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「優梨江、そろそろお時間よ?」
「ママ、もう準備できてるよ。パパも早く!」
優梨江はいそいそと玄関へ駆ける。
「はいはい。じゃあ、行きましょうか」
「優梨江はせっかちだなぁ」
岡崎夫妻はうきうきとしている娘に笑みを浮かべた。
「うん。だってパパも一緒に教会に行くことってあんまりないもの」
嬉しそうに優梨江は言って、靴を履いた。
母親と手をつなぎ、スキップをするように優梨江は歩く。
「今日、そーじゅお姉ちゃん、いるかな?」
ふと、優梨江は首を傾げた。
「さぁ? どうだろうね?」
「会えるといいわね」
「うん!」
両親の言葉に、優梨江は元気に頷く。
楽しげに会話をしながら行くと、教会まで、すぐに着く。
門をくぐった時、獣の咆哮が響いた。
びくりと優梨江が立ちすくむ。
「あ…」
優梨江はよぎった不安感に、思わず後ずさる。
岡崎夫妻も、顔を見合わせた。
「ダメェッ!!」
三人の前を行っていた親子が、驚いて教会の扉に手をかけようとしたのを、優梨江の声がさえぎった。
その瞬間、扉を突き抜けた何かが、前を歩いていた男の子の中に吸い込まれるように消えた。
途端、男の子の顔つきが変わる。
獣の顔で、隣に居た母親に襲い掛かった。
「まさとっ!?」
地面に倒れた母親が驚愕する。
と、その瞬間、もうひとつ教会から飛び出した何かがその母親の中に…。
母親の顔つきも、息子と変わらぬものに…。
「あ…あ…」
うなり声をあげ、四つん這いでじりじりと近寄ってくる親子の姿を見た時、岡崎夫妻の頭にがよぎった。
「いや…私をとっちゃいやっ!!」
優梨江が叫ぶ。
己の言っている意味も解らずに。
優梨江はくるりと身をひるがえすと、駆け出した。
「「優梨江っ!?」」
両親が振り返った瞬間、獣の表情の親子が飛びかかってくる。
「うあっ」
「きゃぁ!!」
両親の悲鳴も聞こえない様子で、優梨江は必死に駆けた。
(そーじゅお姉ちゃんのところに行かなきゃ。そーじゅお姉ちゃんのところに行かなきゃ…)
優梨江の頭には、それしかなかった。




