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またやってしまった…
この前のページ、最初の投稿で、早まって投稿してしまい、あとで追加の文章加えてます。
投稿後、すぐに読んでくださった方は、お手数ですが前のページの最後の方、ご確認お願いしますm(_ _)m
動物図鑑を開く時、必ずと言って良いほど始めに開くページがあった。
別にそのページを見たい訳ではない。むしろ、忌避していた。なのに何故か、気がつけばいつもそのページの動物に見入っていた。
自然とそのページに開き癖がつくほどに、いつもいつも、毎回図鑑を手に取るたびに、そのページを見ているのだ。
親子で書かれたその動物。
別に憶えたい訳でもないのに、自分はこの動物の注釈に書かれた体長や生息地域、生態を空で口ずさめる。
じっと見入っている己に気づいた時、いつも、深い嫌悪感を覚えた。
なのに何故か、また次に動物図鑑を手に取った時には、そのページを開いている。
それならばと、図書館に置いてある動物図鑑を見て居たときも、いつの間にか、自分はその動物のページを見つけ出し、見入っていた。
だから、動物図鑑が嫌いになった。
深く深く嫌悪する動物の載っている、動物図鑑が。
愛情に満ちた眼差しが気に入らなかった。
仲良さげな親子が気に入らなかった。
己に向けられる気遣う瞳が気に入らない。
今すぐ消してしまいたくなる。
それなのに…その存在はこの身から決して消えることはない。
我慢の限界に達し、キレる。そうすれば、ドアが吹き飛び、人が吹き飛び、辺りが破壊される。
だが、その力すらも、その動物がいるからだと思うとおぞましくなる。
何もかもが嫌いだった。
何もかもが気に入らなかった。
「気味の悪い子」
汚らわしいものでもみるような女の瞳。
自分がこの女の腹から生まれたのだと思うと、おぞましくなる。
「あんたのせいで何もかも滅茶苦茶だわ」
「こいつさえいなければ…」
たたきつけられる言葉。殴られても、蹴られても、すぐにその傷は癒えた。殴った方が殴った手の痛みを忘れる前に、自分の傷は癒えてしまった。
「化け物め」
気味の悪い瞳で見られるのも、慣れていた。この低能な生き物が自分の父親だと思うのも嫌だった。
飛び出して自分を守ろうと立ちはだかる動物。気遣う瞳が向けられる。殴りかかる拳の前に飛び出す動物。その動物が、気に入らなかった。こんな動物居なければいい。そう思うと、動物は消えた。
「化け物を出すんじゃない」
羽交い絞めにして殴られる。でも、次の瞬間痛みはすーっと引いていく。
無神経な言葉に、浴びせられる視線に、潰されそうだった。
壊されそうだった。
………壊されるくらいなら、壊シテシマエ…。
自分の中から、もう一人の自分が言った。
何故、自分はこんな力を持って生まれてしまったのか…。
何故、疎まれればならないのか…。
考えて、考えて、それでも答えは見つからなくて、
何を考えているかさえ、わからなくって…
考えるのを、放棄した。
もう、そんなこと、関係ない…。
低俗な生き物に触れられているのが嫌だ。
ある時、嫌悪が限界に達し、腕を振り払った。
羽交い絞めにしていた女も、自分を殴っていた男も、吹き飛んでいた。
自分の力の使い道に気づいた瞬間だった。
それ以来、幾度殴られても、少し力を解放すれば男も女も吹き飛んだ。やがて二人は、自分を殴らなくなった。
自分も二人に興味をなくした。
同じ空間に生活していても、会話する必要もなかった。この男と女はただ奴隷のように冷蔵庫や棚に食料を補充する。それだけでいい。その程度の能力しかないのから。
幼い頃から大して変わらなかった感情。
ただ…冷ややかな心に徐々に降り積もる苛立ち。
憎しみという言葉も知らない頃から、徐々に降り積もってきた感情。
道路で擦れ違う人間、己の周りで生活する人間、己の目の前を横切る犬猫、自分の周りで生きるあらゆる物が不快だった。
あらゆる物が目障りだった。
みんな消えてしまえばいい。
みんな、なくなってしまえばいい。
ただ、そう思っていた。
友達など、いらなかった。
低俗な人種と交わるほど、自分は堕ちていない。
自分の周りの生き物たちは、ただ、自分に仕えていればそれでいい。
それが、分相応だ。
本間はふっと我に返る。
力をそばで感じた。
奴らが戻ってきたか…。
本間はにやりと唇を歪めた。
今度はいいようにはさせない。
だが、次の瞬間本間は眉根を寄せる。力の方向が、先ほど己が出てきた場所に程近い。
本間は跳び、奥の院に戻った。
いつもなら、ひざまずく人間たちがいる。だが、今は姿が見えず、散り散りにうずくまっている。
「何事だ」
本間は不機嫌な声を発した。
途端、びくりと空気が帯電し、周囲に男たちが集まり、ひざまずく。
「猫が大群でおしよせ、邸内は大混乱となっておりまして…」
「猫などどこにいる?」
「は。先ほど引き上げたようでして…」
ぶるぶると震えながら男は報告する。
本間は瞳を鋭くし、辺りを探った。
「……なるほど」
本間が怒りを含んだ声でつぶやいた。次の瞬間、机がはじけとび、震えていた男に破片があたる。男はその場に崩れ落ちた。他の人間がひぃっと息を呑むが、本間はそんなことよりも肩についた木屑の方が気にくわない、とばかりに軽く払った。
「まんまとやられおって…」
低能な生き物たちには大して期待していなかった。
不意に、扉がたたかれる。
本間が扉に手を伸ばすと、扉が勢い良く開いた。
外にいた男が扉にぶつかったようだ。
だが、その男は微塵も表情を変えず、一礼した。
「理事会よりのご伝言で御座います。本間様を信頼しているが故、こちらのことはお任せし、それ相応の報酬もご用意致しましたのに、本間様がついていながらのこたびの不手際、一体どういうおつもりか、と。状況をお知らせ願いたく参じて御座います」
慇懃無礼なほど丁重な男に、本間は『黒田の犬が…』と内心軽蔑しつつ、
「隠れ潜んでいた虫けらどもがようやく動き始めただけのこと。これより駆除に入ると伝えろ」
「は。くれぐれもお間違いのなきようお祈り申し上げます」
男は見本のような一礼すると部屋を出て行った。
男の足音が遠ざかる。と、次の瞬間、扉がはじけ飛ぶ。
クツクツと笑いを漏らす本間に、室内にいた男たちは身を震わせ、ただ固まっていた。
「機械の出力を最大に上げろ。邸内全てに緊急体制だ。指示を出す。各主任をここへ」
続けて事務的に淡々と言った本間。室内は一瞬静まり返る。
バンッという音と共に部屋の椅子がはじけ飛んだ。
「その耳は飾りか! 行け」
本間の声に、ハッと我に返った男たちは一斉に返事をして、逃げるように部屋を出て行った。
本間は息苦しさを感じる。機械の出力を最大にしたためだろう。腕時計型の制御装置を手にしようとし、それが無いことに気づいた。
「………やつらか…」
本間は苛立たしげにつぶやく。
それから、鬼を集中させていた場所に跳ぶ。
数箇所見回り、本間は確信した。鬼が消えている場所が…。
「こそこそと動きやがって…」
本間ははき捨て、部屋に戻った。
集まり始めていた男たちがびくりとする。集まるものから順に、本間は次々と指示を出した。
いよいよ、出てきました。




