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クリスタルの記憶  作者: 遊人
第1章 始まり
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第002話 冒険者ギルド(修正)

■クリスタニア大陸 クリスタニア 教会 アルフォード・ウィンザー


 目覚めてから3日目の朝を迎えた。目は覚めているがベットの中で静かにしている。そうすると”コンコン”とドアをノックする音が聞こえた。


「良いかね。」


 どうやら神父さんのようだ。何か用事がるのかもしれない。ベットから起きて、ドアを開いてから挨拶を交わした。


『おはようございます。』


 神父さんも”おはよう”と挨拶をしてから部屋に入ってきた。


「先程、冒険者ギルドから使者が来て、今日来てほしいと伝言を頼まれた。急で申し訳ないとの事だよ。」


 ギルドは、僕の素性を急いで調べたい様だ。


『分かりました。出来れば、冒険者ギルドの所在地を教えて頂ければ有り難いです。』


 冒険者ギルドの大まかな場所を聞いた。もし、分からなければ町の人に尋ねれば良いだろう。用事も無い事だし、さっそく冒険者ギルドに行ってみようかな。



■クリスタニア大陸 クリスタニア 冒険者ギルド アルフォード・ウィンザー



 目覚めてから僕は初めて教会の外に出た。クリスタニアの町は田舎というより、都会なのだろう。なかなか大きな町のようで商人や多くの人で賑わっている。


 どうやらここは商業ブロックのようだ。大きな店が並んでいる。聞いた話だと町の中央に商業ブロックがあって、北側には学校。そして、南側の町の入口に冒険者ギルドが在ると言う事だ。


 しばらく町の出入口に向けて歩いていると冒険者の恰好をした人が大きな建物の中に入って行った。どうやら此処が冒険者ギルドのようだ。僕は、そこに入って受付に話を通した。


『すいません。今日、ここに来るよに言われている者です。教会から来ました。』


 受付の女性は、僕の言葉に慌てた様に動き出した。あの様子だと素性が分かるまで危険分子扱いなのだろう。


「…少々、お待ち下さい。」


 受付の職員が奥の扉に入って行った。どうやら調べる人は此処に居ないらしい。10分位待つと、奥から一人の中年男性が現れた。


「初めまして冒険者ギルドで調査官をしております、エドワルド・コナーと言います。」


『えっと…。私は多分ですが冒険者のアルフォード・ウィンザーです。よろしくお願いします。』


「それでは奥で話しましょうか。」


 そう言って、エドワルド調査官は僕を奥の部屋に招いてくれた。


「それでは早速ですが、身分証を見せて頂けますか。」


 身分証?僕はそんなモノを持っている覚えはない。記憶が無いから分からないのか。それとも意識が無い時に盗難されたか。


『えっと。身分を証明する物など一切持っていないと思います。』


 僕が困った顔をしたのだろう。エドワルドさんもそれを理解したのか、手を差し伸べてきた。


「そういえば記憶が無いという事でしたね。それは失礼しました。あなたは冒険者なのです。あなたの氏名、戦歴、ランクなどが分かるように冒険者ギルドが発行した身分証があります。」


『…?』


 そんな物は荷物や装備一式にも無かった。紛失したもかもしれない。困ったな見せろと言われても持参していない。それに僕にはそれがよく分からない。


『冒険者ギルドで発行したカードなんて見た事もありませんよ。』


 エドワルドさんは笑っている。


「ハハハ…。失礼。記憶が無いのです。分からなくても仕方がありません。体の中に埋め込まれている物ですから失くす事などありませんよ。」


『体の中にあるのですか?』


 何でそんなものが体の中に埋め込まれているのだろう。分からない事は質問した方が良いだろう。


『何でそんな物が体の中にあるのですか?』


 僕の質問に調査官は丁寧に答えてくれた。最後は少し言いずらそうにしている。


「冒険者は常に危険と隣り合わせです。高い報酬を貰うという事はリスクを負うという意味です。」


 調査官は口ごもったが、ようは五体満足な状態で発見されるとは限らないという事か。そうじゃない場合も身分だけは確認出来るようにという事だろう。まぁ…俺もやられていた事を思うと何となくそうだと思った。


「それでは、手を出して下さい。」


『その前に、調査官に質問があります。その身分証明書は全て見せないといけないのでしょうか?』


「出来れば、見せてもらえれば有難いが秘匿も出来る。ただし、名前、出身地、年齢、犯罪歴等の履歴、冒険者のランクは見せて頂く。能力にかかわる部分は先程言ったように秘匿できる。」


