第010話 模擬戦の後始末
■クリスタニア大陸 クリスタニア 冒険者ギルド グレース・リングバルト
クリスタニア学園から急な呼び出しがあった。どうやら模擬戦を行ったらしく、その中で怪我人が出ているらしい。急いでクリスタニア学園の体育館に近距離移動を行うと、そこには気絶している生徒15名、教官3名がいる。どういう攻撃をすればこのような事態になるのか?それにしてもおかしい体育館に何の影響もないなんて…私は辺りを見渡すとそこに、理事長とアルフォード君を発見した。何があったのですか?そうすると理事長がアルフォード君を見た…
当事者である僕が説明しなければならないだろう…
『入学手続きに来て、模擬戦をする事になりました。そして、チーム長と模擬戦をする事になったのですが…』
アルフォード君はそのまま口ごもった…
「何をしたの…」
『普通の攻撃をしようと思ったのですが、理事長から手加減をするように言われて…自信が無かったので、特殊能力を使いました。』
「特殊能力…?」
『はい。僕には2つ特殊能力があって、その一つの闘気解放を念じて、力を込めたらこうなりました。』
「闘気も使えるの…」
私は理事長を見た。理事長はこの子が上位冒険者だと知らなかったのだろうか?そう思って理事長を見ると…苦笑している。どうやらこの子が上位冒険者という事を知っているらしい。
「理事長、この子の力を知っていて何をしているのです。」
「失敗しちゃったわね…」
理事長、一体全体何をやっているのです。
「失敗してしまったものはしょうがない。とりあえず、気絶している教官と生徒を回復させましょう。話はそれからです。」
そう言って、私と理事長、アイオロス教官は気絶した生徒を介抱した。その間、僕は理事長室で待機するように命じられた。多分、目覚めた生徒・教官が僕を見れば怯えるか…罵倒するか…どちらにしても良いことがないと判断したようだ。
■クリスタニア大陸 クリスタニア クリスタニア学園 体育館 フレイヤ・ミッターマイヤー理事長
こちらの想像を絶する能力を持っているアルフォード君に模擬戦をさせた事はやはり失敗だった。今を思えば、生徒としてではなく…教官見習い位で学園生活を送らせる方法が良いのではと思った。しかし、後の祭りだ…事が起こってしまった以上、教官や生徒にはある程度の話をしなければならない。どうやら、気絶した教官と生徒が目覚めたようね。
「目覚めたようね。教官は私の後ろに、生徒は番号順に整列して下さい。」
そうすると教官・生徒はキビキビした動きで整列した。しかし、1番のチーム長に至っては、胸を張れずに、項垂れている。それもそうだろう。この学園に入る前までは才能だけで生きてきた。そして学園生活も1番という成績で入っている。温室育ちなのだ。もちろん、挫折を味わった事などないのだから…
「先ほどの模擬戦の結果は、言わないでも分かるわね…」
生徒たちは、頷き下を向いた。傍観者だと思って油断したとか、そんなレベルではない。衝撃が何故きたのかすら分からないのだ。更に…気が付けば介抱されていた。言い訳のしようが無いほど打ちのめされているのだから…強引に締めくくるしかないか…
「今日の事は他言を禁じます。ここのいる人だけの事にして下さい。」
生徒の中から質問が飛んだ…
「あの子は何者なのです。此の侭では我々の矜持が…」
それに理事長は冷たく答えた。
「戦闘では生きる事が第一です。矜持は生きるために必ず必要という訳ではありません。状況によっては勇気ある撤退も必要です。確かに、今日の出来事は納得できない事があるでしょう。だから、今日の事は他言無用と言ったのです。徹底して下さい。何者なのかという事については、我々も彼の能力について分からない事があります。ただ、彼は9日前にこの町の近くの森で発見された。助けたのはナディアさんのチームです。そして、彼はその前の記憶がありません。分かっている事は、彼が5歳の時に冒険者になっているという事だけなのです。」
それに、多くの生徒は絶句していた。
「5歳…」
それに理事長は答える。
