5 二回目の探索
次回は大体一週間後ぐらいに更新します。
二回目の探索だ。
まだ敵とは遭遇していない。
今は前回通った道をなぞるように進んでいる。目的地は前回俺が死んだ場所だ。さっき文字が書いてあった場所を通過したから、あともう少ししたら前回死んだ場所に到着するはずだ。
無事に装備を回収できればいいんだけど。
……もしかしたら、自分の死体と出くわすかもしれない。生き返ったとはいえ死体がなくなっている保証はどこにもないし、むしろそのまま放置されている可能性のほうが高いんじゃなかろうか。
そもそも死んでから生き返るまでに一体どれくらいの時間が経過しているんだろうか。死んですぐに生き返ったのか、それとも数日立ってから生き返ったのか。
もし数日経過しているのなら、腐ってるだろうなぁ。
どちらにせよ、自分の死体なんて見たくもない。もし腐ってたりしたら絶対に吐く自信がある。
ショップで買ったものいきなり現れるなんて事が起きたんだから、死体も忽然と消えてたりしないかな……。
そんな事を考えながら足を進めていく。特に何か起こったりもせずに、無事に曲がり角まで到着した。この先に自分の死体があるかもしれない。でも、装備もこの先にあるんだ。自分の死体を見ることになるかもしれないが、仕方ないと割り切った。
そう思いつつも、正直言って怖いものは怖いし、嫌なものは嫌だ。まるでホラー映画を見るときみたいな気分で、曲がり角から顔半分を出して先を覗いた。
死体は……無さそうだな。少なくとも目に見える範囲には無い。良かった……。
他にも特に何か動くものが見えたりもしないし、音もしない。敵は居ないなさそうだ。
あたり一面に乾いた血がべっとりと着いている。かなりの量の出血だったようだ。
まああれだけ痛かったんだ。足が取れててたんじゃないかと思う。
まあそれはおいておいて、ここには装備を回収しに来たんだ。
確かこっちの方に…………あった。
良かった。装備は無事だ。少し傷がついてはいるものの、使用に支障が出るほどじゃない。問題なく使える。
中のものはどうかな……何だこの匂い。
開けた瞬間に臭ってきたこの匂いは……カビか?
……まさか、嘘だろ。
大事な食料にカビが生えてる。それも半数以上だ。
なんでこんなことに……。
カビが生えたものはもう食べられないから、もったいないけど捨てるしか無い。
……ん? 今何か光ったような……。
懐中電灯の光をもう一度光った方向へとかざしてみた。
――――ゴーレムの残骸の中から、何かが光を反射している。これは……なんだ? 指輪か?
何か装飾が付いているわけでもなく、かといってなにかの部品と言うには小さすぎる。
……もしかして、これが敵が落とす装備ってやつか。
指にはめてみたが、特に何か起きたような気もしない。
まあ、拾っといても損はないか……高く売れるかもしれないし。
それにしても、この鉱山はやっぱり不気味だ。暗いのもあるけど、一番の理由はあまりにも静かすぎることだ。
……まあ音で敵に気づけるから、この静寂はむしろありがたいんだろうけど、それでも怖いものは怖い。
あれは……ゴーレムか。最初に戦ったやつと同じような見た目だ。
今度こそ失敗しないようにしないと。ここは入り口から随分と離れている。
死んだら装備を回収できないかもしれない。
まだこちらに気づいていない。このまま背後から近づけば…………。
あれ、なんだこれ。手の震えが止まらない。息が苦しい。
手汗がすごいし、暑くもないのに汗が吹き出る。足が石のように重い。
もしかしてあの敵がなんかしたのか。あのゴーレムを前にした途端、なんだかとても怖くなってきた。前回の死んだときの状況が頭にちらつく。
この迷宮だと、敵に出会うことは少ない。いままで結構歩いてきても、まだ合計で二回しか遭遇してないのがその証拠だ。だからここで倒しておかないと、ポイントが稼げないんだ。
だったらなおのこと倒さないとなのに、体が動かない。
クソ! 動け! 動けよ!
