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書店に入るとすぐにザットと峰春を見つけることができた。大声で言い合いをしているので、かなり目立つ。
呆れたようにシグがため息をついた。そして創樹と顔を見合わせ、肩をすくめる。創樹は微苦笑を浮かべた。
二人のそばへ行き、シグが言い合いを止める。
『シグ、ちょっと聞いてくれよ、こいつ…』
『聞いて頂戴。ザットレディンったら、信じられないのよ…』
『ストップ』
二人揃って再び口を開きかけるが、シグが有無を言わさず二人を止めた。
『選んだのか?』
『決まらないんだよ。こいつが…』
『何ですって!? あんたが…』
『はいはい。結局何も出来てないわけか…』
シグの言葉に三度舌戦が始まりそうになったが、シグはあきれた調子で止め、並んだ本に軽く目を走らせ、いくつかを手にとって眺めると、すぐに一冊を選んだ。
『ほら、行くぞ。支払いして来い』
『わかったよ…』
『でも、何で観光ガイドなのよ?』
『観光客を装ったが目立たないだろう? 東洋人の梁はまだしも、俺たちは目立ちすぎる。明日の夜もあのログハウスに泊まるってのも危険だし、どこか適当な宿も必要だ。ガイドには宿の紹介もあるし…』
シグが肩をすくめる。途端…
『観光するの? オンセン入りたい!』
『俺は食い倒れツアーがいい!』
峰春が主張し、負けじとザットも声を上げる。
『あのなぁ…お前ら…』
『いいでしょ? どうせだからついでにオンセンのあるホテルにしよ!』
『観光しようぜ! いいじゃん、いいじゃん!!』
二人に声を揃えられ、シグは深いため息をついた。
『はいはい。じゃあ、少しだけな…。もちろん、策を練りながらな』
歓声を上げる二人にシグはため息をついて、じっと眺めていた創樹にしかめっ面をみせる。創樹はクスッと笑った。
支払いを二人に任せ、シグと創樹はコピー機の元へ。コピーをしていると、二人がやって来た。
『……………何を買った?』
頭痛をこらえるような表情でシグは問う。明らかに袋にはガイドブック以外のものが…。
『カメラ!』
『観光に必要でしょ? デジカメ持ってきてないし』
こんな時ばかりは息もぴったりに、ザットと峰春は言った。
『二つ買う必要はないだろう…。目的を忘れるな。観光はついでだ…』
やれやれ、と、シグはため息をついた。
淡い苦笑で皆を見守っていた創樹の腕が引かれる。
『ちょっとソウジュと店内見てるわ。何も買わないからいいでしょ?』
峰春はそう告げ、シグの返事も待たずに創樹を連れて移動する。
創樹はただ、連れられるままに峰春についていった。
『お願い、ソウジュ。あの女の店員さんに、まともに着られる服が置いてある店、聞いてくれない?』
峰春に中国語で頼まれ、創樹は峰春の行動の意味を理解する。クスッと笑って、創樹は頷いた。
本を並べ直していた店員に、声を掛ける。
すぐにコピーを終えたシグとザットがやって来る。意図を察した二人の視線が痛いので、さすがに峰春も軽く場所だけ聞いて早々に切り上げ、店を出た。
人目のないところへ移動し、シグが創樹の肩に手を置いた。
跳ぶ。
毎度のことながら、シグの跳ぶ場所に合わせて。
貸しログハウスの玄関に着いた。




