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クリスタルの記憶  作者: 遊人
第1章 始まり
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第003話 学園に行こう(修正)

■クリスタニア大陸 クリスタニア クリスタニア学園 アルフォード・ウィンザー


 冒険者ギルドを後にして、僕は命の恩人が居ると思われる学校を目指し、北に向かって歩いている。そうすると大きな建物が見えてきた。


 自分が思っている以上の大きな建物だった。入口らしい門にはクリスタニア学園と書いてある。


 ここで間違いないようだ。こういう場所は初めてで、部外者である僕が入って良いのか分からず戸惑っているとここの関係者らしい人から声を掛けられた。


「ここで何をしている。」


 厳しい口調だった。不審者と思われたのかもしれない。


『えっと…。』


 何と言えば良いのだろう。


『お尋ねしたいのですが、ここに僕を助けた人がいると言う事で挨拶に伺ったのです。』


「助けられた?そんな報告は聞いていないな。」


『8日位前の話になります。教会まで運んで頂いたようですが、僕も意識が無い状況で、顔が分かりません。神父さんの話だと、ここの学生でナディアと名乗ったそうです。』


「ナディアか。あの子たちか。」


 あの子たちという事は一人では無いのだろう。


「事情が分かったので、呼ぶ事は可能ですが、あいにく私も彼女たちも午前中は講義があります。教官室で待って頂ければお呼びします。如何しますか。」


『どの位待てばよろしいのでしょうか。』


「そうですね。後2時間から3時間位待つ事になります。」


『分かりました。お願いします。』


 そうして、僕はクリスタニア学園の教官室に行く事になった。



■クリスタニア大陸 クリスタニア クリスタニア学園 教官室 アルフォード・ウィンザー


 ここにいる人は教官と言うらしい。クリスタニア学園には1年生から4年生までの生徒が1,000人いる。何れ彼らは戦闘技術を習得して、冒険者や騎士として活躍するとの事だ。


 教える分野は2つに別れているとの事だ。国に使えて戦う兵士は”騎士課程”を卒業する。魔物を討伐して生計をたてたい人は”冒険者課程”を専攻するようだ。


 そういえば、神父さんも言っていたな。この学園は国と冒険者ギルドが共同で設立したと。


 冒険者課程は、4年間のうちに戦いのイロハを叩きこまれるらしい。特に、サバイバル技術は必須のようだ。


 学生の間に魔物と戦うには、ここの許可を得てから冒険者ギルドに仕事を受注する必要があるようだ。だから最初は薬草などの仕事をして経験を積むらしい。


 そうする事で無理をしないように我慢を覚えさせるのだろう。駆け出しの冒険者が早死にしない様に…


 1年生から2年生は学科と多少の実践。3年生からは学科は殆どなくなって、低ランクの依頼を冒険者ギルドから受けて、仲間と熟す実戦が主となるようだ。


 僕と話していた人の名前は”アイオロス・グレイア”という教官で、1年の主任教官という立場らしい。


 主任教官は、全般的に教える事が可能との事だが、本人いわく何でも出来る代わりに突出した才能は無いと謙遜していた。


 そういうアイオロス教官も今は午前の講義の為、教官室には居なくなっている。


 そんなこんなで僕は、教官室で静かに座って待っているのだが、周りの人がチラチラとこちらに牽制球を投げてきた。心なしか居心地が悪い。


 部外者なのだから仕方がない。今更ながら2時間後に出直せば良かったと思った。


 後の祭りというのは言うまでもない。早く時間が過ぎないかな…



■クリスタニア大陸 クリスタニア クリスタニア学園 教官室 フレイヤ・ミッターマイヤー理事長



 教官室に入ると在席していた教官は、私の姿を確認すると起立して礼をしてくる。私は、それに答礼すると見た事もない少年が座りながら頭を下げた。


 はて、誰だったかしら…


 それにしても姿勢の良いたたずまいね。何処となく静かで廻りを警戒しているのが伝わってくる。


 恐らく彼は只者ではない筈だ。敵意があるわけでもないから問題ないか。それともただ緊張しているだけなのかもしれない。


 年は若そうだけど、こういう雰囲気を創り出せる人間はそうはいない。もしかしたら新たな教官でも派遣されてきたのかも。


「こちらにはどのような御用ですか」


『私は、ここの生徒に命を助けられたものです。今日は、そのお礼が出来ればと思って突然んではありますが来たしだいです。』


「そうですか。私は当学園で理事長をしております。フレイヤと申します。」

 

 彼の話を聞いて、私の能力が低下していると思った。私もずいぶんと焼が回ったみたいね。


 生徒に命を救われた者を一流の冒険者だと思ったんだから、実戦から遠ざかると感も鈍るわ…


『私は、アルフォード・ウィンザーと申します。冒険者らしいのですが…』


 最後まで話そうとしたら、フレイヤと名乗る人が話の間に割り込んできた。


「らしいとは…」


『恐らくは先の負傷で記憶を無くしたようです。正直なところ自分では良く分かりません。冒険者ギルドの登録カードが有ったので』


「そうですか。随分とひどい目にあったようですね。生徒たちも講義を受けている最中なので、ここで待っているという事ですか。」


『はい。』


「私の部屋に来ませんか。そこで話しましょう。」


 ウィンザーか。どこかで聞いた名前ね。たしか20年位前に有名な戦士が居たような気がする。まさかね。


『ここは、理事長室ですよね。良いのですか。』


「構いません。理事長といっても名ばかりですからね。そういうポストがあって、交代で殆どの教官は経験するものです。ちなみに教官の殆どはここの学生上がりで、卒業時に教官になるか、冒険者になるかを選べるのよ。」