震える手をなんとか押さえつけて、足を何とか前に踏み出そうとした。
だが、本能がそれを拒否する。
その音に気がついたのか、ゴーレムが一瞬こちらを振り向いたような気がした。
それだけで、俺が逃げ出すのには十分な理由だった。
○
どれくらい逃げてきただろうか。とにかく脇目もふらずに走ってきたから、いまの居場所がどこかわからない。今は少し開けた階段の踊り場のような場所に座っている。逃げる途中、何回かゴーレムとすれ違った。もしかしてここには生き物は居ないのかもしれない。
はぁ……何やってんだか、俺は。
敵をどんどん倒して行かないとポイントが稼げないっていうのに、逃げ出してどうするんだ。
でも、なぜだかとても怖かった。
もしかして、最初に殺されたのがトラウマになってるんだろうか。
…………多分そうだろうな。そんな気がする。
これからどうしよう。帰ろうにも部屋に繋がってる扉までの道はわからない。
とりあえず、走って来た方向を引き返してみるか?
でもそれだとまたゴーレムと出会うかもしれないし、あまりしたくはないな。
それとも前に進む?
どちらも、敵と遭遇する確率は同じだ。
違いは、後退するのならほんの少しだけだがが道が分かっていること。
それを頼りに帰れるかもしれないことだ。
前進するにしても、道がわからない。
だが、この鉱山の迷宮はとにかく入り組んでいる。どこかしらの分岐が扉への道に繋がっていたなんて事があるかもしれない。
敵がいないってことは無いだろうし……よし。決めた。
ここは来た道を戻って、記憶を頼りに戻ろう。
そのほうが、先がどうなってるか分からない道を進むよりまだ生きて帰れる確率が高い。
◯
こっちであってるかな……不安になってきた。
がむしゃらに走って通り抜けてたから、記憶を頼りに戻れるほど覚えてない。
戻っている途中、またゴーレムと出会うことが何回かあった。
それで気がついたのだが、あいつらはこっちが何かしない限り動かない。
まあ流石に近くで大きな音を立てたら動き出すだろうけど、普通に歩いた時に出る音ぐらいじゃ動かない。
というか、動かなかった。
記憶を頼りになんとか道を引き返していた時に、ゴーレムと曲がり角で鉢合わせた時があった。
やばいと思ってすぐに逃げようとしたんだけど、ゴーレムは全く動いていなかった。
正直言うと、その事実が分かって少し安心している。だけども、ゴーレムのことが完全にトラウマになってしまっている。ポイントを稼ぐ上でかなり致命的だ。
物を売ることもできるとはチュートリアルも言っていたけど、売れそうなものがないしなぁ……。
何か売れそうなものを探すしか無いか。
ここはかなり荒れているとはいえ鉱山なんだし、掘ったら鉱石とか売れそうなものが出てきたりとかしないかな。
とはいえ試してみようにも道具がないしな……。
次に来た時に試してみるか。
まあ、無事に帰れるかどうかは分からないんだけど……。
はぁ……このまま扉が見つからなかったらどうしよう。そもそも、ゴーレムと戦えないんじゃポイントも稼げないし、ポイントが稼げなかったら迷宮を攻略することもできやしない。
たとえ扉が見つかったとしてもお先真っ暗じゃないのか。
迷宮の最深部にあるお宝を手に入れるなんて夢のまた夢だし、そもそもほんとに帰れるのか?
ずっとこの迷宮で、しわくちゃのお爺さんになっても出られないままなんて嫌だ。
父さんや母さんも今頃心配してるだろうな。
もう二度と会えないかもしれないなんてことが起こるなんて、今まで考えても見なかった。
……いや、多少は考えたことはあったけど、それが実際に起こるなんて予想できるわけないだろ。
しかもこんな形でなんて。
…………だめだ。暗いことばっかり考えてしまう。
こういうときはなにか明るいことを考えるんだ。
例えば…………例えば……何だろうか。思いつかなかった。
だめだな。考えようとしても、どんどん悪い方へ考えてしまう。
今はもう、何も考えずにただ歩こう。そのほうがいい。
歩いていればそのうち扉も見つかるさ。




