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神宿り  作者:
第1章
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4

1章は、シーンがばらけていて、読みにくいかもしれません…

今後につながるピースをばらまいてる感じなので…

 笑いあう男子生徒たちが、雪崩(なだれ)うつように、がやがやと飛びだしてくる。

 高校の正門前は、この時間帯、いつにもましてにぎやかだ。


「久保田っ!! 何日無断欠席してんだ、お前はっ! 生徒指導室に来いっっ!!」

「や~だよっ。じゃァなー」

 教師の怒鳴り声に追われながら、遼介は下校中の生徒の間をぬって駆けてゆく。


 校門から大分離れたところまで一気に駆け抜けた遼介は、もう追いつかれることはないだろうと立ちどまり、大きく息をついた。

 歩調を変え、のんびり歩きだそうとした時。


 ポンッとその肩に誰かが手を置いた。

 ぎくりと身をすくめつつ振り返る。


「………何だ、哲哉か…。脅かすなよ」

 ホッと息をついて、自分の顔を見て笑っている男に毒づいた。

「お前のクラスの担任ブッチー、お前の名前叫びながら校門のトコうろうろしてたぜ? いいのか? 戻らなくて」

「冗っ談じゃねぇ。誰が戻るか。生徒指導室なんか行ったら俺、ブッチーとタカ先とツラつき合わせてみっちり説教だぜ。相手が綺麗なお姉ェ様ならともかく」

 担任と学年主任の名を出し、遼介はぼやいた。


「学校サボりまくる遼介が悪いんだろが。どうだ? 軽井沢は過ごしやすかったか?」

「っだ~、やっぱあの噂バラまいたのお前か! くだんねぇこと言ってんじゃねぇよ。俺が例の廃ビルで時間潰してんの知ってるくせに!」

「あそこは俺とお前の別荘だろうが」

「最近行ってねぇくせ、よく言うぜ。お陰でブッチーに問い詰められるし…」

「別荘はたまにしか行かないから別荘って言うんだぜ? お前もそろそろ落ち着けよ」

「学校でのみ優等生のふりしてる哲哉にだけは言われたくねェ。話大きくしたのお前だろ」

 遼介の口調に哲哉は吹き出した。


「確かにな…。お前は要領が悪いんだよ、昔から。お前、顔だけはいいからイイ子ちゃんぶって適当に振舞ってりゃセンセーからの評判上がるし、ぜってー今よりモテるぜ?」

「その『だけ』を妙に強調すんなよ。俺は顔しかとりえがねェのか」

「あぁ、あと逃げ足? 運動神経いいもんなぁ…」

「それ褒めてねぇだろ。ったく」

 遠慮なく軽口を叩く哲哉に、遼介は拳を入れるまねをした。


 成績優秀でそつのない哲哉と、劣等生で悪目立ちばかりする遼介は幼馴染で、親友だった。

正反対にも見える二人だが実にそりが合い、互いにずけずけと言いたいことを言い合う。


「それより今日、博たちとメシ食ってカラオケ行かねェか? あと、港南高校にいる博のダチが、女友達数人連れて来るんだと。メンツ足んねぇんだよ」

 哲哉に誘われ、遼介は眉根にしわを寄せた。


「ヤダね。面倒」

「そう言わずに。お前に似合わず純情だから、こういう時にでも彼女作っとけよ。ただでさえ男子校で出会いないしな。社会復帰、社会復帰。今日、暇だろ?」

「特に予定はねぇけど…」

「だったらいいじゃん。けってー」

 半ば強引に己を誘う哲哉の、密かな気遣いが、ちょっとだけ嬉しかった。


*       *       *


「助けて、神父様っ!」

 夕べの祈りの時間、教会に一人の女性が飛び込んできた。


「神父様、子どもが…子どもが急に暴れだして…。助けて下さいっ!」

 ずいぶんと取り乱した様子に、神父が彼女へ歩み寄る。


「子どもが、暴れる…?」

「そうです! 突然、何かがとり憑いたみたいに…」

「もしや……」

 神父は一瞬何かを考える。


「…わかりました。すぐに参りましょう。……シスター松野、ここをお願いします」

 まず女性に声をかけてから、神父は修道女(シスター)を振り返る。

 慌てた様子でシスターも返事をした。


「私もご一緒します」

 シスター松野の隣にいた四〇代半ばくらいのシスターが、神父の元へやってきた。

 神父がひとつ頷くと、心得たそのシスターは神父の荷物を急いでとりに行く。


「行きましょう。ご案内いただけますか?」

 そのシスターが戻ってくるとすぐに、神父は女性に声をかける。

 言葉の途中で、女性は教会のドアへと向かっていた。




「ぐるるるるる」としか表現しようのないうなり声に続き、「ぐぅあぁぁおぉぉぉ」と獣のが家中に響く。

 女性の案内でその部屋に踏み入った神父とシスターは、なるほど、女性の言葉を再認識した。


「神父様、優梨江ゆりえが…娘が…っ!!」

 女性の夫だろう。部屋に入って来た神父を見て、男が声を上げた。

 その腕の中には、五・六歳くらいの女の子。


 男の腕から抜けだそうともがく、その小さな体を、必死で拘束している。

 大の男に押さえこまれてなお、女の子はもがくことをやめない。

 いや、すでにその力も形相(ぎょうそう)も、幼子のものではなかった。


 神父の姿を認めると、女の子はますますひどく暴れ、父親の腕を逃れようとした。

 何かに憑かれたようなその様子は、現代の根底にある科学信奉を否定するような光景だった。

 室内は荒れ、机や椅子が転がり、カーテンは引き裂かれ、小物類はことごとく破壊されている。


「まさか…こんなことが本当に……」

 シスターが呆然と呟いたその言葉には、何かしらの含みがあった。

「……こんな身近にまで魔の手がのびていようとは…」

 神父もシスターと同じ含みをもってつぶやく。


「神父様っ! 娘は一体…っ…」

 つかみかからんばかりの勢いで、母親が神父につめ寄る。


「………最近、このような症状で教会に助けを求められるケースが多いんです。原因は不明。病院に行っても効果はなく…。…信じがたいことかと思いますが、悪霊(あくりょう)の仕業ではないかと、最後のよりどころとして教会に来られるんです」


「まさか、娘が悪霊にとり憑かれている、などと…? 馬鹿な…。大昔の人間が信じるならともかく、そんなこと…」

 神父の発言に父親は娘を必死に拘束したまま、はき捨てる。


「信じられませんか?」

 神父の言葉をかき消すように咆哮(ほうこう)が響き、父親の頬が引きつった。

 非常識な事態は、確かに目の前で起きていた。


「神父様、では娘は悪霊に…? 助かるんですかっ!? まさかこのままなんて…」

 母親はすがるように神父を見つめ、シスターも固唾(かたず)をのんで神父の言葉を待つ。


「いずれにせよ、私は神父としてできることをします」

 重々しい口調で、神父は幼子を見つめ、言った。

「………悪魔祓いの儀式をしてみましょう」

 神父の言葉に、シスターが頷いた。


*       *       *


量が少ない気がしたので、連続投稿

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