 なる程…能力の部分は秘匿して貰うか。自分も確認していないものを他人が本人より早く知ることは気分が良くないし…


『すいませんが、能力等の部分は秘匿したいですね。それでお願いします。』


 調査官は、その答えに顔を顰めたが、秘匿出来る部分なので納得したようだ。


「分かりました。それでは、手を出して下さい。」


 左手を差し出して、机の上に手をのせると調査官は詠唱を唱えた。そうすると僕の手が光に包まれ、一枚のカードが出てきた。


「これが身分証明書になっています。それでは、登録機に入れて調べますが、能力の部分は見れないようにします。他に聞きたい事は有りますか?」


 冷静に考えたら、今の僕は無一文だ。教会にもお世話になっているし、僕が冒険者ならこれまでの報酬があるかもしれない。とりあえず確認してみよう。


『お金について聞いて良いでしょうか。』


「お金とは…調査の費用は掛からないよ。」


『記憶が無くて、これまでの冒険で得たものがないかと…』


「ああ、そういう事ですか?分かりました。上位の冒険者であればあるほど高額な報酬が得られますからね。それをこのカードに貯めている人は多いですから…」


『お願いします。』


 質問を理解したのか頷いて、エドワルド調査官は取調室から出て行った。



■クリスタニア大陸 クリスタニア 冒険者ギルド エドワルド・コナー



 アルフォード・ウィンザーか。ウィンザーという性は何処かで聞き覚えがある。だが、思い出せない。私は冒険者ギルドに登録しているデータベースから彼の事を調べている。


 冒険者ギルドはギルドメイン大陸にある本部の他に6つの支部に分かれている。クリスタニアもその支部の一つだ。このカードを登録機に入れる事で全ての冒険者の情報から彼の事を特定出来る。彼の情報が出てきた。


 冒険者 名前 アルフォード・ウィンザー 年齢15歳 戦闘歴10年(登録 5歳) 学歴 無 ランク B+ 出身地 不詳(登録 ユーレリア大陸の戦場) 犯罪歴 無 残高 376,552,000G 能力 秘匿(本人希望のため)


 何となく年齢は分かる。見た目や落ち着いた態度から18歳位かと思ったが、誤差の範囲ないだろう。


 しかし、その他はなんなんだ。B+ランクだと。この年齢でBランクって…


 どんだけ修羅場をくぐっても10年でBランクはあり得ない数字だ。それと報酬残高も凄い事になっている。


 一生遊んで暮らせる額が預金にはあった。彼は一体何者なのか。秘匿された能力の部分が気になった。


 本当に彼がBランクという事なら有名な戦士と戦士団契約で行動をしている可能性が非常に高くなる。有名な戦士団を調べればもっと彼の事が分かるかもしれない。


 だが、私は調査官としての仕事を優先すべきだ。彼の犯罪歴が無いのであれば問題ない。これ以上は個人情報になる。気になるがしょうがないか。



■クリスタニア大陸 クリスタニア 冒険者ギルド アルフォード・ウィンザー



 エドワルド調査官が取調室に帰ってきた。何処となく顔が疲れている様に感じた。


「調べさせて貰ったよ。犯罪歴は無かった。我々としては、この部分さえ分かれば町の治安等に与える影響はないからね。」


『そうですか。』


 良かった。犯罪歴がなければ、こちらも普通に生活できる。ホッとして溜息を吐いた。


『その他に何か気になった所は有りませんか?』


 調査官は疲れたような声を出して、溜息を吐いた。調査官の溜息に少しだけ驚いた。


「気になった所は沢山有ったよ。守秘義務があるから他には言えないが、冒険者としては、B+ランクで一流だったよ。」


『そうですか。』


「それと報酬残高は一生遊んで暮らせる預金が有ったよ。引き出すなら冒険者ギルドの受付にカードを渡せば問題ない。」


『ありがとうございます。』


 預金があるなら教会のお世話になる期間も少なくなる。


「あと、出身地は不詳だった。だけど、君が5歳の時に冒険者として登録されている。登録された場所は、ユーレリア大陸の戦場と書いて有った。あと学歴は無かったよ。」


『そですか…』


 正直、冒険者のBランクがどれ程のものかを理解していない。それにしても、お金については一生遊んで暮らせるという事だから今まで無理をしたのかもしれない。そういう事ならこれからは無理しないという選択肢もあるか。


 それにしても、僕はなぜ無理をしなければならなかったのか。それは記憶が戻れば分かる事なのだろうか?


「聞き取りはこれで終わりだよ。この町に永住する気があるなら歓迎されると思う。B+ランクの冒険者が町を守ってくれれば心強いからね。」


「ありがとう、ございました。」


 僕は冒険者ギルドでお金を引き出して、北に向かって歩き始めた。夕方までに帰れば良いし、今日はこれから助けてくれた人を訪ねよう。

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