★chapter33 「電子記録債権・債務」って何!?
ある日の部活の帰り道のこと…
「だから~その代金は前返したって!」
「い~え。返してもらっていないわよ!」
”スタスタスタスタ…”
「…どうしたんだ?言い争いなんかして…(まぁ、この二人の言い争いは今に始まった話じゃないか…)」
「煉先輩!」
「部長!聞いてくださいよ!美琴が、この前買い物にいった時に用立てたお金を返していないって言うんです!」
「違うんです先輩!そのお金は、この前間違いなく返したんですよぉ~」
「まぁまぁ落ち着いて二人とも!何か、記録には残していないのか?」
「それが…」
「…残していません…」
「親しい仲程、こういうことが起こるとなかなか解決できないものだよな…」
「だから、ビジネスの世界でも『電子記録債権・債務』っていうのができたんですよねぇ」
「電子記録債権?」
「美琴は、まだ簿記で勉強していないの?」
「うん…でも、何となく意味は分かるような気がする…煉先輩的な言い方をすれば、電子的に記録された債権ってことでしょ!?債権って、お金をもらえる権利のことだから…売掛金や貸付金を電子的に記録したもののこと?」
「ほぼ正解ね。『電子記録債権・債務』は、手形や売掛金・買掛金を電子化したもののことで、電子記録を専門の登録機関で行うことで完了するの」
「貸付金や借入金も電子記録を行えるけど、簿記上では『お金の貸し借り』と『経営に伴う金銭移動』は別々に考えることになっているんだ。だから、お金の貸し借りで発生する貸付金と借入金は、電子記録債権、電子記録債務では処理しないって訳さ」
「例えば、売掛金を電子記録債権にした場合は…
(借方(左側))電子記録債権 ×××
/
(貸方(右側))売掛金 ×××
って仕訳をして、その債権が当座預金に入金された場合は…
(借方(左側))当座預金 ×××
/
(貸方(右側))電子記録債権 ×××
って仕訳をすることになるわね」
「…ってことは、相手方の仕訳は、登録された時は
(借方(左側))買掛金 ×××
/
(貸方(右側))電子記録債務 ×××
って仕訳をして、それを当座預金で払った場合は…
(借方(左側))電子記録債務 ×××
/
(貸方(右側))当座預金 ×××
って仕訳を行うってことだね…売掛金と買掛金を電子記録債権・債務にするメリットは何となく分かるけど、手形を電子記録にすると、どんなメリットがあるんだろう?」
「手形は、それ自体を発行する事務手続きが面倒な上、搬送代や印紙税等の費用もばかにならない。その上、当然紛失のリスクも伴う。電子記録の方が、コスト的にも手形のそれに比べて安価で、事務手続きも簡単な上、紛失のリスクもないんだ」
「なるほど…確かにそれなら、電子記録にするメリットは大いにありますね!!」
「しかも、電子記録債権は、受取期日前に分割譲渡することもできるんだ」
「手持ち資金に困った時には便利な機能ですね!」
「そういうことさ。ちなみに真琴。さっき言い争っていた話のことだけど…」
「えっ!?美琴にカフェ代を貸していたっていう話のことですか!?」
「それそれ。そのカフェ代、昨日美琴が払っていたぞ!」
「えっ!?」
「確か、それを美琴が払おうとした時に、真琴のスマホが鳴り出して…」
「………あっ!?あの時、確かに美琴からお金を受け取ったような気が…」
「ほらっ!やっぱり払っているじゃん!!」
「あの時、委員会のことで先輩と話していたから、美琴からお金を返してもらったことをすっかり失念していたわ…ごめんね、美琴!」
「わかってくれれば良いんだ~」
「喧嘩するほど仲がいいとは言うが、今後は気を付けてくれよ…」
「電子記録、とまではいきませんが、なるべく記録を残すようにします。私が」
「お姉~よろしくねぇ~」
chapter34 に続く