1 最初の目覚め
初投稿です
気がつくと、いつの間にか見知らぬ部屋で立ち尽くしていた。
「なんだ……ここ」
確か俺は学校から家に帰る途中だった……はずだ。
少し記憶があやふやで自信がないが、多分そのはずだ。
ここはどこだろうか。
壁には窓はない。出入り口はかなり古そうな木製の扉一つ。壁は……コンクリートか何かだろう。
大体……6畳ほどの大きさの、小さな部屋だ。
床には無造作にパソコンとキーボード、マウス、ディスプレイといったものが置かれていて、それが部屋を照らしている。
どうやら、照明が無いらしい。かなり暗いな。
……なにやらパソコンになにか表示されている。
画面を見るとそこにはこう書いてあった。
〈チュートリアルを開始しますか?〉
他には何も表示されていない。ただ文字があるだけだ。
チュートリアル……って、ゲームとかでの最初の説明のことだよな。
だとするとこれはゲームか何かが起動されているのだろうか。それにしては飾りっ気がないな。文字以外に何も表示されていない。
クリックしてみようとも思ったが、とりあえずそのままにしておいた。
今はまず、ここがどこなのか知ることのほうが重要だ。
そう思い、扉の方へと歩いて向かった。
ドアノブに手をかけて回し、押す。だが、開かない
今度は反対に引いてみる。だが、こちらもまた動かなかった。
鍵穴があるというわけでもない。ドアに何かストッパーがかかっているわけでもない。
まるで溶接されているかのように、ピクリとも動かなかった。
部屋から出られない。
これはもしかして……閉じ込められた?
一体どうして……誰かに監禁された? いつの間にここに閉じ込められたんだ?
……そうだ。
今思いついたことだが、もしかしたら扉の向こうに誰かいるかもしれない。
例えば――俺のことをここに監禁した奴、まあ奴らかもしれないけど、とにかく誰かが向こう側で俺のことを見張ってるかもしれない。
それにもし誰かに声が届けば、助けてもらえる。
そう思い、早速扉の反対側へ向かって叫んだ。
「おい! 誰かいないのか!」
返事はない。
そのまま話し続ける。
「なんで俺をこんな部屋に閉じ込めたんだ。理由を教えてくれ! もし俺がなにかあんたに対して悪いことをしたんだったら謝るから!」
これもまた、返事はなかった。
「頼む! ここから出してくれ! 誰か聞こえてないのか!」
腹の奥から、絶叫と言っていいほど大きな声を出し、扉を強く叩いた。
だが、ただ拳に痛みが帰ってくるだけだった。
今度は扉に耳をあて、なにか音がしないか注意深く意識を傾ける。
が、なんの音もしない。
誰も居ない……のか。
そうだ。警察に通報を……って、今は携帯を持って無かったんだ。
一体何が目的で俺をこんな何もない所に閉じ込めたんだだろうか。
ドッキリにしては少し過激だし、誰かに監禁されたにしてはパソコンなんてものが置いてあるのは不自然だ。
部屋をざっと見た感じ、隠しカメラや盗聴器のたぐいは無さそうだ。素人が探しても見つかるものじゃないのかもしれないけど、もし無かったとしたらますます理由が分からない。
普通こういう監禁って身代金目当てか、閉じ込められた人の反応を楽しむものじゃないのか? 監視するものが見当たらないってどういうことだ。
それに、他にもおかしいところがある。
最初にこの部屋にいると気がついたとき、俺は立っていた。
意識がない状態で俺をこの部屋に運んで来たとしても、そんな状態の人を立たせたままにするなんて事など不可能だろう。
意識が途絶えたような感覚も無かった。
本当に気づいたときには、それこそまばたきの瞬間にはここに立っていた。
これは夢か……?
――いや、これは夢ではない。それは確かだ。扉を叩いた時の拳の痛みがまだ少し残っているし、何より足の裏から石の冷たい感触がはっきりとわかる。
なにか、普通ではない。いや、そもそも監禁自体普通起こり得ないことだけど、それでも何かおかしい。現実では起こり得ないような異常なことが起きているような気がする。
どうするか……助けが来るかどうか分からないが、もしもこのまま助けが来なかったら俺はここで死ぬことになる。
食べ物や水が無いから、生きられる時間はおそらく3日、持っても1週間ってところか。
どうしよう。
なにか無いのか。なにか――――――
そうだ、パソコンを使えば外と連絡できるかもしれない。
そして、助けを呼ぶこともできるはずだ。
藁にもすがる思いで、俺はパソコンの前に座った。
ディスプレイには、相変わらず『チュートリアルを開始しますか?』という簡素な一文が表示されている。
それ以外には何も表示されていない。
そもそもこれは何なんだろうか。一体何に対してのチュートリアルなのか検討もつかない。
これを押してしまうと、事態が更に悪い方へと進んでしまうような嫌な予感がする。だが、現状これ以外動かせそうなものもないしな……。
とりあえずこれは一旦置いておいて、他に何か、助けを呼べるものが無いかどうか調べてみよう。
マウスカーソルを画面の四方八方に動かし、クリックしてみる。
だが、特に変化は起こらない。
そもそもこれは本当にパソコンなのか?
今まで部屋のことばかりに気を取られて気が付かなかったが、パソコンの本体には何も接続されていないように見える。それどころか換気口やネジ穴もない、見た目は完全にただの箱だ。
だが、注意深く耳を澄ますと、わずかにだが駆動音が聞こえてきた。電源もなしにどうやって動いているのかは検討もつかないけど、やはりこれはパソコンなんだろう。
……やっぱりクリックすべきだろうか。
ここの部屋にパソコン以外なにもないということは、これを押すことは俺をここに閉じ込めたやつの望みなんだろう。それでこのまま押してしまったらその犯人の筋書き通りになってしまう。
だが現状、これ以外に何かアクションを起こせそうなものは他に何もない。
このまま何もしないで座りほうけていても事態は何も変わらないのも事実だ。
今はこれを押すべきだ。
そう結論づけて、俺は恐る恐る、ゆっくりとだが力強くマウスをクリックした。




