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10 会議室にて

02話目と03話目の間に、02.5話を挿入しました

 

 ■システィーナの視点



 コックリと私は、アラルフィ大聖堂の一室に来ている。

 大聖堂とはうって変わって、石造りの簡素な会議室だ。調度品もテーブルや椅子しかなく、やはり通常は清貧をモットーにしているのね。

 そこには私たちのほか、アラルフィのラフィ司教様とその他の司祭様が五名と、さらに捜査に協力してくれたガレー船の船長さんたちが十名程いる。………のだけれど、うう~。荒っぽくて体格のいい船長さんたちが、ギラギラした目で私を上から下まで見ているから………うう~。皆、結構上等なガウンを着てはいるんだけれど………多くの船長さんが髭を生やして胸の空いた服を着ているものだからモジャモジャしているものが全開で………良かった、コックリには生えてなくて。こんなのヤよ。ああ、もしかして海の強い日差しにあたると、焦げてチリチリモジャモジャになるのかしら? だとすると、コックリに漁師さんになってもらう案は却下かしら。一緒に農業もいいわね。



 さて、ここに集まって何をしているのか………というと、情報収集だ。

 私はてっきり、問題の『 光る海 』にそのまま行くのかと思っていたのだけれど、コックリは「光る海に関する情報で把握していない情報があるかもしれないから、情報収集する」と言って、皆さんに集まってもらったのだ。まあ、その通りよね。

 コックリは一通りの状況を説明し、『 光る海 』に関する情報を教えてほしい、と言った。



「光る海か………、確かにあそこなら、何が起こってもおかしくない。」「常識を越えた場所だしな。」「世界の七不思議の一つ、光る海………。」「光る海か………。」



 集まった司教様や船長さんたちが口々に話し合う。石造りの会議室におじ様独特の低いドヨドヨとした声がこだまする。



 光る海とは、それほどの存在なのか………神秘の海、常識を越えた海。神殿騎士でさえも調査にタブーがあるという………。いったい何が光っているのかしら………?



「場所としては、このアラルフィから南に三百キロほど行った場所………でよろしいですか?」

「ええ、そのぐらいの距離でしょうな。」



 黒いモジャモジャした髭が胸元まである船長さんの言葉を皮切りに、他の船長たちが話し始めた。



「むう………光る海は、今から二百年前くらいに、その光が発見されたということで、もしかしたらもっと前から光っていたのかも………という噂はありますな。」 これは固太りの船長さん。うん、モジャモジャしていない。以下 固太船長と言おう。



「昼夜問わず、常に光輝いているそうですな。魔物の棲息域なので最近はあの海域を通らないのですが………遠くの海域からでも、夜なら光輝いているのは見えますぞ。」 白い口髭がクリンとした船長さんで、この人は年輩だからか胸元は開いていない。 これは白髭クリンとしよう。



「その昔、数々のサルベージ船が様々な方法を編み出しては、挑戦し失敗したようですな。」 固太船長。



 そうか、人間は精霊魔法を使えないから大変よね。妖精だったら、あの魔法が使える。水の精霊魔法で、『 水中呼吸 』の魔法だ。水のなかに含まれている酸素を取りだし、呼吸できるようにする魔法なのだ。

 だからこそ、私はこの光る海の調査を少し安易に考えていたのだけれど、この後の話で自分の認識の甘さを知った。



「今もまれに、一攫千金を狙った命知らずがあの海に挑んでいるようですが………三つの壁を越えられないようですね。」 と赤い髪の若い船長さんでモジャモジャしていない。中年の赤髪の船長もいるからこちらは、ヤング赤髪船長としよう。



「三つの壁………ですか?」



 コックリが質問すると、ヤング赤髪船長が続けて話した。



「ええ、一つ目は天候です。温暖な海域ゆえか、嵐がよく発生します。その嵐により、転覆する船もあるのです。」



 なるほど、暖かいと天候が荒れやすいものね。コックリいわく蒸発した海水が雲となり雨を降らすと言っていたっけ。



「二つ目は海上と海中の『 潮の流れ 』が異なることです。そしてその流れがあまりに強い。それゆえバラバラに引き裂かれてしまうようです。」



 海の上と中で流れる潮が違う………。うう〜ん、たぶん潜水服とか空気を送る管とか、壊れてしまうんだろうな。ああ怖い! 想像しちゃった、海の中で潜水服が壊れたり、酸素がなくなって急に管から海水が押し寄せたり………!



