表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神宿り  作者:
第1章
16/103

15

いよいよ本格的に動き出しました。

「ただいま」

「お帰りなさ~い、パパ」

 部屋の中からいつものように飛び出してきた幼い娘を見て、男はおやっという顔をした。正確に言えば、娘の肩に乗っている猫と、娘に引っ張られて出てきた少女に対する反応である。


「…お邪魔しています」

 少女が会釈した。

「あのね、そーじゅお姉ちゃんと、ゆめとうつつ。教会で会ったの」

 部屋に入りながら優梨江が説明する。


「お帰りなさい。優梨江ったら創樹ちゃんと離れるのは嫌だ、って、帰る時に猫質とってだだこねるのよ。だから夕飯の時間までお引止めしちゃって…」

 キッチンから顔を出して、優梨江の母親がクスクスと笑った。

 岡崎家の主人は出張帰りで、日曜出勤のかわりに、明日が休みだと創樹は聞いていた。


「さ、ご飯にしましょ」

 優梨江の母親はそういってキッチンに引っ込む。

「しかし、それは災難だったなぁ…。君かい? 人質ならぬ猫質にとられたのは…」

 ダイニングの椅子に腰かけながら、我がもの顔で部屋を横切る黒猫に声をかける。

 黒猫は一声鳴くと、何かを示した。

「ん? ……あぁ、白い毛の君の方か…」

「みゅ」

 白猫が返事をする。


 やがてテーブルに皿が並べられ、食事になった。猫たちは優梨江の手で再びミルクとチーズを与えられている。

 食事中も変わらず創樹の口数は少なかったが、優梨江はちっとも気にせず、創樹の分までしゃべっていた。


「それでね、いっぱいお歌を歌ったの。でも、そーじゅお姉ちゃんの歌が、一番綺麗だったなぁ…」

「ええ。とっても綺麗な歌声だった。それに、創樹ちゃんがいてくれて助かったわ。今日は子どもたちが退屈して騒ぎ出すこともなかったし、お母さんたちとたくさんおしゃべりできたのよ」

 談笑の絶えない食事が終わり、創樹は後片付けを手伝った。


 皿を食器棚に仕舞いながら、優梨江の母は、ちらっとリビングで猫と遊ぶ優梨江を見た。

「ありがとう、創樹ちゃん」

 片付けを終えると、改まった様子で創樹に礼を言う。

「あの子…最近元気がなかったの。びくびくしたり、急に泣き出したり…」

「…………………」

「家にも居たがらないことがあって…。でも、創樹ちゃんに会ってからは、あの子、ずっと笑ってる…。本当に、ありがとう」

 丁寧に母親は告げた。


「…さ、行きましょ」

 それから創樹を促し、リビングへ。

「お姉ちゃん、今日はお泊りして? ゆりえと一緒のベッドで寝よう?」

 リビングに創樹が入ってくるなり、優梨江が抱きついた。


「優梨江、無理を言ってはだめだよ。お姉ちゃんは明日、学校があるんだし…」

 父親が優しく諭す。優梨江はかたくなに首を振り、白猫を抱き上げた。

 黒猫は猫質にされるのはごめんだ、とばかりに飛びのいている。


「お姉ちゃん、ゆりえと一緒に居てくれなきゃやだ…」

 娘のわがままに困った顔を見合わせる両親に構わず、創樹は膝をつき、優梨江の頭を撫でる。

「残念だけど優梨江ちゃん、私はそろそろ帰らなくては…」

 創樹の言葉に、優梨江の顔がクシャッとゆがむ。


「でも、大丈夫。帰る前に、優梨江ちゃんの怖いもの、全部追い払うから」

 泣き出しそうだった優梨江の顔に、光がさした。

「ホント…?」

 創樹は優梨江に頷いてみせる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