表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
クビになった冴えないおじさんがダンジョン配信を始めたら、なぜか登録者100万人超えてしまった件〜俺、実は最強だったらしい〜  作者: あっかんべー
第1章:異世界と配信とおじさん

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

15/47

第15話 第十層で、番人と対峙した。おじさん、ようやく本気を出した

 整理、というのは三日かかった。


 篠原室長が主導した会議が二回。

早川が資料をまとめ、リオが父の記録と照合した。

サクラが独自ルートで補足情報を集めた。

黒沢がそれを全部さらに政府のデータベースと突き合わせた。


 結果として明らかになったことが三つあった。


 一つ。異世界との境は、現在徐々に不安定化している。

観測されたのは三ヶ月前から。

渋谷ダンジョンを中心に、他の全国のダンジョンでも同様の現象が確認されている。


 二つ。脅迫メールの発信元組織は、《門閉派》と呼ばれる国際的なグループ。「扉が開けば異世界から何かが来る」という思想に基づき、ダンジョンの封鎖を主張している。


 三つ。第十層の《深淵の番人》は、これまで挑んだ全ての冒険者を一撃で撤退させている。唯一の例外は神崎誠一、リオの父だった。


 「父……父は、番人と戦って勝ったんですか?」


 リオが聞いた。


 早川が首を振った。


 「戦ったという記録ではありません。番人が……道を開けた、という記録です…」


 「道を開けた?」


 「番人が自ら退いて、神崎誠一を通した。理由は不明です」


 リオが俺を見た。


 俺も、なんとなくわかる気がした。


 番人は、帰還者を知っていたのかもしれない。


 神崎誠一もまた、帰還者だったから。



 出発当日の朝、ヒナからメッセージが来た。


 《今日、行きますよね?》

 《行きます》

 《第十層?》

 《そうです》

 《……うち、昨日ほとんど眠れなかったです》

 《なぜですか?》

 《なぜって、田中さんが番人と戦うんですよ?》

 《大丈夫ですよ》

 《どこに根拠があるんですか?》

 《今まで全部大丈夫だったので》


 しばらく間があった。


 《……それ、田中さんが言うと説得力あるのが悔しい…っ!》

 《悔しいんですか?》

 《悔しい。でも信じてます。行きましょう!》


 「信じている」という言葉を、朝からもらった。


 コーヒーを飲みながら、悪くないと思った。



 第九層の祈りの間を抜けて、天井の穴の前に立った。


 六人で、上を見上げた。


 白い光が、穴の奥でかすかに揺れていた。


 「……どうやって上がるんですか?」


 キリソウが言った。


 俺は右手を穴に向けた。


 白い光が手に集まり、足元の石畳が、光り始めた。


 そして——浮いた。


 俺の体が、ゆっくりと上昇した。


 「……え」


 ヒナが声を出した。


 「飛んでます。田中さんが飛んでいますっ!?」


 「飛んでいるというより、引き上げられている感じですね」


 「どっちも飛んでることに変わりないですよ!?」


 俺は穴の縁まで上がって、足をついた。


 第十層だった。


 振り返って下を見た。


 「……みなさんも来られますか?」


 リオが右手を穴に向けたら光が集まった。そして、体が浮き始めた。


 「…私も少しだけ、同じことができます」


 「お父さんゆずりなんですね」


 「……そうかもしれません」


 キリソウと早川はリオに引き上げてもらい、ヒナとサクラは俺に引き上げてもらった。


 ヒナが俺の手を掴んで引き上げられた瞬間、小声で言った。


 「……手、温かいですね」


 「光っているので」


 「光ってる手が温かいのかどうかはわからないですけど」


 「そうですね?」


配信開始 — 同接:1,104,882


ガチ勢777:田中さんが飛んだ!!!新能力解禁!!!