「最後三つ目は海の魔物です。巨大なクラーケンやサーペント、オウムガイなど、肉食の巨大な海の魔物たちが、あの海域を支配しているようです。」



 天候、潮の流れ、魔物………確かに三つの壁だ。水の中で呼吸できる程度では、根本的な問題解決にはなりえないのかも。ちょっと、神秘の光る海を調べるのは無理じゃないかしら? これじゃあ運にかけるところが大きい。とても生きて帰れないわよね………。

 ああ、危なかった! 情報収集せず、行き当たりばったりでチャレンジしていたら、死んでたかも! はあぁ、さすがコックリ。何事も、熟慮断行よね。



 今度は中年の赤髪船長が話した。これは胸毛がモジャモジャしている。ミドル赤髪船長としよう。


「伝え聞くに、二百年前のあの海域は、それは穏やかな海で魔物も存在しなかったらしいですな。………それが光る海の噂が広まるにつれ、あの海に潜る者たちが後を絶たず………それからしばらくして、海が荒れ魔物が棲む危険な海へと変貌していったようです。まるで、『 潜るな 』と言わんばかりに………。」



 その言葉に、会議室内がシンと静まり返る。その静けさを破るように、頭がツルッとした年配の船長が話し始めた。でも胸毛はモジャモジャだ。ツルモジャ船長にしよう。ツルモジャ船長は続けた。



「まだあの海が穏やかだったころ、あるサルベージ船が結構な深さまで潜れたらしいのですが………。」

「そうなんですか? して、光る海の底はどうなっていたんでしょうか?」

「ええ、どうやらあの海の底には、『 海溝 』があるようなのです。」

「海溝が?」

「はい。」



 その船長は続けた。



 陽の光も届かない冷たい海の中………海底が光っていた………。

 そこには深い海溝があり………海溝の底から、光が放たれていた………。

 柔らかな太陽のような光が………。

 光はあたりを照らし出し、そこには大地の裂け目のような、海溝の崖が見えた………。


 そう証言したらしい。

 ちょっと待って………それって立ちはだかる壁が増えてない?

 ①天候

 ②潮の流れ

 ③魔物

 ④海底より深い海溝



「乗り越えるべき壁が増えましたね。」



 コックリも同じことを思っていたみたいで、その言葉に皆が、はっとした。



「あれはどうだろう?」



 白い髭の船長さんが私を見て話しかけた。胸毛がモジャッとしている。白髭モジャ船長だ。



「あれ、とは?」

「ええ、ええ。あれですよ、あれ。」

「あれ?」

「ええ。」



 白髭モジャ船長さんが私を指差す。ええ〜、モノ扱い〜?



「人魚に知恵を借りてはいかがでしょう。」



 ああ! 私が人魚姫っぽいから指してたんだ! うう〜、忘れていた胸のモヤモヤが思い出された………。




 ■光る海のまとめ

 謎:

  ①何があるのか?

  ②今、何が起きているのか?

  ③なぜ聖霊の啓示がないのか?


 場  所:アラルフィから三百キロ南

 時  期:分かっているだけで二百年前から光りはじめる。

     (もっと前からの可能性も。)

 発光時間:一日中、昼夜問わず   

 海の状況:

     ①二百年前 : 穏やかな海

     ②現   在 : 三つの危険性

       ②-1 天候

       ②-2 潮流

       ②-3 魔物

     ③海溝がある。

       ③-1 海溝の底から光

       ③-2 柔らかな太陽のような光

 調査方法:

     ①海上から : ちょっと危険だけど、やるしかない?

     ②そ の 他 : 人魚に知恵を聞く?






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