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神宿り  作者:
第6章
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11


「…ごめんなさい」

 創樹はそっと呟いた。

 辺りは薄暗く、寒さも増した。

 創樹は辺りを見回す。

 朽ちた木々。

 草花…。

 大きな庭にあった、手入れの行き届いた植物が皆、朽ち果て、無残な姿をさらしていた。

『どうした? ソウ』

 声を掛けられ、顔を上げると、いつも屈託の無い明るい表情を浮かべているザットが、心配げにしている。

 創樹は何でもない、と、小さな笑みを浮かべて首を振った。

(ユン)は、機械の中に居るの…?』

 峰春がすがるような瞳でシグを見上げる。

『わからない。調べるしかないだろう。……創樹、何か解ったかい?』

『……技術者を全部あたってはみましたが、皆、宿神を吸い取ればいい、という機械の性質しか考えておらず、その後の影響や、吸い取った宿神のエネルギーを取り出すにはどうしたらいいかなど、考えている技術者は皆無でした…』

 シグに問われ、創樹が申し訳なさそうに告げる。

『……長門さんに連絡してみるか…』

 シグがふと、思いついたように告げた。

『あのおっちゃん? 何で?』

 ザットが首を傾げる。

『彼は、俺たちの中の宿神を見ることが出来たじゃないか。創樹だけが特別で、宿神が複数だということも見抜いた。彼なら何か判るかもしれない』

『そうよ! 雲の力が元の力じゃないってことも気付いたわ! 電話して!』

 峰春が勢い込んでシグに詰め寄る。

 シグは頷き、携帯電話で番号を出し、創樹に渡した。

 創樹は長門に電話を掛け、協力を要請する。

「え…? 本当に…?」

 それから、目を丸くして三人を見た。

『何だって?』

『長門さんが先程S市に着いたと。どうも気になって、やはり来てみたそうです。機械の件は、出来るかどうかわからないが、見てみるそうです』

 シグに問われて創樹は応え、峰春の表情が少し明るくなった。

『すぐ迎え行って、機械のトコ行こう!』

 峰春が勢い込んで告げる。

 シグが頷き、創樹が場所を聞いてから電話を切った。

『ああ。〝入院〟させられていた人たちの邪魂も祓って、家に帰さないとな…』



 数分後、四人は長門と共にあの機械の元に来ていた。

『俺たちは先に〝入院患者〟を祓ってくるよ。梁と創樹は長門さんと機械の方を頼む』

 シグに言われ、二人は頷く。

『〝入院患者〟のいる場所はこの子たちが知ってます。ついでに記憶の修正もこの子たちがやってくれると思います』

 創樹は幻と現を示した。

「お願いね」

 創樹が幻と現を撫でると、

「みゃう」

「………」

 白猫は鳴き、黒猫はそっぽを向いた。

『頼むぜ、ユメ、ウツツ!』

 ザットがニッと笑う。

『助かるよ。頼む』

 シグも猫たちに微笑む。

 仕方ない、とばかりに黒猫が立ち上がり、白猫と連れ立って歩き出す。

 そのあとをシグとザットが追った。

『長門さん、こっち。何か判ります? 雲は…?』

 峰春が真剣な瞳で長門を見つめる。長門が創樹を見た。

「この機械です。何か判りますか…? 雲は…?」

 創樹が長門と峰春の瞳を受け、先ほどの峰春の言葉を訳す。

 長門はひとつ頷き、目の前の機械をじっと見る。

「…………この場の空気が邪念でよどんでいて…少し見づらいですね…」

 気合を入れるように長門は頬をたたく。

「…飛天」

 創樹が呟くと、真紅の鳥が現れ、室内をぐるっと回った。

 光が注ぎ、室内の空気が清浄なものとなる。

 目を丸くしていた長門だが、やがて、笑みを浮かべた。

「これなら集中できそうです」

 長門はそう言うと、その場にあぐらをかいた。創樹は飛天を戻す。

 長門のまとう空気が変わった。

 長門がまぶたを閉ざす。

 不意に、辺りの空気がしん…と、張り詰める。

 長門の唇が何かを言うが、峰春にも、創樹にも、その内容を理解できない。

 不意にカッと長門の目が見開かれた。

 何気ない様子で眺めていた峰春がよろけそうになり、慌てて踏みとどまる。

 何も映していないかのような、長門の瞳。全てを見透かすような…。

 もう、これ以上は緊張に耐え切れない…

 そう、峰春が思った瞬間、長門はまぶたを閉ざし、息をついた。

『長門さん…?』

 不安げに峰春が声をかける。

 いつの間に戻ってきていたのか、シグとザットも三人に歩み寄る。

 創樹の元に駆け寄った猫たちは、そのまま創樹にじゃれつき、消えた。

「……昨日、梁さんや神代さんを見た時に、エネルギーの塊のようなものが見えると、私は言いましたね? シグさんの言葉を借りれば、力の核が…」

 長門の言葉を創樹は訳す。皆は頷く。

「その力の核が、この機械の中にあるのが見えました。それに、昨日見たオサキ狐様の力の片鱗も…」

『ホント!? 雲も!?』

 長門の言葉を創樹が訳すと、峰春が長門に飛びかかるように詰め寄る。

「え、ええ。確かに」

 長門は気圧されながら、それでも微笑み、頷く。

「ただ、機械と神秘的なものと言いますか…そういったものは互いに合わないので…。もう少し機械の外側を剥がせば、はっきりと見えるのかも知れませんが…」

 長門は申し訳なさそうに告げる。

 創樹がそれを訳すと、シグは思案するように機械を眺めた。

『…その力の核は、どの辺りにあるんです?』

 それから長門に問う。

「恐らく、機械のこの辺りの、中央付近ですね」

 長門は機械のスイッチから一番遠い場所を示した。

『では、こちら側を破壊しても、問題ありませんか?』

 シグは機械の半分を示した。

「ええ。それはそうだと思いますが…」

 長門が怪訝そうに頷く。

『破壊は得意だぜ』

 途端、生き生きとザットが言った。

『この辺はいいってことだよな』

 ザットは位置を確認する。

『じゃあ、俺がこっち側からするから、ザットはそっち頼む』

 シグは何でも無いことのように告げ、機械の反対側に回り込んだ。

 シグとザットで、機械を挟み込む形だ。

 創樹は長門に離れているように告げ、自分も峰春と共に離れる。長門も「まさかな」と言う表情ながら、二人のそばへ。

『行くぜ?』

 ザットは尋ねる。ザットは機械に手を押し当てて。シグは少々距離を取って手をかざしている。

『ああ』

 シグが頷いたのを確認すると、

『スリー・ツー・ワン…ゼロッ!!』

 ザットは秒読みし、ゼロと同時に、衝撃波が炸裂した。

 轟音。

 二人は跳んで機械から離れる。

 重々しい音を立て、機械が半分、崩れ去った。

 長門が表情を引きつらせる。峰春はあきれた瞳で見やり、創樹は静かに見守っていた。

『機械相手だと力をセーブしなくて良いから気持ちいいぜ』

 ザットが楽しそうに告げる。

『多少はセーブしろ。距離とっておいて正解だったぜ。誰が機械突き抜ける勢いでやれって言った』

 シグが苦笑した。

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