第009話 模擬戦での出来事・・・
■クリスタニア大陸 クリスタニア クリスタニア学園 体育館 アルフォード・ウィンザー
今、体育館には理事長、教官、1年のチーム長が15名、そして僕がいる。各チーム長はいきなりの招集で事態の把握が出来ないのだろう不思議そうな顔をしている。チーム長は15名で第1から第15番までのチームがあり、1番から順に成績の良い順にチーム長が任命されているとの事だ。そんなチーム長の中に顔を見知しっている人もいる。そう命の恩人であるナディアチーム長だ。彼女は5番のチーム長という事だから今年の入学試験を5番という成績で入った事になる。凄いな…エリートさんか。
そう思っていると、理事長がチーム長に事の経緯を説明した。それにはチーム長も納得しなかったらしく…僕に対して冷たい視線を浴びせてくる。やれやれだ…さて、誰と戦う事になるのやら…
理事長から戦いたい者はいるかという言葉に全員が手を挙げた。勇猛ですな…と心の中で毒を吐く。私のレベルが57と分かれば手も上げないだろう人たちを見ると何だか可哀相になった。まあ、僕も理事長からお墨付きは貰っているけど不安がある。それと手加減が出来るか…殺してしまっては洒落にならない。そして、僕と戦う事になる可哀相なチーム長も負ければ、他のチームやチームの一員から何を言われるか分からないだろうと思うと余計に憂鬱になった。少しは演技もしなければ…
全員が手を挙げている状況の中、理事長が僕に対戦相手を指名しろと言った。えぇぇ…!!それは無茶ブリでは…15人中8名が女性だ。1番2番5番8番10番11番14番15番…男はどうしたと思って、こう発言した事が火に油を注いだようだ。
『誰でも問題ありません。ただ、女性は殴りたくありません。』
発言した後に気が付いた。この発言の意味するところを…しまった。大胆な発言だったな…言葉を選んで声に出すように気を付けていたつもりが…やれやれだ。これを挑発だと思ったらしく…全員の視線を再び浴びた…それでも弁明はした方が良いだろうと…
『あ…そういう意味では無くて…』
そういうと今年のナンバー1つまり1番のチーム長が立ち上がって抗議をしてきた。とうやらこの子と戦う事になりそうだ。主席だから頭脳明晰だろう。そして凛とした姿、如何にもこの発言を許さなそうな正義感の強いオーラを出している美少女を相手に僕はどう戦えというのか。出れない迷宮に入り込んだ思いだ…
「お黙りなさい。許さなくてよ…」
それでは、武器を取りなさいと理事長がいう。1番のチーム長は長刀を取った。そして僕は、先程の普通の手刀でも死にかけないと言われた理事長のセリフが頭にあり、武器は必要ありませんと答えると…
「女だと馬鹿にして…」
1番のチーム長から批判の言葉を浴びせられ、外野からは冷たい視線が矢のように突き刺さった。視線で人が殺せるなら、僕は今日が命日になる。泥沼だ…これ以上の発言は禍しか呼ばないに違いない。戦う前から戦意喪失な状況になっている。出来る事なら10分前に時計の針を戻したいと心の底から思う自分がいた。仮に学園に入学出来ても孤立する可能性が高いだろう…
そんな中、理事長からルールが告げられる。相手を気絶させるか、相手の戦意を無くした状況にするか、相手が参ったと発言するまで行います。万が一に備えて、私が審判をします。それと怪我をした場合は私が治療しますので、全力で戦って下さいと念を押した・・・それでは始め!!
始めの声と当時に…1番のチーム長が名前を名乗った。リーファ・シャロンよ…
『僕は、アルフォード・ウィンザーです。よろしく!』
そう言うとキッと睨まれて、模擬戦が始まった。
■クリスタニア大陸 クリスタニア クリスタニア学園 体育館 ナディア・リシャール
9日前に救助した冒険者アルフォード・ウィンザー…得体のしれない冒険者だ。あの怪我から推測される敵は上位種・最強種の可能性がある。その攻撃を受けて生きている事を想像すると只者ではないかもしれない。ただ、さっきの発言から人間性は最低である事が分かった。女を馬鹿にする奴…少しくらい痛い目にあった方が良いと思った。そう思っていると始め!!の声がかかると同時に、リーファが電光石化の動きでアルフォートに向かって長刀を一閃した。これは避けられないと相手を見ると、目では負えないスピードで長刀を躱す。それには、長刀を振り払ったリーファもこの会場にいる人も感嘆の声を上げた。すごい!!
■クリスタニア大陸 クリスタニア クリスタニア学園 体育館 リーファ・シャロン
何なんですの?開始早々に放った長刀は、相手に当たるどころか、相手の見えない動きで躱された。そんな…あれを躱されては…しかも、相手のスピードについていけない事が分かると不安に襲われ、足が震えだした。だけど、この性格の悪い人には負けたくないと自分を叱咤して奮い立たせた。それでも立っている事が精一杯。次の攻撃が出せなかった。そうすると相手から物凄い威圧が放たれ、私は吹き飛び…そして、意識を手放した…
■クリスタニア大陸 クリスタニア クリスタニア学園 体育館 アルフォード・ウィンザー
始めという声とともにリーファと名乗った美少女が長刀を一閃する。周りからは唸り声が聞こえる所を見ると素早い動きなのだろう。私とは流れる時間が違うのか。ゆっくりと迫る長刀を躱すと…相手が驚いた顔をした。?…次の攻撃がなかなか来ないので…僕はどうして良いか分からない。僕の中のシナリオでは、次の攻撃を受けて、吹き飛ぶ…何とか立ち上がって…ギリギリの勝負で勝ちましたという物語を描いていたのだが…突っ立っていても仕方がない。
僕が出来る事はカードの出し入れ意外は特殊能力の①と②と念じる事位だ。訳も分からずラーニングと心の中で念じる。何も起きない。次に、闘気解放と力を込めると…この体育館の半分くらいに闘気が解放されて…そして周りを見るとチーム長の面々と教官の何人かが意識を失っている。どうやら、手加減に失敗したらしい。
吹き飛んで、意識を失ったリーファを理事長が受け止め…教官たちは受けた衝撃を耐えている。周りを見ると意識を保っている教官は目が点になっていた。
そこに、理事長から勝負ありという言葉が出るが…僕はこの後の事を想像する事を放棄した。多分、説教になるだろう…