★chapter37 「差入保証金」って何!?
ある日の部活の帰り道のこと…
「…そう言えば、煉先輩は進路はどう考えているんですか?」
「…美琴はいつも唐突な質問をするな…進路か……この前の遠征で若林先生ともそんな話をしていたけど、俺は大学に行こうと思ってる」
「もし大学に行ったら、一人暮らしをするんですか?」
「いやいや。大学と行っても、自宅から通うことのできる、指定校推薦で入学できる場所を考えているよ」
「そうなんですね!」
「一人暮らしなんてしようもんなら、大学の学費の他に、月々の家賃や水道光熱費、それ以前に家を借りるのに敷金が必要になるからな…俺の家に、そこまで俺のために用意できる金はないと思うし…」
「確かにそうですね………『敷金』で思い出しましたけど、確か敷金は家を引き払う時に戻ってくるお金でしたよねぇ」
「詳しいな。美琴も将来一人暮らしを考えているのか!?」
「(…私は、将来先輩と一緒に…)」
「ん!どうした!?」
「いえ、何でもありません。この前の簿記の授業の時に、敷金の話が出てきたもので…」
「ああ。そういうことか」
「大体、家もお店も不動産屋さんから借りる時って、敷金として家賃2か月分と、前家賃で家賃の1か月分、合計家賃の3か月分は最低かかるって、戸山先生が言ってました!」
「そうだな。例えば1か月の家賃が\100,000の店舗で、敷金2か月分、前家賃1か月分が必要な店舗を契約し、それを当座預金から振り込んで支払った場合は…
(借方(左側))差入保証金 200,000
支払家賃 100,000
/
(貸方(右側))当座預金 300,000
という仕訳になるな」
「敷金部分を『差入保証金』にするのがミソですよねぇ」
「そうだな。でも、この敷金だけど、実際引き払う際は、ほとんど戻ってこないのが通例なんだ」
「…どうしてですか?」
「そもそも敷金には、物件から引き払う際に原状復帰させるための費用が含まれているんだ。どんなに大切に使っても、経年劣化は避けられないわけで、引き払う際にはハウスクリーニング等の処理が必要になる。その費用を敷金から捻出し、それでも余った場合に戻ってくるものなんだ」
「…だとしたら、建物や備品の減価償却みたく、強制的にこの保証金も値段を下げる処理をした方が良いんじゃないですか?」
「さすが美琴。その通りさ。故に、差入保証金として処理した敷金は、簿記上では決算で※償却処理を行うことになっているぞ」※日商簿記2級出題範囲
「(…もし、私と先輩の住む家を借りる時は………)」
「??どうした美琴?さっきからぼーっとすることが多くないか!?」
「………家を借りた時は、2人で大事に使う必要があるってことですね!」
「???」
「!!いえ、何でもありません!さぁ、早く駅に急ぎましょう!!」
…
chapter38 に続く