『そうなんですか。優秀なんでしょうね。』


「まあ、そうね。教官は、生徒に教える立場だから優秀な者しかなれないわ。」


『それではお邪魔します。』


「先程、冒険者登録カードを持っていると言ってらしたけど、もし良かったら見せて貰えますか。」


『え…どうしてですか?』


 随分と警戒しているわね。どうしてかですって、私の感が鈍くなっているか確認なんて話せば怒るかしらね。


 やはり、只者ではないと思うんだけど。体裁だけは整えておくか…



■クリスタニア大陸 クリスタニア クリスタニア学園 理事長室 アルフォード・ウィンザー



 理事長室に招かれた。部屋は個室になっている。個人で使うには広すぎず、狭すぎない部屋だ。


 そこで理事長と今は二人で居る。段々と疲れている自分に気付いた。早く目的の恩人にお礼を言って、今日は退散したい気分だ。



 先程の話だと生徒と教官では、能力の差はあまり無いのかもしれない。この世界の考えを良く理解しないといけない。


 理事長から身分証の提示を求められた。どうしてだろうか。


「これから当学園の生徒に合わせるのに、責任者の立場から身分が証明出来ない者を会わせる訳にはいかないからよ。」


 なるほどと思った。


『分かりました。ギルドにも話しましたが、能力の部分は見せたくありません。それでよろしいですか。』


「見せられるところまでで構わないわ。警戒するのは当たり前よね。」


『警戒!!そんなつもりはありません。能力の部分というより、冒険者の登録カードの存在を初めて知ったのです。』


「そうなの。」


『はい。何て書いてあるかも分からないし、自分より先に見せたくないだけです。他意はありません。』


 そういう事か。冒険者ギルドの調査官も能力を秘匿すると言った時に顔を顰めたのは、あれを警戒という意味で捉えたのかもしれない。誤解がなければ良いけど、少し不安になった。


 それを知ると更に疲れを感じる自分がいた…


「あらそうなの。今後のために忠告と思って聞いてくれる。」


 なんだろうか?


『はい』


「能力の部分をあまり他人に見せない方が良いわ!」


 見せろと言ったり、見せない方が良いと言ったり。訳が分からないな。


「信頼できる仲間ならチームを組む事がある。冒険者の集団は戦士団として契約するの。敵になるかもしれない人間に簡単に能力を見せてはいけないわ。戦うかもしれないもの…」


 何だって…人と戦う?


『……』


「人は名声を欲しがるものよ。強ければ強いほど挑みたくなるものなの。良く覚えておくといいわ。」


『そうなんですか。』


「だから強者は常に戦う事を前提に生活する。だから自分の弱点や技、使える魔法を隠して生活しているわ。彼らが技を使うとき、基本的には一撃必殺よ。」


『一撃必殺…』


「技を知られれば対処される。名のある冒険者なら得意分野が何なのか研究されるわ。でもね、真の強者というのはそれらを含めて、その人の思惑を簡単に超えてくる。」


『分かりました。気を付けます。』


 弱点か。戦う前に情報が必要という事か。


 冒険者ギルドの調査官が行った魔法を心の中で唱える。手が光に包まれると手の甲に魔法陣が現れ、そこに身分証が現れた。それを相手に差し出した。


『これが身分証です。』


 フレイアさんはそれを受け取ると驚いたような表情をした。


「B+ランク。年齢15歳…」



■クリスタニア大陸 クリスタニア クリスタニア学園 教官室 フレイヤ・ミッターマイヤー理事長



 只者ではないとは思ったけど、ここまで大物だとは思わなかったわ。B+ランクには流石に驚いた。


 国賓級の戦士なのだから。ここの生徒に助けられたという事は、他の大陸で怪我をしたのだろう。この辺の敵では彼の足元にも及ばない。


 しかも15歳か。学歴無も気になるけど、波乱万丈の人生を歩まなければこんな偏ったカードにはならない。


『冒険者ギルドの調査官も驚いていました。B+ランクというのは、どの位強いのですか?』


「魔物なら結構なクラスまで対応が可能よ。最強種と互角に戦えるわ。冒険者のランクはS・A・B・C・D・E・F・G・H・Iの10段階で上から3番目。このランクの冒険者は戦士団契約して団体で行動する事が多い。」


『……』


「魔人と称される敵とも勝負が出来るのよ。各ランクには3段階あって、B-・B・B+といった様にね。+ランクになると次のランクはA-を目指して行動する事になるわ。」


 私のランクはD-だ。目の前の少年には敵わない。そう思うと恐怖の為か寒気がした。それでもこのランクの相手と戦う機会が有ればと思うのは、それは私が冒険者だからだろうか。


『そんなに強いのですか。想像が出来ません。現にやられて助けられました。それに記憶を失っています。戦い方を忘れている以上、戦えるとは思えません。』


 そうだと良いと私も思う。でもランクはギルドの思惑に乗った結果の称号であり、強さと直結している訳ではない。いわば貢献度の称号に過ぎない。


 本当の能力部分レベルが戦闘には必要であり、記憶が無くてもそれを覆せると私自身は思っていない。多分、彼自身が危険になれば体が勝手に反応すると思うからだ。


 その時、時報を告げるチャイムが鳴った。どうやら講義が終わったみたいね。


「講義が終わったようね。チーム・ナディアを呼びましょう。」


 そう言って、私は席を立った。別室の教官に彼女たちを呼び出すように指示を出した。

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