14
「今回の件で身に染みました…」
エレオノーラはものすごく不本意そうな顔をした。
しおらしくしている時こそ、要注意だ。リンとガイは身構える。
「あの至上の天使リリアーヌを私の傍に置き続けるには、この世界はあまりにも危険が多すぎるわ」
「……へ、へぇ?」
「…それで、結婚なの?あんまり変わらなくない?」
ここまでの流れは辛うじて分からなくもない。思考回路も今までより普通だ、…多分。
「リリアーヌは精霊界に嫁入りします」
「え、精霊界ってそもそも人が行ける場所なのか?」
エレオノーラと接触が多いと、どうも価値観がおかしくなるのが問題だ。
一応、確認してみる。
「『王』と名の付く精霊が二体もいて、出来ないことないでしょう」
「それ、やらせたって言わない?」
「黙りなさい」
だんだんと目が据わってきたエレオノーラの殺気を感じて、二人は口を閉じた。
「リリアーヌの幸せと安全を最優先にすることを条件に、件の庭師とのことを認めましたわ」
「全然、納得してねぇ顔だけど?」
「年に四回の里帰りも認めさせました!」
なんだか面倒な小姑感が溢れ出ている。
しかし、断腸の思いだと拳を握るエレオノーラには突っ込みたくない。
諦めた顔でリンとガイは肩をすくめた。
「好きな人と一緒になれるんだから、リリアーヌ様も嬉しいんじゃねぇの?」
「そうだよ、『お姉さま、大好き!』って言ってくれそうじゃん」
決定事項に何を言ってもしょうがない。
怒りで肩を震わせる上司に、適当な慰めを適当に投げつけた。
エレオノーラの目が恨みがましく二人を見据える。だが、思い直したようにひとつ咳払いをして姿勢を正す。
「つきましては、リリアーヌの幸せが完遂いたしましたのでギルドは解散致します」
……。
「…は?」
「…え?」
唐突な宣言は今に始まったことではないが、今回ばかりは内容が上滑りした。
「『天球の灯』はリリアーヌのための組織ですわ」
エレオノーラが改めてその存在意義に言及する。
「いや、そうだけど!」
「えぇっ、いきなり解雇は酷くない!? はっ!聖女の言ってた大変なことってこれのこと!?」
「いや、大変なことは他にあっただろう…」
動揺しまくるリンとガイにクロヴィスが口を挟む。
「で、うちにはいらないのでパッケージ売りしてみましたところ、買い手が付きました」
「早ぇ!要らなくなったものの処分が早すぎる!」
「出荷前の子牛だって、もう少し情緒を持って売られるよ!」
キャンキャンと叫ぶリンとガイを尻目に、エレオノーラがクロヴィスに視線を投げた。
「うちで買い取る…。俺の私財だから給料は保証できんが…」
「拠点は貸し出しますので、家賃は頂きますよ」
侯爵家のギルドから王太子直属の魔導士になる。
それはそれで、二人がピタリと口を揃える。
「やだよ、面倒くせぇ」
「依頼があるなら聞いてあげるけど…」
あまりにはっきりと拒否されてクロヴィスは苦笑した。
「では、俺の御用聞きで頼む」
「それはそれで、面倒そうだけどな」
「うーん。まぁ、殿下なら良いか」
二人の魔導士はいつものように二人で顔を見合わせて笑った。
結局、変わらない日常が続いていくことが一番だと。
――後にクロヴィスは賢王として歴史を刻む。
それを支えた二人の魔導士のことは歴史書には残されていない。
これでこのシリーズは完結です。
決めていた最後まで何とか形にできて満足です。
また文章力が上がったころに王太子直属になった二人の話を書きたいです。
お気に入りの二人だったので少しでも気に入ってくれた方がいると嬉しいです。
ありがとうございました!