「正直な話、ここに在学している全校生徒でも彼には敵いません。それを知って模擬戦を戦わせた私がいけないのです。彼をこの学園に入れようとしたのは、彼が10年間で得た力が、貴方たちにとって、良い刺激になればと思ったのです。今日の結果として彼をこの学園の特待生として迎えます。彼はまだ記憶が無く、魔法も使えない…彼はここで、普通の生活を送りたいのです。仲良くして下さい。」
仲良くして下さいの言葉に、リーファが答える。
「彼は、ここのチーム長を馬鹿にしました。そして、女性と差別したのです。」
「それは違うわ。彼が模擬戦をする事になったのは今日の事なの…そして、あなた達が何者か知らなかった。選べという方が間違っていました。それに彼には冒険者としての記憶がありません。だとすると子供や女性は守る者と思う事が間違っているとは言えませんよ…リーファさん。彼はその事を弁明しようとしたらあなたが、言葉を遮ったのです。彼と知り合って日が浅く、我々も彼を把握しているとは断言できません。それでも我々に対する彼の接し方は礼儀がありました。ナディアさんに助けられた事も、お礼に来ています。直ぐに仲良くなれとは言いません。彼のこれからの行動を見る事も必要ですよ。話は以上です。それでは解散。」
これ以上の質問は受け付けないと言わんばかりに私は解散を告げた。
■クリスタニア大陸 クリスタニア クリスタニア学園 理事長室 アルフォード・ウィンザー
理事長室で待っていると、扉が開いた。入ってきたのは、理事長、アイオロス教官、グレース先生だ…そして、理事長が口を開く。
「生徒は全員無事よ…」
『良かった…』
「それにしても闘気まで使えるとは…解放しただけであれだけの威力…B+冒険者という事を知っている私の想像を超えていました。」
そう話すと、アイオロス教官・グレース先生はギョッとしたような顔をしている。
「彼を上級の冒険者とは思いましたが、まさかB級しかも+ランクとは…」
グレースさんの言葉の後にアイオロス教官も続く。
「そんなにすごい方なのですか。B級と言えば国賓級の扱いで迎えられる方ではないですか?」
アイオロス教官は、なぜ、彼をこの学園に迎え入れようとしたのか初めて理由を悟った。
「能力を見せて貰えるかしら…」
『はい。』
手を出して詠唱する。出てきたインテリジェンスカードを差し出した。
「ありがとう…」
そして、3人はその能力を見て口をポカーンとさせた。想像より上なのだ…
「まさか、戦闘能力が17,000を超えているとは・・・」
『聞いてよろしいでしょうか?』
「なに?」
『魔法を全属性覚えられるようですが、6属性しか取得していないようです。それと魔法の取得欄が無い。これはどういう事ですか?』
グレース先生が答えた。
「記憶を無くしたか。クリスタルが砕けた影響で消滅した可能性がある。再契約する事ね…」
『再契約?』
「この世界で魔法は、魔法書から魔法陣をクリスタルに記憶させるのよ。だから詠唱といっても難しくないわ。祈りを捧げたり、使いたい魔法を念じれば、魔法陣が現れて詠唱の役割をするのよ。魔法も攻撃力が高ければ高いほど、魔法陣が複雑で現れるのが遅いのよ。だから馴れる必要があるの…だから得意の魔法を使えば使うほど、魔法陣の現れるスピードが上がったり、攻撃が強くなるのよ。だから取得できる魔法が全属性だからと言って、全部所得するわけではないの…同じ戦士団の中で2人が使えるように調整するのよ。基本は、飛翔魔法、転移魔法、補助強化魔法を覚えて、2属性~3属性程度覚えるのが基本ね。」
『そうですか…』
今、先生が話した事を、記憶のあった時の僕は忠実に実行している事が分かった。僕は本当に戦いの日々だあったのだろう…
「今日は疲れたわね…とりあえず明日からこの学園に登校しなさい。」
『大丈夫でしょうか?』
「心配しないで、来ればいいわ…」
『はい。』
その後、僕は住む家が無い事を話すと、学園の寮を紹介された。その手続きをしてくれる事になった。学費について尋ねると特待生だから無料でいいわと言われた。ただし、寮費は月600G取られると言われて、分かりましたと返事をした。そして、解散する事になった。説教は無かった…明日からこの学園の正式な生徒になる。そう思うと不安と、期待に胸が膨らんだ…
明日は書けないと思います。