エトウ:「飛んでいるというより引き上げられている感じ」の言い訳好きすぎる

匿名A:ヒナちゃんに手を引かれる場面で「手温かい」は卑怯

プロ冒険者X:リオちゃんも同じことできるの父親からの遺伝か 帰還者の血が薄く受け継がれてる

匿名B:いよいよ第十層 番人と会う

キリソウ実況:俺引き上げてもらった側なの複雑だけど仕方ない



 第十層は、今まで見た全ての層と違った。


 壁も床も天井もなかった。


 あったのは——空だった。


 暗い、深い空、星のない夜空。


 その中に、足場だけがあった。


 石造りの足場が、空中に浮かんでいた。


 繋がっていた。

 細い石の橋で、いくつもの足場が連なっている。


 どこまで続いているかわからない。


 「……外みたい」


 ヒナが呟いた。


 「…外ではないですが、外に近い何かだと思います」


 リオが言った。


 「境界に近い空間です。異世界とこちらの世界の、間にある場所」


 「間にある場所、というのは?」


 「どちらでもないけど、どちらでもある。そういう場所だと思います」


 早川がメモを走らせた。


 「……こんな場所が実在するとは…っ!」


 「…実在してますね」


 キリソウが足場を踏みしめた。


 「硬い。ちゃんとあるな…」


 「硬いですね」


 「…あってよかった…。」


 俺は橋の先を見た。


 遠くに、大きな足場があった。


 その上に、いた。


■ 深淵の番人

推定体高:八メートル超 全身黒い霧に覆われている 顔は人型だが目が四つ 手は六本 それぞれに武器を持つが声は出ない ただ、在る


 遠くからでも、その圧がわかった。


 空気が重くなった。


ヒナが息をのんだ。

キリソウが剣を握り直した。

早川が構えた。

サクラがカメラを向けたまま一歩下がった。

リオが静かに立っていた。


 番人が、こちらを見た。


 四つの目が、全部俺に向いた。


 動かなかった。


 俺も動かなかった。


 「……田中さん!」


 早川が静かに言った。


 「神崎誠一のときのように、道を開けてくれる可能性は?」


 「…わかりません」


 「戦いになる可能性は?」


 「そちらの方が高いかもしれません…。」


 「どうしてですか?」


 「神崎誠一さんは帰還者でしたが、俺ほど器が満ちていなかった。番人にとって俺は……未知の存在かもしれません」


 番人が動いた。


 橋を踏み出した。


 一歩ごとに、空間が揺れる。


 「……来ます」


 俺は前に出た。


 「みなさんは後ろにいてください」


 「田中さん——」


 「大丈夫です」


 ヒナが言いかけた。


 俺は振り返らなかった。


 前だけを見た。


 番人が橋を渡ってくる。八メートルの巨体。六本の腕に、それぞれ武器。重さが足場を揺らした。


 俺は右手を前に出した。


 白い光が、これまでで一番強く輝いた。


 番人が止まった。


 四つの目が、俺の右手を見た。


 動かなかった。


 一秒。


 二秒。


 三秒。


 そして、番人の六本の腕が、全部動いた。


 それも同時に。


 六つの武器が、俺に向かって来た。


同接:2,341,004 — コメント速度限界


全員:六本同時!!!!!!!!

ガチ勢777:道を開けてくれなかった 戦闘確定

エトウ:第十層が「境界に近い空間」なの ここが異世界との境目

プロ冒険者X:八メートル六本腕 今まで全員撤退させてきた番人がついに本気を出した

匿名C:田中さんが振り返らずに「大丈夫です」って言ったの なんか鳥肌

ヒナ推し最前線:ヒナちゃんの顔がガチ心配モードになってる

海外勢:SIX WEAPONS AT THE SAME TIME!!! IS TANAKA OKAY???

新規大量:世界中から来てるんだけど田中さんは大丈夫なの??



