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神宿り  作者:
第2章
32/103

15

「優梨江、そろそろお時間よ?」

「ママ、もう準備できてるよ。パパも早く!」

 優梨江はいそいそと玄関へ駆ける。


「はいはい。じゃあ、行きましょうか」

「優梨江はせっかちだなぁ」

 岡崎夫妻はうきうきとしている娘に笑みを浮かべた。

「うん。だってパパも一緒に教会に行くことってあんまりないもの」

 嬉しそうに優梨江は言って、靴を履いた。

 母親と手をつなぎ、スキップをするように優梨江は歩く。


「今日、そーじゅお姉ちゃん、いるかな?」

 ふと、優梨江は首を傾げた。

「さぁ? どうだろうね?」

「会えるといいわね」

「うん!」

 両親の言葉に、優梨江は元気に頷く。

 楽しげに会話をしながら行くと、教会まで、すぐに着く。

 門をくぐった時、獣の咆哮(ほうこう)が響いた。


 びくりと優梨江が立ちすくむ。

「あ…」

 優梨江はよぎった不安感に、思わず後ずさる。

 岡崎夫妻も、顔を見合わせた。


「ダメェッ!!」

 三人の前を行っていた親子が、驚いて教会の扉に手をかけようとしたのを、優梨江の声がさえぎった。


 その瞬間、扉を突き抜けた何かが、前を歩いていた男の子の中に吸い込まれるように消えた。

 途端、男の子の顔つきが変わる。

 獣の顔で、隣に居た母親に襲い掛かった。

「まさとっ!?」

 地面に倒れた母親が驚愕する。

 と、その瞬間、もうひとつ教会から飛び出した何かがその母親の中に…。

 母親の顔つきも、息子と変わらぬものに…。


「あ…あ…」

 うなり声をあげ、四つん這いでじりじりと近寄ってくる親子の姿を見た時、岡崎夫妻の頭にがよぎった。


「いや…私をとっちゃいやっ!!」

 優梨江が叫ぶ。

 己の言っている意味も解らずに。

 優梨江はくるりと身をひるがえすと、駆け出した。

「「優梨江っ!?」」

 両親が振り返った瞬間、獣の表情の親子が飛びかかってくる。


「うあっ」

「きゃぁ!!」

 両親の悲鳴も聞こえない様子で、優梨江は必死に駆けた。

(そーじゅお姉ちゃんのところに行かなきゃ。そーじゅお姉ちゃんのところに行かなきゃ…)

 優梨江の頭には、それしかなかった。



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