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ストーリー設計:⑧伏線は作者の自己満足なのか?

 作品の完成度を高めるために、伏線を組み込んだ方がいい、という意見はよく目にします。


 ですが、それは本当なのか? と常々疑問に思っていました。今回は、伏線をテーマに考えてみたいと思います。


 伏線の定義は、「後の展開で重要な意味を持つ出来事やヒントを、あらかじめ前のほうでさりげなくほのめかしておく表現技法」とします。



■ ありがちな伏線の例


 まず一つ、例を考えてみます。


 ユート(主人公)が、レオン(敵軍の大将)と一騎打ちをするシーンです。



 レオンが一直線に斬りかかって来る。


 キィン。


 剣と剣がぶつかり合う音が、戦場に響き渡る。さすがにレオンは強い。レオンの剣を何とか押し返そうと、ユートは両腕に力を込める。


 そんなとき、レオンはユートの目元の傷をチラリと見た。その瞬間、レオンの目が驚愕で見開かれる。


「お前は、まさか……」


 ユートは必死にレオンの剣を押し返しながら、続く言葉を待った。しかし、その続きを聞くことは叶わない。


 遠くから火の玉が二人を目がけて襲い掛かって来る。誰の魔法だろうか。そんなことを考える間もなく、二人は後ろに飛びのいて、火の玉を避けた。



 架空の設定ですが、一見すると違和感はないように思います。


 レオンは何かに勘づきましたがそれをユートに伝えることはできず、最終決戦の直前で「二人は実は生き別れの兄弟だった」という事実が明らかになる、というような展開です。


 このシーンは、その展開を匂わすための伏線と言えます。


 ただ、この描写単体としての評価は、「絶対ダメというわけではないが、あまりよくない」と思っています。



■ 伏線を無理やり仕込んでいないか


 このシーンは、 レオンは「真実に勘づき、ユートにそれを伝えたい」、ユートは「レオンの話を聞きたい」という状況です。


 それを、「終盤で明らかになる予定の事実なので、作者都合で会話を中断させている」というのがこの描写です。


 一方でたとえば、「ユートと斬り合った後、優勢な状況にもかかわらず敵軍が退却した」、「その後しばらくして、レオンが敵軍内で反乱を起こした」などであれば、まだ理解ができます。


 これは伏線が行動と結びついているからで、主人公視点(読者視点)で「なぜレオンがそのような行動を取ったのか」という謎があるため考察もはかどります。


 ですが、先に挙げた描写は「伏線のための伏線」になってしまっており、キャラの行動が二の次になってしまっている、と言えます。



■ 連載作品における伏線の是非


 さらに、これが一日一回更新の連載作品である、とした場合、伏線の有効性はさらに下がります。


 一日に一話しか更新されないのですから、伏線を仕込んだ話から、30話後に伏線が回収される場合、それは一か月も後のことになります。


 Web小説であれば、多くの読者は複数の作品を並行して読んでいると思います。また、読者には仕事、学業の時間だってあります。


 そんな読者が、一か月も前に書いた伏線――「物語の途中でたった一回、軽く触れた程度の描写」を覚えていて、最新話で回収されて「ああ、あれはそういうことだったのか」と感心する可能性がどれだけあるでしょうか。


  完結後、最初から読み返すときに、そういう楽しみ方をしてもらうのはうれしいことです。ですが、リアルタイムで読んでいてそのような気づき、感動してもらうことを期待するのはどうなのだろうか、と思うわけです。


 であれば、数話で完結する規模の伏線ならともかく、数十話にまたがった大規模な伏線は連載作品向きではない、と考えられます。



■ 伏線は入れるべきかどうか


 私の現時点での結論は、伏線は「入っていた方が面白くなる可能性は上がる」が、「狙って仕込むものではない」というものです。


 まず、キャラの内面を深堀して、もれなく描写するということ。


 「このキャラなら、この事実を知った時に誰にも知られないように隠すだろう」、「このキャラなら、主人公にだけ分かるような手がかりを残すはずだ」など、キャラの内面を追いかければ、そのキャラがしそうな行動が浮かび上がってきます。それを、サボらず描写します。


 その結果、終盤で真実が明らかになった時、「すべてのキャラの行動がつながる」。これが私の理想とするところです。



【今回のまとめ】

・伏線は作品に必須ではない

・キャラの描写を犠牲にしてまで伏線を仕込む必要はない

・連載小説の場合、伏線回収までにかかる時間を考慮する

・伏線にこだわらず、キャラの行動の描写を優先する(それが結果的に伏線になっていた、というのがベスト)


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