★chapter29 「法定福利費」って何!?
ある日の部活終了後…
「煉先輩!!」
「美琴!どうしたんだ!?」
「まず、昨日うちの両親が話していたことを聞いて欲しいんです…」
「えっ!?ああ、別に構わないが…一体、どんな内容なんだ!?」
「それがですね…」
***
「いやー母さん、参っちゃったよ…」
帰宅直後のパパが、ママに愚痴をこぼした。
「(帰ってきてすぐに愚痴を言うなんて…よっぽどのことがあったに違いない…)」
「あなた…何かあったんですか!?」
「ほら、今日は給料日だったじゃないか。それで、明細を見たわけだよ」
「…それで?」
「そうしたらさ、今月から定期昇給で給料が上がっているにも関わらず、社会保険料が去年と比べて増えていて、振り込まれた給料は、先月と比べて低くなっているんだよ…」
「………確かに、社会保険料が先月と比べて高くなっているわね…」
「そうなんだ…会社が半分負担してくれているとは言え、これはないよなぁ…」
***
「…なるほど…社会保険料の控除額が多くなって、お父さんの給料の手取り額が少なくなったって訳か」
「そうなんです!」
「ちなみに、美琴のお父さんは、今おいくつなんだ!?」
「今月末で40歳になりますけど…パパの年齢って、何か関係があるんですか?」
「40歳になると、収入金額に応じた『介護保険料』が、社会保険料に加算されるのは知っているか?」
「えっ!そうなんですか!?」
「ああ。介護保険料は、社会保険料と同じように半分は給料を支払っている事業主が負担してくれるから、被保険者である美琴のお父さんの負担は少なくなっているはずだけどな…恐らく、それに加えて美琴のお父さんが加入している社会保険そのものの料率に変動があったんだろうな」
「なるほど!だから、パパの収入が先月よりも減ったという訳なんですね…」
「そういうこと。ちなみに、事業主が負担した従業員の社会保険料って、簿記ではどんな処理をするか、知っているか?」
「この前、戸山先生の授業で教わりました!『法定福利費』を使うんですよね~」
「『法律で定められた、従業員の福利に関する費用』即ち、従業員が加入する健康保険・介護保険・厚生年金・雇用保険・労災保険等の社会保険料の、事業主負担分を支払った際に用いられる勘定科目だな」
「主に、従業員に給料を支払った際、所得税と一緒に社会保険料を預かって、それを支払った際に使われるんですよね~」
「給料から天引きして預かった時は…
(借方(左側))給料 ×××
/
(貸方(右側))所得税預り金 ×××
社会保険料預り金 ×××
現金 ×××
のような仕訳をしておいて、実際に預かった社会保険料と共に事業主負担分を支払った際は
(借方(左側))社会保険料預り金 ×××
法定福利費 ×××
/
(貸方(右側))現金 ×××
のような仕訳になる訳だ」
「払ったお金全部を『法定福利費』にしないところがミソですね」
「そうだな。払ったお金から、従業員から預かった『社会保険料預り金』を差し引くことが大事だ」
「(もしも…先輩と私が将来結婚するようなことがあったら…私の社会保険料は先輩の給料から支払われて…って!!私ったら、一体何を!?)」
「…どうした美琴、顔を赤くして…熱でもあるんじゃないか!?」
「ある意味、合ってますけど、ね!」
「えっ!?何だって?」
「何でもありません♪」
「???」
chapter30 に続く