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創樹の新たな出会いです。
創樹は再び穏やかに哲哉を見る。
哲哉は、創樹の口許が微かな笑みをかたどり、深い瞳は底知れぬ何かを秘め、彼女が言いようのない不思議な表情をうっすらと浮かべていることに気づいた。
白金色の巨大な虎が、創樹を促すように擦り寄る。創樹は頷いた。
一瞬だけ虎に鋭い眼光を向けられ、哲哉は体をこわばらせる。
「幻、現」
呟く創樹に、二匹の猫が鳴いた。
ステージからおり、逃げ惑う客の一人一人から記憶を抜いていた女が首をめぐらし、創樹を見る。
創樹の肩と、虎の背にいた猫の、三色の瞳が交錯してから、ホール内の人間を睥睨する。
「今度は何を…」
言いかけた哲哉は、白猫の金と翠玉緑色の瞳と視線が交わり、言葉を失くした。
二匹の猫の体を中心に、光がはじけた。
おとずれたのは、静寂。
立ち上がり騒いでいた人々。記憶を抜いて回っていた女から逃げていた人々。呆然とステージを眺めていた人々。そして哲哉も、床に崩れ落ちる。
ただ一人、倒れることなく創樹を見つめている人間がいた。
「………ありがとう。幻、現」
創樹は二匹の猫に言って、ステージからふわりと飛び降りた。虎の背から飛び降りた黒猫が、その肩に飛び移る。
虎は創樹と瞳を交わし――消えた。
じっと創樹から目を離さなかった女が、身振りでついて来いと合図し、先に立って歩き出した。
創樹は無言で後に従う。
「……翔波…」
女が扉に手をかける時、創樹が呟いた。女はチラッと創樹を見やり、そのまま扉を押し開く。
今まで一般客や生徒たちが、いくら押しても引いても開かなかった扉が、すんなりと開いた。
女は不思議そうな様子もなく、外に出る。
創樹も続いて外に出て、扉を閉めた。ホールの中から、人々が動き始める音がする。
女が創樹の腕に触れる。
――――跳んだ…。
次の瞬間、二人が立っていたのは、どこかの建物の屋上。
『……ここは…?』
創樹が女に尋ねる。
『……っ…!! 北京語が話せるのっ!?』
女が目を丸くした。
創樹が首を左右に振る。
『…私ではなく、砕牙が』
創樹は女の使う言葉で告げた。
『サイガ…?』
『虎』
『……まぁいいわ。言葉が通じるのはありがたいわね。………ここは…場所はどうでもいいでしょ。私たちには関係ないはずよ。まぁとにかく、私たち以外、誰も入って来れないわ』
確かにこの屋上に、二人以外の気配はない。
『でも…本題に入る前に、あと二人、呼びたいんだけど…?』
創樹はあっさり女に頷く。女はコートのポケットから携帯電話を取り出し、電話をかける。
「Come back!」
それだけ言うと、電話を切る。
「What’s up?」
ちょうど一〇秒が過ぎた時、突然男の声がした。
いつの間にか、二人の男が立っている。
彼らは創樹の姿に気づいた。一人が口笛を吹き、もう一人は創樹の肩の上にいる猫二匹を訝しげに見てから、女に問いかけるような視線を向ける。
『英語は話せる? 彼らとは英語で話すの』
女はひとまずその視線を受け流し、創樹に問う。
『……多少…』
創樹が答えた。