 六つの武器が俺に向かって来た。


 俺は動かなかった。


 右手の白い光が、広がり、六つの武器が、光の中に吸い込まれて消えた。


 番人が止まった。


 六本の腕が、武器を失って、宙に浮いていた。


 「……え」


 後ろでヒナの声がした。


 番人がまた動いた。


 今度は腕そのものが武器になった。


 六本が同時に俺を囲むように動いた。


 俺は右手を上に向けた。


 白い光が柱になった。


 上に、真っ直ぐ伸びた。


 番人の六本の腕が止まった。


 光の柱に、押さえられた。


 動けなかった。


 俺は番人の顔を見た。


 四つの目が、俺を見ていた。


 今度は違う見方だった。


 戦意ではなかった。


 まるで、確認、のような視線だった。


 お前は何者か?、と問いかけているような。


 俺は右手を下げた。


 光の柱が消えた。


 番人の腕が、自由になった。


 だが、番人は動かなかった。


 ただ、俺を見ていた。


 俺は一歩、前に出た。


 番人が一歩、下がった。


 もう一歩。


 また一歩、下がった。


 「……」


 俺はゆっくり歩いた。


 番人はゆっくり退いた。


 橋の上を、俺が歩き、番人が退く。


 大きな足場まで来た。


 番人が端まで退いた。


 そして、そのまま跪いた。


 八メートルの巨体が、足場の上で膝をついた。


 六本の腕が、体の脇に揃った。


 四つの目が、俯いた。


 静寂。


 後ろから、ヒナの声がした。


 「……跪いたっ!?」


 「そうですね」


 「番人が、田中さんに跪いたっ!?」


 「そうなりましたね」


 「これって……」


 「…王を認識したんだと思います」


 リオが静かに言った。


 「番人は門の守り手です。王が来るまで、何者も通さない。ただし、王が来たとき——」


 「道を開ける?」


 「はい」


 番人の背後に、扉があった。


 今まで見た扉とも違う。


 石でも鉄でもなかった。


 光だった。


 白い光で出来た、巨大な扉。


 その向こうから、風が来た。


 草木の匂い。花の匂い。


 第五層で感じたものと同じで今度はずっと強かった。


 俺の体が、その匂いを知っていた。


 帰ってきた、という感覚が初めて、胸の中に生まれた。


 匂いの中に、記憶があった。

 広い草原。空の色は紫がかった青。

 俺は誰かと並んで走っていた。

 子供だった。

 隣の子供の銀髪が、風に揺れていた。

 笑い声がした。

 その声が——懐かしかった。

 当たり前のように、懐かしかった。

 意識が戻った。


 立っていた。


 光の扉が、目の前にあった。


 「田中さん」


 ヒナが俺の隣に来た。


 「今日、開けますか?」


 俺は扉を見た。


 開けられる。


 そう確信があった。


 だが——


 「…今日は、開けません」


 ヒナが俺を見た。


 「なぜですか?」


 「開ければ向こうへ行ける。でも、戻ってこられるかどうかが、まだわかっていない」


 「……」


 「俺は戻ってくると約束しました。だから準備をしてから開けます」


 ヒナが少し間を置いた。


 「……田中さんって、ちゃんと約束守る人なんですね」


 「守るつもりはあります」


 「つもり、かい」


 「守りますよ」


 「…よし」


 ヒナがまた「よし」と言った。


 今回は意味がわかった気がした。


 安心した、という意味だろう。


 俺は扉に右手を軽く触れた。


 温かかった。


 「——また来ます」


 扉に向かって言った。


 向こうに届くかどうかはわからなかった。


 でも、言いたかった。


 光の扉が、かすかに揺れた。


 まるで、頷いたように。



【神回確定】深淵の番人が田中武志に跪いた件、全世界が震えてる


1 名無しさん : 八メートルの番人が跪いたの 今まで全員撤退させてきた存在が王を認めた瞬間


2 名無しさん : 六本同時攻撃を全部吸収した後に光の柱で六本腕を封じるのが凄すぎて言葉が出ない


3 名無しさん : 「今日は開けません、戻ってくると約束したから」 これが最高だった。強さより約束を優先するおじさん


4 名無しさん : 扉に「また来ます」って言ったの 向こうに人がいるとわかってて言ってるのが


5 名無しさん : 記憶フラッシュで子供時代の銀髪エルフとの回想が来た 幼馴染だったんじゃないか


6 名無しさん : ヒナちゃんの「よし」の意味がわかったって書いてた田中さん 少し人の心を理解してきてる


7 名無しさん : 扉が頷くように揺れたのが全話通して一番鳥肌だった


8 名無しさん : 登録者1400万突破 次回いよいよ準備編か 扉が開く日が近い

面白いと思ったら、コメント、フォロー、評価をお願いいたします!

とても、励みになります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