちらを見ていた。そんな離れた所からじゃなくて、もっと近くで見ましょうよ!そう思って僕はアルデビルド様の所に行って手を引っ張る。


アルデビルド様を連れて、今度は赤い花の咲いている所に行く。花びらが一枚一枚大きくて、とってもいい匂いがしている。

いいなぁこんな素敵な庭園を毎日見られるなんて。ガウェン様が羨ましい。

ニコニコしながら庭園を見て回る。


「あちらには温室もあるんですよ」


えええぇぇ!行ってみたい!どんな花があるのか見てみたい!期待に満ちった瞳でアルデビルド様を見る。仕方がないといった顔で僕を見た。ガウェン様も近づいてきて僕の手を握る。

両手を繋がれて先ほどとは違い、ゆっくりと歩いてくれた。


ワクワクと温室に連れていかれる。温室に行くまでにもきれいな花が咲き誇っていてとっても楽しい。

キョロキョロとしながら歩いていたら、あっという間についた。

ちょっとムワッとした空気の中に入ると、そこにはまた変わった花が咲いていた。けれど半分くらい花のついていない植物もあった。それは薬草になるそうです。


「その花は虫を食べるんですよ」


蝶々みたいな花を見ていたら、食虫植物だった!2日に1回、虫をあげているそうです。

三つ葉みたいなオレンジの花もあって、真ん中にでっかい棘が生えているのもあった。七色の花もあってビックリです。

凄いなぁ、どうやったらこんなにカラフルな色になるんだろう?ガウェン様に聞いてみたら、魔力を取り込んで色が変わるんだって教えてくれた。

魔力で変わるだなんて、地球じゃ考えられないよね。魔力の影響を受けなかったら、種から同じ花が咲くっていう事も教えてもらった。


温室を見た後、庭園に戻ってゆっくりと見て回った。半分も見ないうちに帰る時間になってしまい、種か苗を持って帰るか聞かれたけれど枯らすだろうからと断った。緑の手にはなれません。

3人で手を繋いで、王様たちの所に戻る。ニコニコした僕の顔を見て、満足したようだなと王様は笑っていた。


「まだ半分も見て回れなかったので、また来てもらってもいいですか?」


ガウェン様がそう言ってくれた。庭園、また見せてくれるんだろうか。だとしたら嬉しいな。

王様の方を見るとちょっと驚いた顔をしていた。


「ガウェンはよっぽどシーネが気に入ったんだな。いいだろう、また近々来るといい」

「ありがとうございます。シーネ、よかったですね」


王様の許しがもらえた!ガウェン様と顔を見合わせて笑いあう。今度は庭園グルっと見て回りたいな!

ここで王様たちとは別れた。噂通り穏やかな王様でした。

僕たちは馬車に乗るために移動する。


馬車に乗る前にガウェン様にお別れの挨拶。アルデビルド様のご両親はガウェン様に挨拶をした後、先に馬車に乗り込んだ。

ご両親の挨拶が終わった後、ガウェンはこちらにやって来て、僕の両手を握った。


「今度はぜひ、シーネ1人で来てください。ゆっくりと話をしましょう」

『僕1人でですか?』


口パクで答える。1人だと迷子になりそうで心配だなぁ。困った時のアルデビルド様だ。アルデビルド様の方を見るとちょっと怖い顔をしてこっちを見ていた。

僕、何かしたかな?不安になりながら怖い顔をしたアルデビルド様を見ていると、僕に気づいたようで表情を和らげた。


「ガウェン様、どうやらシーネはまだ一人での外出は不安があるようです。こちらにお邪魔する際は私が付いてきてもいいでしょうか?」


そうしてもらえるとありがたいです。ガウェン様は少し考えた後「そうですね」と答えた。

実はガウェン様の部屋にいた時も、ちょっと不安だったんだよね。知らない所に知らない人ばっかりだったから。


「ではまた連絡しますね」


はい、お待ちしています。にっこりと笑ってガウェン様の言葉に頷いた。

一瞬ガウェン様の動きが止まった後、グイっと掴まれていた両手を引っ張られた。

転ぶっと思って目を瞑ったら僕の左のほっぺたに、ふにっとしたものが触れた。


『えっ?』


と思って目を開けると、僕を抱きしめるガウェン様。顔が近い。


「楽しみにしています」


耳元で言われて息があたる。今、僕のほっぺたに当たったのはもしかして!左のほっぺたに手を当てる。


もしかしてほっぺにちゅうされた?


ぶわっと僕の顔が赤くなる。ふふふと笑ってガウェン様が離れた。なんちゅうことをする王子様だ!まだ9歳なのに末恐ろしい!

固まって動けない僕の肩がグイっと引かれた。

後ろを見るとそこにはアルデビルド様が笑顔で立っていた。うん、笑顔。


凍る!


これこそ絶対零度の微笑み!赤くなっていた僕のほっぺたは一気に青くなる。なんて顔してるんですか!


「シーネ、帰るよ。それではガウェン様、失礼します」


そう言って礼を取る。歩き出したアルデビルド様に肩を抱かれて歩く。アルデビルド様、確か魔法は雷でしたよね?氷じゃ無かったですよね!?なのにこの冷気はいったいどこから!

ガウェン様を振り返ると笑って手を振っていた。僕も小さく手を振り返す。


「シーネ、後で話がある。部屋で待っていて」


笑顔のアルデビルド様から今まで聞いたことのない低い声が!

僕は壊れた人形のようにコクコクと頷きながら馬車へと乗り込んだ。

家に帰るのが怖いと思った初めての日だった。

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