第110話 記憶の間(その22:偵察)
■クリスタルの記憶 アルフォード・ウィンザー(9歳)
あれから半年の月日が流れた。僕は9歳になっていた。僕はゼクスさんの力のコントロールを日々の日課にしていた。僕とゼクスさんの差は凄まじいものだった。僕の戦闘能力は、レベルが45になって、40,000になっている。しかし、ゼクスさんの戦闘能力の基本値は100,000だった。つまり、僕が全力で戦った場合は僕の意志で戦える戦闘能力は80,000(僕の力が40,000+ゼクスさんの力が40,000)という事になる。
そうなると、ゼクスさんが単体で戦った方が断然有利だ。まあ、僕がゼクスさんの意識下で戦えば140,000になる訳だから、そうした方が全体的に見て全然良いが、ゼクスさんの意志はそれを望んでいなかった。それにしても僕もレベルは高くなっているはずだが、他の人に比べて能力値が低い。他の人がレベル45の時は55,000は超えるものだと言われた。それはなぜだろうか。僕のクリスタルは深い青色だ。黒の手前だという。そうであれば、能力上昇に有利という事だが、どうしてなのだろうか。
これについては、エリシオさん、エリックさん、ガレオンさんも不思議に思っているようだった。そして、僕の力の中にもう一つ分からない力が存在する。それは灰色の魔女の紋章だ。これにホーリーを与えれば、素性は分かるのだが、グラディさんが調べているとの事だ。そして、グラディさんがクリスタルの状況を確認して思いがけない事を言われた。クリスタルの中に小さい鳳凰の雛である鳳雛がいると言うのだ。
ただ、アルフォードのクリスタルの謎については、もうすぐ分かるという事だ。その理由を僕の母であるローラから聞くという事だった。僕の理解は追い付けない状況だったのかポカーンと口を開けていたのだろう。その疑問にグラディさんは答えてくれた。
「もう直ぐ、ローラの意識と直接話せるようになる。死んでから5年経つとクリスタルに意志が宿るからな。」
殺されてから登録している場所にクリスタルが構成され始め、完成には5年という歳月が必要という事だ。そうすれば、僕の力が弱い理由も分かるという事だったが…。でも、僕はグラディさんの顔を見ていた。この顔は明らかに何かを知っている顔だった…
今日は、イーグル・スピリット・セカンドで、敵基地の偵察に行く事になった。2チームに別れて入口の捜索、そして、その近くに魔人がいれば倒すというものだ。魔人がいれば、念波でチームの合流を待ってから攻撃する。そういう取り決めで行われる。だが、あまり無理はするなという事だ。
敵基地は、我々の基地から100㎞ほど離れた場所にある。飛翔魔法で20分位の場所だ。何時も行っている魔人の狩場に近い所にある。この辺りに基地があり、入口らしいもが1か所確認できている。しかし、魔人の分布がここに集まっている事からこの辺にも入口がある筈だとの事だ。1か所しか攻める場所がないというのは危険だというのだ。退路を断たれると全滅する可能性があるからだ。
そして、魔人があと何体いるか。この辺で倒した魔人は24体を数える。そろそろ戦力が尽きてもおかしくは無いと思うのだが、確証は持てないでいるという事だ。まずは、退路の確保と戦力の把握が任務となる。
僕たちは2手に別れている。僕とガレオンさん、エリシオさんとエリックさんのペアだ。そうするとガレオンが神経をピリピリさせた。僕はそれを感じて警戒を行う。そうすると魔人と何やら禍々しい雰囲気の仮面をした騎士が出てきた。そして、相手も周りを警戒している。つまりは、あの場所に入口があるという事だ。ガレオンさんは念波でエリックさんとエリシオさんと連絡を取った。そして、合流を図るために移動を開始した。
「ガレオンよ。」
「なんです。エリシオさん。」
「お前らしくないの…それとも相手が上手なのか。尾行を許すなど…」
「え…!」
そうすると敵も気付かれた事を悟ったのか。魔人と仮面の騎士が姿を見せた。エリシオさんは、戦うしかない事を悟ったのか念波で指示を出し始める。魔人は4つ持ちで、仮面の騎士は冒険者なのだろう。しかし、なんだこの仮面は…白い無表情の仮面から人の声とは思えない不気味な声が響いてくる。
エリシオさんの指示で、僕とガレオンさんと二人で魔人を相手にする事になった。そして、エリシオさんとエリックさんは仮面の騎士の相手をする。ガレオンさんの指示で僕は戦う事になった。ガレオンさんも失態を演じた事で、それを取り戻すべく戦闘が開始された。
「アルフォードよ。相手は4つ持ちだ。クリスタルが外に出ている。回復に使うか、爆発に使うか分からない。それと灰色クリスタルで暴走されても厄介だ。耐性は分かるな。」
『はい。クリスタルの色から赤(火属性)・茶(土属性)・紫(毒属性)・黒(闇属性)です。』
「そうだ。それとお前にとって、中級魔人との戦闘は初めてになるだろうから無理はするなよ。まあ、お前が戦う事はないと思うがな。」
『分かりました。』
「超越者になって、クリスタルの融合した状態を見せるから戦闘能力を計測しておけよ。」
『了解しました。』
ついに、超越者の次の舞台の戦闘が見れるのか。僕には扱えない力をガレオンさんが見せてくれるのは非常にありがたい事だ。僕は期待に胸が膨らんだ事を覚えている。だけど、その後の出来事の方が僕のとっては衝撃的だった。




