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タイムリミット。
もう、あとはない。
あと一回、跳べるか跳べないか…と言う状態だと、創樹は承知していた。
危険を冒せば、周囲のエネルギーを奪いつくしてしまう。
見境無く、制御のしようもなく…
選択肢はふたつ。
捕まるか、跳ぶか。
捕まったとて、それから…?
みすみす力を奪われ、暴虐に甘んじるのか…。
暴虐に甘んじてはならぬ。
私だけの問題ではない。
ならば、選ぶべきは…
DEAD or ALIVE
よけようもなく、腕にはめていた機械の影響を無効化する装置が壊される。
体中に広がる苦痛。
砕牙が戦ってくれている。
なるべく、エネルギーを使わないように気をつかいながら。
跳ぶしかあるまい。
いや、それ以前に跳べるのか…?
周囲のエネルギーを奪いつくす、己の体質…。
…私は人間だ。
創樹は弱々しく抗う。
翔波が、跳ぶことをさけ、衝撃波を走ってかわす。
生か、死か…。
確率は二分の一。
生きる努力をしよう。
己だけの、問題ではない。
…願わくは、周囲を巻き添えにしないように…。
叶わぬなら、死を受け入れよう。
……果たしてどちらが最良か…。
私には…わからない…。
己の体質が、死を受け入れるのか…
わからない…。
決めるのは偶然と気まぐれな天…。
私は神ではないのだから。
偶然と必然に身をゆだねるのも悪くない…。
できることなら…
死なないように。
殺さないように。
背後に気配を感じた。
来る。
奴が。
どうやら私は、どこまでもあがき続けねばならぬようだ。
彼らと共に、生きるために…。
DEAD or ALIVE
生か死か。
いずれにしても、どうか彼らが救われるように…
可能性に賭けよう。
翔波は、跳んだ。
創樹の意思の、示す方へ。
創樹がそう、望むから…
たどりついた機械室。
創樹の苦痛が増す。
創樹は苦痛に耐え、何とか腕を動かした。
機械が止まる。
苦痛が、消える。
本間が現れた。
すぐに機械のスイッチが入れられる。
ほんの数秒で、機械は動き出す。
だが、創樹は苦痛のした、確かに微笑んだ。
本間が眉根を寄せつつ、手を上げる。
創樹の笑みは消えない。
次の瞬間、本間は吹き飛ばされていた。
「!!」
本間は壁から身を起こす。
『ありがとう、創樹』
創樹が稼ぎたかったのは、ほんの数秒の機械の停止時間。
その数秒に気づき、シグならロードを出して、状況を打破できると思ったから。
己の期待を裏切らず、現れたシグに創樹は微笑む。
本間の傷が一瞬で癒えていることに、シグは気づいた。
シグと本間が、同時に衝撃波を放つ。
壁が衝撃波にえぐられる。
創樹の周囲を、砕牙が守る。
『シグ、ソウ…うおっ』
現れたザットが、衝撃波にまともにぶつかりかけ、峰春を連れ、跳ぶ。
シグの衝撃波が、動きの鈍った本間に当たる。
飛ばされた本間だが、すぐに起き上がる。
『おりゃっ』
だが、その一瞬に本間のそばに転がった何かを、本能的に何か察したのか、とっさにザットがスライディングして奪い、次の瞬間、ザットに向けられる衝撃波をシグの放った衝撃波が砕く。
本間が跳ぶ。
ザットも跳び、創樹の元へ。
『大丈夫か? えっと、これ…何だ?』
創樹を気遣いつつ、ザットは創樹に見せる。
創樹の震える指が伸び、ひとつのボタンを押した。
機械が止まる。息苦しさが、消える。
創樹の表情も、ほんの少し和らぐ。
『これがリモコンか!』
ザットは目をみはり、次の瞬間素早く跳ぶと、うずくまったままの峰春の肩に触れ、再び跳ぶ。
今まで峰春がいた場所を、衝撃波がえぐった。
『壊せ!』
シグが声をあげ、頷いたザットは、リモコンを粉々に破壊した。
虎の咆哮が、空気を引き裂く。皆の視線が創樹に向いて…
『逃げて…』
静まり返った瞬間、弱々しい創樹の声が告げた。
もう、限界だ…。
身体が勝手に…エネルギーを求め始めている。
周囲の空気が、突然枯渇したように感じられる。体の力が、抜けるような…。シグとザットは、ハッと顔を見合わせる。
『ハック!』
ザットがハックを出す。
ハックは、本間に飛びかかる。
その間にシグは、一瞬で掌に浮かび上がらせた光を、創樹に触れさせる。
創樹の暴走は、ひとまず収まった。応急処置に過ぎないことは、シグにも判っていた。
本間が跳ぶ。
ザットが追う。
シグは、峰春と創樹に触れ、跳んだ。
創樹に触れた瞬間、エネルギーが吸い取られたのがシグにもわかった。ずっと触れていると危ないということも。一瞬で、かなりのエネルギーを消費した。
庭園。
翔波がそばの木に歩み寄り、創樹の身体を木に触れさせる。
木が、一瞬で朽ちた。
シグが衝撃波を放つ。その頬に、汗が伝う。
本間は身をよじり、辛うじてそれをかわした。
本間が駆け出す。
もう、跳べないのだ。
『ハック』
ザットが、本間を示す。
ふと、シグは何かが神経に引っ掛かり、顔を上げる。
『戻せ!』
とっさにザットが、ハックを戻す。
と、次の瞬間、本間の手足がはじけた。
どくどくと血が流れる。だが、血はすぐに止まる。
『跳べっ!』
シグは言い放ち、創樹と峰春に触れ、跳ぶ。ザットも、跳んだ。
銃弾が、本間一人となった空間に注いだーーー。




